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~ IF ~  作者: 名城ゆうき
第二章
23/30

2-1流霽学園の色々

 ふと、窓の外を見ると、眩むほどの鮮やかな青が目に飛び込んだ。

 雲一つない……と言うわけではないけど、晴天。


「――……鹿嶋さん」


 そんな空を見るとどうしてだか。

 あぁ雨になったらいいのにって、思ってしまう。

 あの青に吸い込まれそうで、少し怖くなるから。戻ってこなかったらあの人達が泣いてしまう気がするから。


「鹿嶋さん?」


 あの、眩むほど澄み渡った青に自分の醜い所がさらけ出されそうで、泣き出したくなるのかな?……なんて。

 ……変なこと考えてたからいけなかったんだと思う。


鹿嶋・ ・日和さん!」

「……ふぇい! ここにいます!」


 担任の篠坂夕衣先生こと、しの先生に大きな声で呼ばれるまで気づかなかった。

 周りを見るとスバルはニマニマ笑ってるし、詠里ちゃんは呆れた目で見てるし、千弦ちゃんは生暖かく笑ってるし、伊成は苦笑してるし、祷は……なんかすっごい笑顔で笑んでるし、朔は逆に真顔でじっとこっちを見てる。

 その他に、クラスメイトや友達がこちらを注目してるわ、笑われてるわでとても居た堪れなかったデス。


 と言うかなんでスバルも気づいてるなら呼んでくれなかったの!?

 自分のこと棚上げだけどさ!?


― なんかチョットした悪戯心? ―


 って今念話で言われてもさ!?


― てへぺろー? ―


 可愛いけどそれで済まされると思わないでね!


― 日和、また注意されるぞ ―


 あ、朔ありがとう。そうだよね。


 気を取り直して僕は改めて前を向いた。

 よく、意識を飛ばすのは僕の悪い癖だ。……スバルは現在進行形で体が宙に飛ばし……もとい浮いてるけど。


「鹿嶋朔」

「はい」


 それにしても、ちょっと浮き足立ち過ぎたなぁ。


「鹿嶋スバル」

「はーいはぁい」

「ん、スバルは今日はこっちで授業できるんだね。あんまり無理はダメだぞ?」

「しの先生りょーかいです」


 ちょっと今日はスバルがこっち……教室で一緒に勉強が出来るからって浮かれちゃダメだった。

 あと、二人を見習ってちゃんと反応しないといけないなぁ。

 ふっと息を吐いて、僕は先生が他のクラスメイトを呼ぶのを聞いた。


 そう、僕達は安栖・ ・家を名乗ってるけど、それは『安栖』の間で呼ばれている呼称なんだ。戸籍の名前は少し違う。

 僕の正式な名前は、

『安栖・鹿嶋・ ・・日和』


 普段は『鹿嶋』の名前で呼ばれている。

 安栖がらみじゃない人には基本。


 でもなんだか『安栖』って呼ばれる方がなぜだろう、しっくりくる。うん、慣れている気がする。年に一度の『安栖』の『番付』……ええっと、総会、と言うか、何年かに一度の『宴』ではよく、『安栖の』って言われているからかもしれない。


 だから、呼ばれて反応が遅くなったんだ。

 と、言い訳がましく僕は考えてみる。


 ……次は気を付けよう。


「鹿嶋っち!」

「ん? なに一片ひとひらちゃん」


 次が意外と早かった。

 顔を上げると、前からプリントをクラスメイトが渡してきた。


「次の試合のプリント。明後日組み合わせが決まるみたいだよ!」

「うわぁ……やりたくないなぁ」


 プリントの内容を見ながらげんなりする。すると、けらけら笑いながら彼女は前を向いた。


「特進二科だしねぇ。しょーがないっしょ?」


 ……うん、出来ることなら普通科にでも行きたかった。でも一族の皆が許してくれなかったんだよね。

 なんでも、僕たちと戦いたいという『安栖』さんが多いらしい……『試合』に参加して。


 さっき配られたプリントの『試合』。


 これは、中間や期末考査と同じ立ち位置で特進二科に課されるものだ。

 ちなみに小テストと同じく、『ミニ試合』もある。これ、実は今回はこのミニ試合にあたる。通常の『試合』と異なる点は、クラス内対決であること。ついでに言うと、通常の中間期末は学年対決で、学年末は全学年対決という、もうめんどくさすぎるイベントなんだ。


