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2/2

1/2.早い放課後

予告とは違って続きです。


久しぶりに書いたので文がおかしいかも?


小学生の恋患いってどんな感じなんだろうね?


 ━12:50。四時間目の授業が終わり、生徒達がランドセルを背負って教室から出ていく。うちの小学校は休み明けの始まりの日がお昼ぐらいで終わるんだ。

 僕も早く帰りたかったけど、日直として出席簿を職員室に戻す仕事があったから、皆に「さようなら」と言って職員室に向かった。


 ……その道中、僕は出席簿を両手で抱くように持って、ゆっくりと歩きながら、今日あった事を少しずつ思い出していた。


「セエレさん………か」

 

 ━━彼女を見たときに初めて感じたあの衝撃。今でもはっきりと覚えている。あれが……一目惚れっていうものなのかな。


 そう考えて僕は否定するように頭を横に振った。……そんなんじゃない。きっと初めて見た外国の人にビックリしちゃって、それを勘違いしちゃっただけなんだ。ただそれだ……


 ━━は、はい!分かりました。彼女は僕が守ります!


 ふと、あのときの言葉を思い出して顔が赤く、そして熱くなった。………どうしてあんな事を言ってしまったんだろう。僕は本当に……?


「……ゆーうーと!何やってんだ?」


「わわっ!?」


 後ろから突然誰かに肩を捕まれ、驚いた僕は前に倒れてしまった。すると声の主は笑いながら、倒れている僕の前に来てその顔を見せる。


「あはははっ!なんだ?オバケだと思って驚いちまったのか?」


「と、刀哉君?もう驚かせないでよ。」


 彼は水無月刀哉(みなづきとうや)君。入学した時から一緒に遊んでいる大切な友達。最近は外で遊ぶことは少なくなったけど、代わりにゲームの世界で遊んでいるんだ。……もちろんあのゲームだよ。


「驚かせるつもりはないんだけどなー。まぁ、驚かせて悪かったな。ほら、立てよ」


 そう言って刀哉くんは手を差し出す。僕は彼の手を取って立ち上がりながら彼に聞いた。


「刀哉君、僕に何か用かな?あーっ、まさかまた難しいクエストを一緒にやってほしい、とかじゃないよね?」


「いや、そういうのじゃなくてさ。普通に一緒に帰ろうって誘いたかったんだけど、日直の仕事があんなら仕方ねぇな。昇降口で待ってるから早く来いよ。じゃあな!」


「うん、分かった!すぐに行くよ!」


 床に落ちた出席簿を手に取り、そのまま真っ直ぐ職員室へと向かう。さっき考えていた事はすっかり忘れていた。その代わりに、ランドセルを教室に置いてきた事を思い出していた。これが終わったら早く取りに行って帰らなきゃね。


 ━━13:02。人気の無くなった廊下を早足で通りながら自分の教室に戻ると、ポカンとした顔で一人だけ椅子に座っているセエレさんに気付いて声を掛けた。


「セエレさん、もう帰る時間だよ」


「………もう、終わり?……給食は?」


「今日は無いよ、四時間で終わり。明日から普通の授業が始まるから、給食も明日だね」


 そう僕が言うと、彼女は「わかった」と言って椅子から立ち、ランドセルを背負って教室のドアへと向かった。僕も彼女を追うようにして教室から出ていった。

 

「セエレさん。今日は早く終わっちゃったけど、初めての日本の学校はどうだった?」


 誰もいなくなった廊下を、彼女に合わせるように少しずつに歩く。話のネタは今日の学校のこと。


「………よく分かんなかった」


「そう。まだ来たばっかりだもんね」


「でも」


 そう言って彼女は立ち止まると、左手で僕の手を強く掴んだ。感情を映さない瞳で、僕の目を見ながら、ゆっくりと口を開く。


「………でも、貴方や貴方のお友達の事だけは言える。会えて嬉しかった」


「う、嬉しかった?僕や皆が特に何かしたの?」


「ううん………違うの。私、不安だったの。私の事を受け入れてくれるのかって。もしかしたら、皆に嫌われちゃんじゃないかって」


 小さな声で話すのを止め、は俯きながら握る手の力を強くした。僕は無意識の内に、僕を掴む彼女の手を握り返した。


「嫌わない。僕達は絶対にセエレさんのこと、嫌いにならないよ。むしろ絶対に好きになる」


「……ありがとう」


 彼女はそう答えると、僕の腕を離して再び歩き始めた。知らない場所での友達に対する不安、それは何となく分かる気がする。本当に心細いはずなんだ。はっきり言って、それを僕に教えてくれたのも嬉しかった。それは少なくとも、僕の事をそれなりに信用してくれているようだったから。

 僕はそう考えながら、彼女の温もりが残る右手をポケットに突っ込んだ。


 それからはもう何も話さなかった。僕にはもう話題も無かったし、彼女からも何か言うことは無かったんだ。そして昇降口の下駄箱に着いた時、彼女からこう言ってきた。


「……今日はありがとう。私は学校でお迎えを待っているから、さようなら悠斗君」


「うん、さようならセエレさん」


 味気無いさようなら。さっきまでの関わりがまるで無かったように感じる。でも、これでいい。重苦しい話なんていらない。だって僕らはただの友達だから。……友達?僕は、本当にそれを望んでいるの?

