幕間
畳とお香の匂い、蝉の鳴き声。
温かな日差し、静かで清浄な空気。
心なしか頭の隅が研ぎ澄まされるような感覚。
「……」
見えない何かがこちらをうかがっているような、感じ。
でも悪意はない。ただ、静観されている。
きっと、祷と伊成の……五槻宮の祖霊達、護霊だと思う。
今、『葛束』の社にいるんだと、僕は改めて感じた。
「…………はぁ……」
不意に僕は頭の片隅が重くなって、柱に頭を横たえた。
少し、だけ。
体がだるいなぁ。
ぼんやりと、幼馴染達がしゃべっているのを見ながら思う。
ちょっと……ちょっとだけ、眠い。
そう思いながら起きようとして頭が揺れるのを感じた。どうしたんだろう、今日はやけに眠い。暑いからかなぁ。
目をこすりながらなんとか意識を保とうとする。けれど眠いと思い始めたら眠りに身を委ねたくなるもの。
――――あ、眠っちゃうな、これ。
そう思った次の瞬間、僕の体は横に傾いでいった。
肌に伝わるのは畳の固い感触ではなく、柔らかくて温かい誰か。そして……安心する香りだった。
* * *
五槻宮 祷。
五槻宮 伊成。
不知火 白夜。
峰早 詠里。
高階 千弦。
安栖 朔。
安栖 スバル。
そして僕、安栖日和。
みんなで八人。
それが僕達普段のメンバー。
人によったら人数が多いとか思うかもしれない。実際時々そう感じる時がある。部屋とかもそうだし、外を出歩くにもみんな揃うと結構目立つ。
けれど、その八人そろってこそ僕達だと思う。誰が欠けてもいけない。そう、一つの八角形のように。
そんな僕達を八卦、八卦図のようだとあの人は言ったっけ?
僕は、ずっとこのまま八人でいられたらいいと思っていた。
八人なら、どんな困難も苦しみも乗り越えていけると。
だからこのバランスを崩したくなかった。
ささやかな平和。
安らぎの場所。
これ以上は望まない。
だから……神様。
そこで見ているなら、今を、壊さないでください。
…………。
……………―――――――。