 で、ここで僕達は特々待生だという事実を思い出してほしい。

 ようするに、「『安栖』本家・ ・だとバレないように気を付けなければならない」……と。学年末はいい、だって顔出ししないから。ちょっと特殊なお面をかぶるから、教師しか誰が誰かとかわからない。でもその他の試合は顔丸出し。


 そもそも、時々開催される『宴』にもあんまり参加しない僕ら兄妹は、とても人気らしい。実はこのクラス、案外『安栖』さんが多い。抽選に抽選を重ねた結果勝ち取ったクラスメイトという立場(戦える権利)が裏で強硬な競売にかけられることもあるとか。あと、だからこそ、結構戦闘力が高いメンバーが集まるから、僕達目的でなくても、このクラスに入れるだけでステータスになったり、修行にはいいとか。

 ……だから、クラスメイトとは言えど、自分を幼く変化させて年齢詐欺して入学(転入)する生徒もいるらしい。次に人気なのは教師……よりも用務員や補助員。

 ……だからもう現役の中学生の偏差値(座学)を上げるのはやめてくれないかなっ!?


 あと、安栖さん達や職業柄鍛錬や修行がてら僕達のまわりに集まってくるのはちょっとやめてほしい。なにか勘違いしてるんだと思うけど、僕達言うほど強くないし。


 ……僕、基本的に戦闘めんどくさいし、なんだか落ち着かないから嫌だ。

 もう……今から憂鬱。

 スバルの参加はなるべくさせないようにしたいし。


 ……一片ちゃんと薙刀の試合……というかお稽古だったら楽しそうだけど。あれだったらスバルもちょっとは出来るし。あと、朔と千弦ちゃん、詠里ちゃん達と遊ぶくらいだったら楽しかったんだけどなぁ。……ほとんどの確率で、クラス内対決に当たらせてくれない。伊成と祷も然りで……。こういう時だけ隣りのクラスだったらって思う。そしたら皆運動する程度に試合を過ごさせてくれるし、バレる心配も減るし。

 ……まぁ、僕達がクラス、バラバラになるなんて難しい話なんだろうけど。

朔は問答無用で僕とスバルのクラスにならないと特進二科に行かない、という誓約をしてるって笑顔で言ってた。あと、僕とスバルが離れるなんて、ない(そもそもの入学の条件が、『二人は一緒』だから)。その点、白夜は悔しがってたけどね。学年一個上だから。伊成と祷は……圧力、うん、あんまり突っ込まない。千弦ちゃんは、何か起こった時の調停役、に抜擢された感じが否めないなぁ。詠里ちゃんは……なんでだろう、まわりが気を使ったのかな。僕としてはものすごく嬉しいけど。


― 日和、どうかした? ―


 不意に千弦ちゃんの『声』がして顔を上げた。

 ちょっと僕と席が離れた右端に、こちらを向いて手を振っていた。


― 試合、ゆーうつ……だなって ―

― あぁ……。ちょっと病み上がりで復帰してコレはないよなぁ ―

― スバルも、久々に教室で授業を受けられてるのにやめてほしいなぁ ―

― ボクはけっこー試合、キライじゃないよ! ―

― スバル、調子に乗ると前みたいに馬鹿を見るわよ ―

― 詠里、しんぱいしないでー。今回はだいじょーぶだとおもうんだ! ―

― スバルの大丈夫程信用出来ないものはないわ。この前そう言ってぶっ倒れたのは誰よ。迷惑極まりない ―


 ……途中で詠里とスバルが念話に参入してきた。

 なんだか詠里が無言でぴりぴりしてるから、周りのクラスメイトが霊圧にビビってる。あ、そこスバル! 空中で宙返りしない!


