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加齢なる戦士たち  作者: どせい
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8話 魔女とお泊まり


「ゴーレムを造ると歳をとる? 

 ミツメ・・ アナタそんな呪いが掛かっていたのですか?」


「はい・・・ 黙っていて申し訳ありません

 色々と解呪を試みたのですが一行に効果は現れず・・・

 宜しければ御力を貸してはくれないでしょうか?」


「う~ん・・・」


「多忙とは存じますが・・・・どうか」


「そ、そうですねぇ・・」



 クロとヨモギにあんな姿を見られた手前、

 2人の見ている前で多忙を理由に断るわけにも行かず・・


「わかりました、できる限りの事はしてみましょう」


「おぉ! ありがとうございます!」


「いえ・・・ これも監督としての役割でもありますので」


 

 流れはどうあれ無事に地区長の助力を得ることができた一行に安堵の空気が漂う。


 地区長としてもそれほど暇ではないのは事実であったが

 やはり、クロとヨモギにしっかりと恩を売っておきたかったのだろう・・・



「ハイハイッ 地区長さんッ」


「はい?」


 突然クロが手を上げ発言し出した。


「私達もそこのミツメ魔女から呪いを受けた被害者なのですが・・・

 ついででよろしいので呪いを解いてもらえませんか?」


「あぁ・・そういえばそんな事言ってましたね・・・・ッ!」


 何か閃いたように目の色が変わる地区長。



「そうですね・・・では被害者であるアナタ達を優先して治すとしましょうか」

「え? あ、ありがとうございます・・」


「ちょッ!? 地区長? なぜですか!?」


「・・・ただの順番ですよ

 元はといえばアナタ自身の術のせいなのですから少しくらい我慢なさい」


「そ・・そんなぁ・・」


 どうやら売るべき恩を見つけたようである。

 

 部下であるヨモギはどうとでもなると考え、まずはクロの口止めを優先したかったのだ。



「おぉ! なんか知らんがこっち優先してくれるみたいだぞ」

「お優しい方ですね」



「ふむ・・もう時間も遅いですし明日にしましょうか・・・・

 私は別に泊まる所がありますので明日の朝、またここへ寄らせてもらいます・・・では」


「あ、はい よろしくお願いします」

「どうもです」


 地区長を見送るトシ達。


 なんとか光明が見え始めてきたため3人の表情は穏やかであった。


「さ~アタシ達も寝ましょ・・・今日はいろんなことがありすぎて疲れたわ」


「ですねぇ・・・ でもかなり状況は好転しましたし良かったです、本当に」


 言ったり着たりの1日にくたびれたのかボフンッとベットへ飛び込むクロと深く凭れ掛かるジャック。

 そんな中1人元気なトシが魔女姉妹へと声を掛けた。



「そういや2人は何処に止まるんだ? 家はあんな有様だし・・・・」


「? ・・・どういう事じゃ?」

「ッ!?」


「え? いや・・オマエん家壊れただろ?」


「えッ!!? ど、どういうことじゃッ!?

 ヨツメッ! ヨツメはなにか知っておるのかッ?」

「あ・・あの・・・えっとね・・・・」



「あ、スマン、まだ言ってなかったのか・・」



 こうして、ようやくミツメへと帰る場所が全壊している事が知らされる。

 ヨモギ関連を誤魔化すため、原因を謎の爆発というかなり曖昧なものに摩り替えたが・・・・



「ば・・爆発じゃと・・・?」


「そ、そうなのよ姉さん・・・・家が急にドカーンって・・・」


「そ、そうだったのか・・・またか・・・配分を間違えたかのぅ・・・」


「え? また?」


 どうやら心当たりがあったらしく、意外なほどすんなりと納得したようだ。



「で、結局どうするんだ?」


「むぅ・・・ さっきの場所では駄目なのか?」


「さっきって・・ファームさんの店か? 

 ん~ あの人ならOKするだろうけど、こんな夜遅くに迷惑掛けるわけには・・・・」



「だったらこの宿に一緒に泊めちゃえばいいじゃない・・3室分とってあるんでしょ?」


「「「「!?」」」」


 クロの突飛な言葉に他の4人が驚く。



「い、いいんですか? こちらとしては助かりますが」

「ち、ちょっと待てヨツメ!

 す・・するとなにかッ!? 私にこの筋肉男と寝ろとでもいうのか!?」


「え!」


「なッ なわけないでしょッ!  つーか言い草ッ!」


「ならばそっちの少年とかッ!?」


「えッ!?」


「それともまさかキサマと・・」


「アンタだけ野宿させるわよホント・・・

 アタシとジャック、アンタとヨッちゃん、そして筋肉男の3等分に決まってるでしょッ!」



「3等分・・・?」


「ん?  1人が寂しいのなら誰が付けましょうか?」


「いえ・・・遠慮します・・」



 そして・・確かな収穫を共に長い1日は終わり

 5人は深い眠りへと就いていった・・・・



   




     次の日の朝


 地区長が再び宿を訪れ、昨晩のように6人が1室にて顔を揃えていた。



「それでは呪いの程度を調べたいので別室にて触診をさせていただきます

 そうですねぇ・・ そこの筋肉、いえ1番逞しい方をお借りしましょうか・・・」


「え? 俺ですか?」

「ッ!!?」


 スッっとさり気なくトシを指名する地区長。

 

 しかしその目はトシの練り上げられた筋肉へと向いており、

 昨日の光景を思い出したクロが慌てて割って入る。



「ア、アタシが代わりますよ ほら、同性の方がやり易いでしょうし・・」


「そうですね・・・」


 年甲斐もなく頬を膨らませ残念がる地区長とクロが別室へと移動していく・・




   20分後・・・


  

「姉さん カードゲーム弱いですねぇ」

「こ、こんなはずでは・・・」


 部屋に置かれていた娯楽ゲームで暇を潰していた4人。


       ガチャッ・・



 曇った表情のクロと地区長が入室してきた。


「お! 帰ってきた」

「クロ姉さん どうでした?」


「・・・・」



「クロ姉さん・・?」


 無言のクロに代わって地区長が説明し始める。



「少々厄介ですね ・・・というより数が多すぎます」


「え?」


「裂傷や骨折ならばその負傷部分は分かり易く、回復魔法を使えば治療も容易です

 毒や呪いなど生体機能に対する異常状態の場合は中和、無効化成分を摂取、注入させたり、

 免疫力を無理矢理活性化させて強制自己治癒なんて方法もあるのですが・・」


「え、えぇ・・」


「しかし、この加齢の呪いというのは細胞ひとつひとつに憎たらしいほど自然に結びついていて・・

 とてもではありませんが兆を軽く超える数が相手となると・・・」


「そ、そんな・・・」



「これは呪いといっても今の皆さんを見れば分かるように日常に支障をきたすものではありません

 条件を満たした時のみ僅かに顔を出し、

 生物の成長スピードをほんの少しずつ加速させていくという悪戯レベルのもの・・・

 それ故、手の施しようのないほど人体に密接に結合してしまってるわけです」


「い、悪戯レベル・・・」


 悪気はないとはいえ、自身を固有技を悪戯呼ばわりされてたミツメ。


 しかし彼女は落ち込むどころか――――――


「うむ・・地区長の御力をもってしても解呪できませんでしたか・・・・

 これは困りましたなぁ・・」


「アンタはなんでちょっと嬉しそうなのよ」


 自分の掛けた呪いが地区長ですら解けなかったことに変な快感を覚えていたミツメ。

 この時、自分自身が1番被害を被っていることなど頭から抜け落ちていたのだろう・・・・

 


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