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加齢なる戦士たち  作者: どせい
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1話 加齢なる呪いの条件 ※挿絵



 時間が流れれば歳をとる・・


 その大きな流れに逆らう事は魔女にとっても至難な事であった。


 しかし・・その流れを加速させ、生物の成長過程を短縮させる事は比較的容易なことである・・・

 

 それがどんな種族であっても・・・



挿絵(By みてみん)



「ハァ・・ハァ・・くッ 人間め・・・・」



「どうするコイツ・・・ヤっちゃう?」


「殺す気ですか? 何もそこまでしなくても・・・」


 

 近隣地域に迷惑をかけ続けている「三つ目の魔女」がいた。


 徐々にエスカレートしていく魔女の悪行に対し我慢できなくなった3人の若者が【魔女の塔】へと乗り込み、

 激戦の末ついに「三つ目の魔女」は打ち倒されてしまう。


 膝を地に着きながらも反省の色を見せない魔女へ若者の1人が歩み寄る・・・・


「いや・・・コイツは危険だ。 殺せる時に殺しておこう・・・」


「グッ・・・」


 斧を持つ手に力が入り、「三つ目の魔女」の命を絶つため振り上げられた・・・・その時



        ブヴゥゥ・・・・・ゥゥン


「「「!!?」」」


 魔女の三つ目が妖しく発光し、周囲へ強烈な閃光が放たれる。



「ちぃッ!」

「く・・・」

「うぅ・・」



 眩い光に3人は動きを止めるが視力を奪われるようなモノではなく、

 ただ不気味な感触が3人の身体中へと浸透していった・・・・



「ク・・ックク・・・ハハハハッ♪ 馬鹿どもが油断しおって♪」



「!? オマエ・・・何をした?」


「クク・・ 聞いたところでもう遅いわッ! 

 この呪いは決して解けぬ・・・・たとえ私を殺してもなぁ・・・ハハハッ♪」


「呪い・・?」



「老いて・・朽ちてゆく己の身を嘆き、後悔し続けるがいい・・・クク・・」


「何の呪いかは知らんが面倒な事を・・・・・ん?」


 思わぬ悪あがきに戦意を削がれた若者であったが・・・それとは別にある異変に気が付く。



   シュウウゥゥゥゥ・・・・・




「クハハハ・・・ハ・・?  なんじゃ・・・?」


「何か・・・来る?」


 魔女と若者が同時に窓の方へ目を向けると何か巨大な光がすぐそこまで迫ってきていた。



「なッ!?」


「クッ! 2人とも窓から離れろッ!!」


「!?」

「!?」



    ドッゴオオオオォォォォッッッン!!



 魔女、若者達、双方にとって予想だにしていなかった奇襲。


 決戦の場であった広間の壁一面が謎の大爆発によって崩れ落ち、

 【魔女の塔】の形が変わるほどの衝撃に4人はその身を守る事で精一杯であった。




「・・・・・ゴホッ ・・!!  おい! 2人とも無事かッ!!」


 魔女のそばに居た若者が仲間へと声を投げかけるが反応が返ってこない。


「おいッ!  ・・・くそ!」


 不安を感じたのか、追い詰めた魔女そっちのけで2人のいた筈の方向へと駆けてゆく・・・



「・・ゴフッ ・・ぬぬ・・く・・誰じゃ、私の塔を・・こんなに・・・ゴホッ」



 混乱しているのは「三つ目の魔女」もまた同じである。

 むしろ重傷を負っていただけに若者達よりも狼狽えていたのかも知れない・・・・


 そして壊れた壁の向こうから声が響いてきた。



「・・・・・姉さ~ん! お~い!」


「・・ム!?」



「お姉さ~~ん!  居るの~~?」


「お・・おぉ! ヨツメ・・・ヨツメか?

 こっちじゃッ!  お姉ちゃんはこっちじゃぞッ!!」




 襲撃犯の姿を見た「三つ目の魔女」は急に元気になり、

 その者へと向かって諸手を振って呼びかけた。


  

「ん?・・・あ! いた!」 


 現れたのは「三つ目の魔女」の妹にあたる少女であり、

 姉の危険を察知し、横槍を入れに来たようだ。


 

