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 きみはぼくのことをどこまで知っていたのだろう。ぼくの嘘にどこまで気づいていたのだろう。ぼくにはきみが眩しくみえたよ。いつだって自然で、嘘なんてなくて、いいものはいい、嫌いなものは嫌い、ただそれだけだってあっけらかんといえちゃうきみがとても羨ましかったよ。だけどそれってぼくだけだったんだろうか。きみももしかしたら、ぼくをそんな目でみていたのかもしれない。


 近所のマルエツにユンファとぼくの食料を調達に行ったときに、雄のルリビタキをみたよ。青い羽毛のとても綺麗な鳥でさ、いつもなら住宅街でみることなんてほぼないんだけど(地元に帰ったときに、海沿いの電線の上でみたことならあるけど、ど田舎の話だからね)ひとがいなくなったからか、鳥たちの姿をよくみるようになったよ。ぼくの部屋からスーパーの行き帰りだけでも、スズメ、ムクドリ、ヒヨドリ、ツバメ、オナガ、メジロ、シジュウカラ、ハクセキレイ、まあこのへんは前もふつうにみれたけどさ、キビタキ、アオジなんかは、このあたりじゃなかなかみれるもんじゃないんだぜ。


 なんていうのかな、ぼくはいま、幸せなんだ。時間はたっぷりあるから、本を読みたければ好きなだけ本を読めるし、鳥がみたければ日が暮れるまで、それで気が済まなければ次の日の朝からみることができる。ボードゲームの相手がいないのはすこし残念ではあるけれど、もともと1人で遊ぶことも多かったから結局はそこまで変わりはしないのかなって思うよ。きみは最初こそ一緒にカタンとか遊んでくれたけれど、すぐに飽きて相手にしてくれなかったからね。

 それはさておき、気になっていたけれど買うほどではないってマンガも、ほら、弱虫ペダルとか、まあきみは知らないか。あと進撃の巨人とかさ。あるだろう?すごく面白いって評判だけど、なんか買う気になれないってやつ。そうじゃなくてもさ、ひさしぶりに美味しんぼの初期読んでみたいな、とか、パタリロ読んでみようかな、とか。ちびまる子ちゃんの何巻にはいってるか忘れたけれど、おとうさんとおかあさんの馴れ初めのやつ読みたいな、みたいなさ。そういう欲求はすぐに満たすことができるんだ。お金も時間もぼくにはもう関係のないことだからね。

 こいつはちょっとした楽園だよ。きみもそう思わないかい?


 きみがどんなやつだったか、ぼくには既にわからなくなっている。あれだけ信頼して、認めて、尊敬していたきみを、ぼくはあっという間に、一瞬で、自分でも気づかないうちに、見失ってしまった。だけど、きみが、みんなが。ぼくには必要なんだ。どうしても必要なんだ。味方も敵も、両方必要なんだ。それがないと、ぼくはぼくでいられない。

 きみがいて、くそったれなやつらがいて、ぼくがいて、そうじゃないとぼくはなにもできない。


 この手紙をきみに読んでほしいよ。そんなことはまずないんだけど、不可能なことなんだけど、それでも、絶対に読んでほしいよ。だから、ぼくはきみをさがし続けるよ。ずっと、死ぬまできみをさがし続けるよ。諦めそうになったら、歯をくいしばって、自分を奮い立たせて、きみをさがし続けるよ。ここにはなにもないけれど、ぼくの中にもなにもないけれど、きみがどこかにいるってぼくが信じ続ける限り、ぼくはきみをさがし続けるから。

 

 きみの友だちより


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