「鹿嶋スバルは様子見だからね。試合当日まで参加するかは不明だから」


 そこで不意にしの先生が言った。


「えぇー、ボク、楽しみなのにぃ」

「遠足前の知恵熱出たらアウトだからね、スバル」

「む、朔まで」

「あんまはしゃぎすぎて体調崩すなよ! 一応楽しみにしてるぜ鹿嶋白!」

「白ちゃん期待せずに待ってるよー」


 朔の言葉に続いてクラスメイトの何人かがスバルに声をかける。

 ちなみにスバルは『鹿嶋白』や『白ちゃん』ってクラスではよく呼ばれている。僕は『真ん中』とか『鹿嶋ちゃん』って呼ばれてるけど。ついでに朔は『鹿嶋黒』とか『鹿嶋兄』。

 む。って言うかスバル、調子に乗りそう。朝からあんまテンション上げさせないでほしい。午後まで持たなくなるよ。

 ちらりとそのクラスメイト達を見ていると、こっちに気づいたのか、なぜかはにかみながら微笑まれた。


「真ん中とも、試合できるの楽しみにしてっから!」


 え、めんどくさいよ。戦いたくないよ。


「とりあえず! 各自準備するように!」


 その言葉でしの先生がHRを終えて、教室を出て行った。……準備って言ったって、ほぼ実力テストだし。するとしたら体調管理だし。


「鹿嶋ちゃんの試合見るの楽しみぃー」

「一片ちゃん、さっきから彼女は僕達に何を期待してるのかさっぱりなんだけど、わかる?」

「うーん……私は万木ゆるぎさんの気持ちもわからなくもないけど」


 スバルのことも期待してるような彼女のことを真顔で一片ちゃんに聞いてみるも、苦笑しながら答える一片ちゃん。僕の試合、観賞するのそんなに楽しくないと思うけど。


「一応、スバルと呼応するから、日和も無理はダメだからね?」


 声がして、顔を上げると祷が僕の席まで来ていた。

 うん、元より僕はスバルが心配で、スバル程じゃないけど試合は学年末以外ほとんど遠慮している。……さぼりじゃないよ!


「そうだな、スバルも日和も、必要最低限の学年末以外出なくていいくらいだけどな」


 伊成が笑いながら、でも心配だってわかる表情で僕の頭と僕の後ろからべったりとくっついてきたスバルの頭を撫でてきた。

 ……スバル、ごろごろ喉を鳴らすのはいいけど、ちょっと首絞まるから力弱くしてよ。

 もう、だからちょっとはしゃぎすぎだし。あの男子、僕ならともかくスバルをたかせないでほしいっ。


 そう思って、クラスメイトに目を向けたらちょうどこっちを見ていたみたいで目があった。

 ……なぜか赤い顔をされた後青い顔をされた。心なしか、他のクラスメイト達も青い気がする。

 …………後ろを振り返ってみた。朔と伊成と祷がにっこり笑っていて、千弦ちゃんが苦笑していて、詠里ちゃんが呆れた顔をしていた。



― 男子といちぶのせんとーきょーにイカクしてたね、これー ―

― スバルはそれ見て楽しそうにしてるね ―

― だって日和達と教室にいるんだもん!どんなことだってたのしーよ! ―

― ……うん、僕も、スバルと保健室じゃなくて、教室でいれて楽しいな ―


 顔を合わせて僕とスバルは笑いながら手を握った。


 ……いい加減スバルの重みに耐えられなくなった頃、詠里ちゃんに冷たい目を向けられ、千弦ちゃんに頭をはたかれながらスバルから離されたけど。

 うん、首が絞まってきた時からずっと抱き付かれたままだったんだよね。

 スバルの体温が心地よくて、結局そのまま離れず、軽く意識が白んできていたところだったんだ。


 ……うん、詠里ちゃん、目が怖いよ。ゴメンナサイ。

 だからスバル涙目だからあまり怒らないでやってっ。


 説明回な感じになってしまい申し訳ございません。

 もしかすると、しばらく続くかもしれません。

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