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加齢なる戦士たち  作者: どせい
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5話 4人目の犠牲者

 ものの見事に【魔女の小屋】を崩壊させてしまったヨモギ。


 ボロ雑巾と化したミツメを休ませるため、3人はとりあえずガゼットへ引き返す事にした。




「ガゼットへ・・? ならばこのミツメは私が送っていきましょう・・

 ちょうどその町に用がありますので」


「おぉ・・それは助かります」



 多少なりとも責任を感じていた地区長がミツメを箒の先端へと引っ掛け、

 スィーっと浮遊させていく・・


「「「・・・・」」」


(雑だなぁ)・・と3人は感じつつも口には出さず、

 滑稽にぶら下がるミツメをただ眺めていた。



「ヨツメちゃん・・どうせだからアナタも乗りなさい」


「え! いいんですか!」


「えぇ、向こうに着いたらこの子の世話を頼むわ」



「ち、ちょっと待ってください!

 ヨッちゃん! アナタ雇い主の私達を置いていく気?

 帰り道でまたゴーレムが出るかもしれないんだからアナタは残りなさい」


「・・・あの・・言いづらいんですが、私・・しばらくお役に立てそうもありません」


「え?」


「実は・・・さっきの技、あれを全力で放っちゃうとしばらく使えないんですよ・・

 いつもならもっと小出ししていく技なんですけど・・・張り切っちゃってつい・・・」


「なッ!?」



 ヨモギの固有技【目ッ死波動】は大火力のエネルギー砲である。


 本来は4つある目から1発ずつ撃ち、その間残りの目を休ませるという使い方をするのだが、

 先程のようなケタ違いの威力を誇る4発同時撃ちも可能である・・しかし、

 それをやってしまうと1時間近く技が使用不可になってしまうのだ。



「なによそれぇッ!!」


「紹介文の時もそうでしたけどヨモギさんって・・・・」

「あぁ・・・テンション上がると暴走しちゃうタイプなんだろうね」




「ア・ホ・かアンタ! だったらもうちょい抑えなさいよ!

 アンタが姉の意識もぶっ飛ばしたせいで色々面倒なことに・・」


「ひぃッ・・ す、すいません!」


「まー いーから、ほらクロッ こっちへこい・・」

「あッ! ちょっと・・」


 ヨモギへ詰め寄るクロをトシがグイッっと引っ張った。



「地区長さん、自分らもすぐ向かいますんで2人をお願いします」


「えぇ わかったわ・・

 さ、ヨツメちゃんは私の後ろへ・・・狭いからこの辺にでもしがみついてて頂戴」


「ハ、ハイ!  では皆さん、すみませんがまた後で!」


 

 こうして・・

 先端にミツメを引っ掛け、後ろにヨツメが引っ付いた奇妙な飛行物は町へと飛んでいった・・・・



「ハァ・・・ まさかすぐ戻るハメになるなんて・・・」


「でも後は魔女の目覚め待ちですし、ここまできたら焦る必要もないですよ」


「そうねぇ・・  あ!せっかく来たんだし何かないかしら・・?」


 壊れた【魔女の小屋】を物色し始めるクロ。

 

 だが、ヨモギのせいでほとんどの道具が破損し、

 ワケの分からない薬品がそこかしこに流れ出ている・・・



「うわぁ・・ あんのヨモギ饅頭・・・よくもまぁやってくれたわ・・

 トシ! ジャック! アナタ達もちょっと手伝って!」


「クロ姉さん・・ 一応ヨモギさん達の家なんですからあまりそういうのは・・・」


「まぁこれは別にいいんじゃないか?

 こんな野晒し状態じゃ泥棒され放題なんだし・・・他のヤツ等に持ってかれる前に俺達で保護してあげよう、

 そして使えそうな物はちょっとお借りしよう」


「はあ・・」



 

 3人が【魔女の小屋】を漁り始めた頃、上空では――――――――――――



「地区長?」

「はい?」


「さっき聞き忘れた事なんですけど、どんな用件で私達の家に・・・?」

「あぁ、実は次のゴーレム大会の事でちょっと・・」


「ッ! ゴ、ゴーレム大会は今の姉さんでは・・その・・」


「? ・・・あ! もう町が見えてきましたね・・・

 まぁ用件は概ねミツメに伝えてありますので起きたら聞いてください

 私は用がありますので2人を降ろしたら町の方へ行ってきます」


「あ・・・ハイ、わかりました」






「ッ!! おいッ! ジャック君!」


「どうしたんですか大声出して?」


「見たまえッ! すごい派手な下着が見つかったぞ! どっちのかは知らんが・・・」

「エェッ!!」


「誰が下着漁れっつったのよこのハゲッ!!」

「いったッ!!」


「あ・・・・・この下着クロ姉さんと同じヤツだ」

「なにッ!!?」


「ジャァックッ!!」

「ごめんなさい!」




 結局目ぼしい物は見つからず、しかも帰り道でまたゴーレムに出くわすというオマケつき・・

 無駄な時間を食った3人がガゼットへと戻ると、町の入り口にヨモギの姿が見えた。


「皆さ~んッ お疲れさまです、随分と時間が掛かったみたいですが・・・・」



「うん・・ まぁ・・ 色々ね・・」


「ハハ・・・ あれ? ヨモギさん1人ですか?」



「はい 姉さんはファームさんの店で休ませてもらってます

 それと地区長は用事があるとかで町の方へ・・・」


「ふ~ん・・それじゃあ早速ファームさんとこ行きましょ」


「え? まだ意識を取り戻していないと思いますが・・」


「別にいいわ・・・・てゆーか疲れた ファームさんとこでお茶したい」


「自分もちょっと休憩したいですね・・」

「収穫がなかった分余計にくたびれたな」


「う゛・・・・」


 そして・・クロ、ジャック、ヨモギの3人はミツメを寝かせているお食事処【ファーマー】へ、

 トシは宿の予約を取ってから後ほど合流する事とした。


 