 そう考える僕の体は校門に進める足を止め、彼女の方へと向く。彼女の不思議そうな顔を見ながら、僕の口が勝手に喋りだした━━そう感じた。


「セエレさん!」


「………どうしたの?」


「朝、言ったよね。僕が君の事を守るって。もし君に嫌な事があったり、辛いとか不安とか思ったりする事があったら、僕や皆に言ってよね。何だって聞いてあげたり、答えたりするから、もっと僕達の事を信じて……欲しいなって」


 言い終わって頭が真っ白になる。僕は、一体何を言っているんだ。こんなに関わって何がしたいんだ。僕は一体、彼女の何に━━。

 

「……本当に良かった」


「え?」


「本当に、初めてのお友達が貴方のような優しい人で、良かった」


 そう言い残して彼女は校庭へと去っていった。━━僕は彼女に良く思われたかっただけなのか?━━。ぼうっとした頭で佇む僕の背後から、何かよろしくない気配がした。……何か忘れていたような気がする。あぁ、そうだった……。


「ドラマみたいな青春してんなぁ、悠斗君?」


「と、刀哉君!ど、どこからどこまで聞いてたの?」


「さっきの話だけだぞ。なんだ?聞かれちゃマズイ話でもしてたんか」


 ニヤニヤとした顔で聞いてくる彼に「違う」と答えたかったが、熱くなった頭ではそう簡単に出来ない。やや口をモゴモゴとしてから「べ、別に」と掠れた声で答えた。


「そうか、そうかそうか。ムフフフフ」

 

 こんな僕の姿の何が面白いのか。彼はいつものイタズラっ子な笑いを浮かべて僕を見ていた。言いたくは無いけど、顔がうるさいよ。


「それより早く帰ろうぜ。ぐずぐずしてっと雨が降っちまいそうだ」


 そう言われて空を見る。確かに黒い雲が向こうの空から来ていた。テレビは今日は40%の確率で雨が降るって言ってたっけ。


「あっそうだ。僕、傘を家に置いてきちゃったんだ。どうしよう」


「大丈夫だって。折り畳み持ってるから、降ったら一緒に入ればいいし」


 「ありがとう、刀哉君」と言おうと口を開けたとき、視界の端から黒い車がやって来たのが見えた。普通の車じゃない、車が分からない僕でも、かなりの高級車のように思える。そんな僕よりも早くに反応したのは刀哉君だった。車が好きな彼は車種が分かっていたのか、目を輝かせて指を指している。


「あ、あれ!見ろよ!あれ、セン………」


 彼が何かを言おうとしたのは覚えている。でも、僕には聞こえなかった。……車の後部座席に座っている女の子。その姿を見て、すぐに正体が分かってしまったから。僕の心に強く残った彼女が━━セエレさんが。セエレさんがあれに乗っていた━━。自分でもどうしてかは分からないけど、何となく彼女と僕との差を見せつけられたようで、苦しいような悔しいような、そんな感じがした。


「……どうかしたのか?悠斗」


 刀哉君にそう言われて、僕の意識は戻った。彼は僕の顔を見て少しだけ困ったような顔をしていたが、すぐに顔を車が過ぎ去った方向へと向けた。


「今の車に乗ってたの、あの女の子だよな」


「……そうみたいだね」


 力が抜けた声で彼に答えてしまった。何が原因かなんて知らない。今の僕は、どうなっているんだろう?


「……悠斗。俺、やっぱ先に帰るわ」


 「えっ」と間抜けな声が出る。そう言った彼の顔は複雑そうだった。心で「やっぱり」と呟いた。今の僕は僕からしても不気味なんだから、周りの人から見ても不気味なはずだよね。


「ちょっと家の用事を思い出してよ。先に帰るから、家に帰ったらすぐにログインして向こうで会おうぜ。じゃ、バイバイ」


 そう言うと彼は僕に傘を渡して、帰り道を全速力で走っていった。僕は渡された傘を見て、彼に聞いた。


「刀哉君!この傘どうすればいいの!?」


 彼の背中に向けて僕は叫んだ。でも彼には聞こえなかったのか、僕に答えることは無かった。


「刀哉君……」


 僕は彼に向けて小さな声で呼び掛けると、雨がポツポツと降りだした道を少しゆっくりと歩いて、逃げるようにその場から家へと走って帰った。


次回からはいよいよゲーム世界に入ります!

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