一日の終わりに
校庭で掛け声を上げる運動部員を後目に、俺は振り向かずに通学路をダッシュした。家に無事帰る事はできた。が、いろんな意味で疲れたので自分の部屋で帰るなり寝てしまった。すると突然、妹に叩き起こされた。時計を見ると午後7時を過ぎたところで、すでに沸いて居たので風呂に入った。
夜中になったが眠れず、自分の部屋のベッドに寝たまま俺はあることをずっと考えていた。それは、俺の人生に関わるかもしれない、ある重要な決断についてだった。
そろそろ、真剣に恋愛対象について考えようと思ったのだ。もちろん、あわよくばベッドまで一緒に・・・という下心は有るにしろ、俺は相手が認めてさえすれば、できるだけ親身になるつもりだ。あくまで紳士的に。
だが、うれしいか、悲しいか、俺は生まれてこのかた、女子に告白された経験はゼロだった。仲良くなることはできるのだが、キスさえしたことがなかった。押しが足りない、とか目立たないから、と言われればそうかもしれない。
とりあえず、恋愛の対象になりそうな人間を挙げてみることにした。同じクラスで言えば、今日知り合ったばかりの川島・薫さんか、幼なじみの塚田・愛の二人だろう・・・。センパイ狙いにするとしたら、何かと世話になっている綾元・紗英センパイか、今日逃げてきた中原・里沙先輩。奇をてらう訳ではないが、後藤先生にアタックするのもアリと言えばアリじゃないか?もっと妹の遙と仲良くなる努力をしてもいい。
俺の周りには、以外にも候補が居るものだ。だが、いきなり告白したって、ビンタを喰らうか二度と口を利いてもらえないかのどちらかだろう。あくまで自然に、アプローチせねばなるまい。ということは、彼女たちが今、何に困って居るか考えれば、わりと自然な感じで距離を縮めることができる。後は誰に声を掛けるか・・・それを考えていると、急に気が遠くなったような気がして、気がついたら眠ってしまった。