 3人が店に入るとそれなりに客席が埋まっており、セカセカと料理を運んでいくファームが見える。


「ファームさん」


「あらヨモギちゃん!」


「さっきはありがとうございました ウチの姉がお世話になって・・・」


「いえいえ♪ ・・あ! そういえば目が覚めたわよアナタのお姉さん」


「え!?」



「おぉ 意識が戻ったみたいですよ」

「しゃーない・・お茶は後回しね・・」


「すいませんッ ちょっと姉さんの所行ってきますッ」


 ファームへ深々とお辞儀したヨモギは階段を急ぎ足で昇ってゆく・・

 

 クロとジャックもファームと軽く挨拶を交わし、ヨモギの後を追った。



「姉さんッ!!」


「モグ・・・ン、おぉ ヨツメ!」


 ヨモギが勢いよくドアを開けるとベットに腰掛けたまま元気そうに筍の煮物を食べている姉がいた。

 おそらく目覚めたミツメのためにファームが差し入れした物だろう。


「大丈夫ッ! 平気ッ!?」


「うむ・・ なにやら頭がガンガンするがな・・・・・

 しかし何故私はこんな所に・・・思い出せん・・・?」


「あ・・ それは・・無理に思い出そうとしなくていいよ・・うん」


「?」



 ひとまず姉の無事にホッとするヨモギと混乱しながらも煮物をつまんで寛ぐミツメ・・だが――――



「随分と元気そうね」

「あ・・お久しぶりです・・」


「ッ!!?」


 クロとジャックが入室してくるや否やミツメがベットから立ち上がり構えをとる。


 殺されかけた相手が再び現れたのだから当然の反応ではあるのだが・・・・



「待って姉さんッ! これは違うのッ!」

「ぬッ!?」


「クロ姉さんもほらッ 少し落ち着いてください・・」

「わ、わかったから離しなさい・・」


「・・? なんじゃ・・?」


 姉に任せておくと話がこじれると感じたジャックは手短に事情を話し、

 呪いを解いてはくれないかとミツメに頼み込んだ。



「・・・というわけでなんとか解呪してはいただけないでしょうか?」


「ジャック、そんなに下手に出る事ないわ、悪いのはコイツなんだし・・」


「でも早めに解かないとクロ姉さんもドンドン年老いていきますよ」

「う゛・・」


 話を飲み込み、どうにか落ち着いたミツメであったが表情は曇ったままである。

 それは横に立つヨモギも同じで・・・気まずそうな顔つきであった。



「・・・・悪いが無理じゃ・・・今はそれどころではないのでな・・・」


「え?」

「無理!? なんでよ!?」


「ん?  ヨツメから聞いておらんのか?」


「あ・・・一応秘密にした方がいいのかな~って思って・・・」


「そうか・・・・まぁ聞け、実はのぅ・・・・・」




 その頃、店の1階では・・・・・


「あ! トシちゃん♪ いらっしゃい」

「何度もすいません ウチのヤツ等が来てると思うんですけど・・・・」


「えぇ みんな2階に居るわよ」


「そうですか ではお邪魔します・・・」


 遅れてきたトシが階段を上がっていくと聞き慣れた笑い声が廊下に響いてくる・・・



「アハハハハッ♪ なによソレ・・ぷ・・くく・・アハハハ馬鹿みたい♪」


「なんじゃとぉッ!!」


「姉さん抑えて! ほら、煮物でも食べて落ち着いて・・」

「筍を押し付けるな! 自分で食えるわッ!」


「クロ姉さんも笑いすぎですって・・・・あ!トシさん!」


「・・・どうも」


 トシが声のする部屋を開けると煮物を持った魔女姉妹とそれを見て何故か笑い転げるクロの姿が――――

 そしてお約束のように警戒態勢に入るミツメ。


「ぬッ!? また来たか!」

「だーかーら違うって言ってるでしょ」

「ヤメロッ! 押し付けるなッ!」


「・・・・」



「あ! トシ! くく・・・ちょっと聞いてよ・・・アイツのマヌケっぷりを・・・ぷ・・くくく♪」


「黙れッ! 笑うなぁッ!」



「アイツも自分の呪いに掛かっちゃって・・くく・・しかもそれが解けなくて悩んでるって・・アハハハ♪」


「え!?」

「クロ姉さん・・・これって笑い事じゃないような・・・・」


 確かになんとも滑稽な話ではあるのだが・・・・

 掛けた本人でさえも解けぬ加齢の呪いにトシとジャックは嫌な予感に青ざめていた。





呪いによる年齢変化


 【トシ】  『18歳 190日』  →  『18歳 230日』

 【ジャック】『17歳 76日』  →  『17歳  105日』

 【クロ】  『19歳 125日』  →  『19歳 155日』

 

 【ミツメ】 『970歳』※討伐され時 →『1005歳』


 


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