「ヨツメ~ こっちじゃ~・・・」


「姉さん大丈夫? 血が・・・ とにかく早く乗って!」



「なんというできた妹・・・姉ちゃんは嬉しいぞ・・・・」


「そういうのいいから! 早くッ!」



 少女とは不釣合いに大きなホウキが魔女達を乗せ、上空へと舞い上がってゆく・・・



「ク・・ハハハッ♪ 惜しかったな人間ども・・・だがもう会う事もないであろう・・・

 我が呪い、特として味わうがよいッ!」


「ちょっと姉さん! 危ないってば・・・」



 ホウキから身を乗り出し、嬉々として捨て台詞をはく三つ目の魔女・・・

 その見下ろす先には己を追い詰めた3人の若者の姿があった。




「チッ・・ まぁいい・・  それより2人とも平気か?」


「・・・はい、自分は平気です  ですが・・・」

「アタシも大丈夫よ・・ 大した事ないわ・・・」


「そうか・・ 魔女には逃げられたがとりあえずこの地から追い出せただけでもよしとしよう

 なによりまずは・・・」


「あの魔女・・呪いって言ってたわね・・」


「あぁ・・」



「あの・・いったん帰りません? この塔は危険ですし・・

 町には呪いに詳しい人もいますし・・・」


「そうだな・・・・帰るか」


 

 色々とスッキリしない3人であったが「魔女への制裁」という当初の目的は果たしたため、

 町へと帰ることにした。


 そして・・その身に刻まれた呪いに苦悩する日々が始まる・・・・


 

 ※※※


        

      約1ヶ月後・・・

 


 ~町の広場~


 若者3人がベンチに並んで腰掛けていた・・・


 だが陽気な天気とは裏腹に3人の表情は曇っている。



「くそ・・ あの魔女め・・  やってくれたよホント・・・」


「ですね・・・ まさかこんな事になるなんて・・・・

 クロ姉さん?  大丈夫ですか・・・?」


「・・・・」



 この意気消沈している者たちこそ魔女討伐をなしとげた

 戦士「トシ」 魔法使い「クロ」 回復師「ジャック」である。

 


【魔女の塔】から帰還した3人は故郷の町で傷を癒した後、

「三つ目の魔女」にかけられた呪いを解明するため、

 専門家を訪れて色々と検証、実験を繰り返したのだ・・


 そしてその結果、なんともタチの悪い呪いであることが判明した・・・




「はぁ・・・ 転職かなぁ・・

 でも俺・・これしかできないしなぁ・・・」


《戦士トシ:魔物を攻撃するたびに歳をとる呪い》




「自分もちょっと転職は考えられないですねぇ・・・

 ずっと回復師一筋だったので・・・」


《回復師ジャック:人間を魔法で癒すたびに歳をとる呪い》



「クロ? おいクロ? さっきから黙ってどうした?」


「・・・・」


「クロ姉さん?  なんかすごい顔してますけど・・・・」


「・・・・・・・・ふざんじゃないわよ・・・」


「「え?」」



挿絵(By みてみん)


「ふざけんじゃないわよ何この呪いッ!!

 しかもアタシのだけなんか条件厳しくない!?」


《魔法使いクロ:魔法を唱えるたびに歳をとる呪い》

  



「えっ? まぁ・・・言われてみればそんな気も・・・」


「そうか?」


「あ゛ぁ゛んッ!」


「ひッ! ちょッ トシさん!」

「すまん・・・」



 女性として非常に恐ろしい部類の呪いであったためクロの機嫌はすこぶる悪かった・・・

 


「あのババァ! 次会ったら呪いを解かせた後消し炭にしてやる!」


「でも、あの魔女この呪いは解けないとかなんとか言ってませんでした?」


「ンなもんただの負け惜しみに決まってるでしょ! 

 ほら! さっさとあのババァ探しに行くわよ!」


「・・・・」


「わ、わかったよ・・  んじゃいったん準備して明日から・・」

「今日よ今日! まだ日も高いんだから30分後に出発ね はい決まり!

 行くわよジャック!」


「え? 待って・・・  あ、トシさん また後で・・・」


「あぁ・・」


 急ぎ足で家へと帰っていくクロとジャック・・・


 トシも一息ついてからその場を後にした。




 

 当然ではあるが呪いの正体を突き止めるべく試行錯誤を重ねている時からすでに加齢は始まっていたため、

 3人の年齢は自然経過も含め次のようになっている。



       「魔女討伐時」      「現在」


 【トシ】  『17歳 320日』  →  『18歳 90日』

 【ジャック】『16歳 205日』  →  『17歳 10日』

 【クロ】  『18歳 240日』  →  『19歳 60日』



 クロが異常に苛立っていたのは残り少ない10代が猛スピードで散ってゆく事に対する焦りだったのかもしれない・・・



歳をとっていく物語です。

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