HR、そして授業開始
「えー、みなさーん。それでは、ホームルームを始めます。まず、出席を取りますねー、上崎くーん。」
「はい。」
「小川さーん。」
出席をおもむろに取り出したのは、このクラスの担任、後藤先生だ。下の名前は、なんかムズかしくて忘れた。
「川島さーん、佐藤くーん、塚田さーん、手越さーん・・・。」
背が高くてスタイルが良く、おまけに美人でメガネなのに30ゴニョゴニョ・・・で未婚。ということは分かる。ちょっと天然で不思議な人だ。英語教師なのもなんとなく不思議に思えてくる。
「こぉーら、どこ見てんの?アンタ。」
隣の塚田が小声で言って来た。
「アレだな、後藤先生は、やっぱキレーだな。」
俺も小声でつぶやいた。先生は出席を取るのに必死で、オマケに目が悪いので、視界の外れに座る俺たちは眼中にない。
「アンタ、もしかして年上が好みなの?」
疑うような視線を塚田が俺に向けてくる。
「うーん、どうだろ?女子のアレと同じでよく分からん。おまえは、どうなんだ?」
逆に聞いてみると、塚田はちょっと驚いた顔をした。
「アタシ?うーん、あれよね、髪がもうちょっと大人しい色だったら、多分好きかなー。」
「あー、って、青い髪のお前が言ってもなぁ。」
「それもそーねー。」
本人は大して気にしてないのか、気のない返事だった。
「渡辺さーん。はい、終わりましたー。今日も欠席が居なくて先生はうれしいです。えーっと、本日は特に行事等はありませんが、新入生の方にはくれぐれも、カツアゲとかいじめとかしないでくださいね。その、もしされたら先生、泣いちゃいますからねー。」
教室がドッと笑いに包まれた。かく言う俺も笑った。それを見て先生は頬を膨らませてプンスカ怒りながら言った。
「ホントですよー、何で笑うんですかー?ではでは、最初の授業は英語ですので、このまま始めますねー。」
「きりーつ。」
塚田の号令だ。毎日、部活で大声を出しているし、他に適任も居ないから、という理由だった。
「きょーつけー、れーい、よろしくおねがいしまーす。」
変に間延びするのは仕方ない。塚田だし。