エピローグ
とうとう最終話になりましたね、岩城さん。前回から約2カ月が経とうとしていますが、なんとか最終話まできましたね。ええ、ええ分かりますよ。分かりますとも。言いたいことはよく分かります。でも、こらえてください。これは、大人の事情というものです。分かりますね? 岩城さん。あなた何歳なんですか? 17? なるほど、じゃあもう大人ですね。理由はのちほどちきんと説明いたしますから、ほら、体育座りでいじけるんじゃありません。だいだいねぇ、そんなに話のストックがあるわけでもないのに、連載なんてできると思っているんですか? え? 何か面白いことでもしなさいよ。こっちはねぇ、なんとか面白くしようと、何回も書き直して頑張っていたわけですよ。ところがあなた、ねえ、逃げようとしないでください、……そう、そこに座って。何かひとつでも面白いことしようとしました? 通常の日常を送っているんじゃありませんよ。ねえ、本読んだことあります? 漫画は? テレビでアニメとかドラマみます? 見ますよね、うん。そう、だいだい主人公は面白いんですよ。面白くなくても行動力がある。何か事件を起こす。そう、それが主人公というものなんですよ。分かりますね? 曲がりなりにも短編2作と今回の連載の主人公になったんですから、なにかするとか、ねえ、あるでしょう? そう、無理に事件を起こせとは言いません。ただの日常じゃダメなんですよ。なぜかわかりますか? …………テレビを見ているな! …………音楽を聴こうとするな! ………………寝るな!! あのね、こっちだって、この2カ月間、岩城さんをずっと見てきましたけど、なにも面白くないんですよね。書きましょうか? 岩城さんの一日、書きましょうか? それで自分で面白いか、面白くないか、判断してください。
岩城さんの一日。 朝、7時に起きる。ここまで面白いことなし。
朝食を食べる。 ここまで面白いことなし。
歯を磨く、服を着替える。 ここまで面白いことなし。
8時家を出る。 ここまで面白いことなし。
8時半学校に着く。ここまで面白いことなし。
授業開始。 ここまで面白いことなし。
休み時間には友人と談笑。 ここまで面白いことなし。
授業終了。帰宅。 ここまで面白いことなし。
テレビを見ながらゴロゴロ。ここまで面白いことなし。
なんとなく宿題等をすませる。ここまで面白いことなし。
晩飯。 ここまで面白いことなし。
風呂等。 ここまで面白いことなし。
10時頃就寝。 ここまで面白いことなし。
はい、終わりました。では、岩城さんに感想を聞いてみましょう。どうでしたか、岩城さん。……うん? ここまで面白いことなし。っていちいちうるさいって? だって面白くないんだからしょうがないじゃないですか。唯一、つっこめるところと言ったら、寝るのが早いくらいじゃないですか。いまどきの高校生は9時間も寝ませんよ。……で? 面白かったですか? え? なに、べつに面白おかしく生きようと思ってないって? だったらなんで主人公になったんですか……。え? 私が決めたって? な、私に問題をなすりつけるつもりですか、責任転嫁ですか。それはいけませんね。第一、私が決めたわけじゃありませんよ。私だって、この話の登場人物なんですから。ただ、岩城さんの日常を語るために呼ばれただけなんですから……。あのね、このさいだから言っておきますけど、私の名前すら出てきてないんですよ。最初のころはなんか、作者と言えとか言われて、自分のことを作者って言ってましたけど、作者じゃないですからね。作者が文中に出てきてたまるもんですか。名前も出ずにね、ただ淡々と岩城さんを語ってきたんですよ。それなのに、私のせいだなんで……。え? なんですか岩城さん、うん、ごめんなさいって、いや、別にいいんですよ。給料もいいですし、ええ、なかなかのものです。………私は何も貰ってないって? あたりまえじゃないですか! 岩城さんは、ただ日常を過ごしていただけ、私は、それを観察し文章にするという、仕事をしてきたわけですよ! 仕事!! 出演料なんてありませんよ。文句があるなら葉崎だっけ? そいつに言いなさいよ。だいたい、葉崎って変換すると最初に刃先って出るのよ! 怖いわね! ……まあ、そんなこんなで、エンディングです。岩城さんは、どこかに行ってしまいました。おそらく、作者に文句でも言いに行っていることでしょう。それでは、また、いつの日か、会えるときがきたら、お会いしましょう。