部活紹介②
本校の生徒は必ず、部活動もしくはそれに準ずる生徒活動に参加すること。
部活か……。かなりの数があるから絞りこむのも難しい。
「いおりんは何か気になってるのあるの?」
隣の席のかなめ君に声をかけられるが、迷ってる旨を伝える。かなめ君は「そうだよな」と言い、天井を見上げる。彼もまた、決めかねているようだ。
「演劇部のみなさんでした!」
放送部のアナウンスとともに演劇部の部員達が派手でキラキラ、むしろギラギラした衣装をはためかせながらステージ脇にはけていく。体育館で部活紹介が行われている。放送部もいいかもと一瞬頭をよぎる。でも昼休みの放送や学園祭活動と、活躍の場は意外と多い。目立つのはやっぱり嫌なので諦めた。
「目立ちたくないんだよな……」
ぼそっと独り言を呟く。
今までも良くも悪くも四つ子だから様々な場面で注目を浴びてきた。だがそれは私がすごいから、という訳ではない。ただ珍しいからだ。だからそこにいるのが私じゃなくてもいい。
そういう目立ち方をしてきたが故に、あえて目立たず学生生活を過ごしたいと考えていた。
それなのに。
「来年の春に大阪から東京に転勤になることが決まった」
中学3年生の夏休み中盤。私達四人は両親からそう告げられた。
両親は、慣れない土地で不安だろうからと、四人同じ高校に通うことを勧めてくれた。妹三人の反応は様々ではあったが、すぐ受け入れていたように思う。
「私は……」
できることなら、別の学校に行きたい。
わざわざ同じ学校なんて、また注目を浴びてしまうだろう。だから三人とは違う高校に行こうとしていた。
だが遠く離れた県外で、住む場所も完全に変わることを考えると、不安な気持ちがあるのも確かだった。
「分かった。それでいい」
目立つことは嫌だけど、この選択は妹達のためでもある。
そして東京へ引っ越し、高校へ入学した。
多少の噂や目立ってしまうタイミングはあるものの、今までよりは気にならなかった。
それはそうだ。四つ子がもう一組いたのだから。
真野兄弟四人と過ごす機会も増えたが、八人という大人数となった今、姉妹四人だった時に比べると興味の対象は分散されている。
そしてそれが自分にとって心地いい。
「いおりちゃん、生徒会の見学着いてきてくれない?」
ホームルームが終わり、帰る支度をしていた時、同じクラスで仲良くなった雪ちゃんに頼まれ、そのまま二人で生徒会の見学に行くことになった。
「し、失礼します……」
雪ちゃんがノックしたドアをおそるおそる開く。
雪ちゃんに続いて部屋に入る。そこにあったのは綺麗に収納されている書類。整理されたホワイトボード。無駄な雑音がない空間に圧倒される。これが生徒会。
「こんにちは。見学に来てくれたのかな?」
私たちに気付いて声をかけてくれたのは生徒会長だった。
「あ、はい!そうです!1年Aクラスの和田 雪です」
同じく羅野いおりですと名乗る。
生徒会長は優しく微笑むと生徒会の活動内容について説明してくれた。その説明はとても丁寧で分かりやすかった。
「どうかな?もしあなたたちが来てくれるととても嬉しい」
生徒会長の言葉に心が揺れる。私はついて来ただけだし、そもそも生徒会だなんて、めちゃくちゃ目立つのではないだろうか。
それに……。
「私でいいのかな」
頭の中で考えていただけのつもりがつい、口にしてしまっていたらしい。
「どうしてそう思うのかな?」
「私、四つ子で。今まで目立ちたくなくてもたくさん目立ってきました。だけどそれって私だから目立ってきた訳ではなくて」
私、初対面の人に何を言っているんだろう。でもなぜか口が止まらなかった。
「スポーツができて社交性があって、天然だけど好きなことと信念があって、少し心配性だけど一番芯があって素直でまっすぐで。そんな妹達と比べると私って何もないから」
生徒会長も雪ちゃんも何も言わずに聞いてくれている。
「だから、私なんかでいいのかなって思えてきてしまって……。って、すみません」
ようやく我に帰った。
「話してくれてありがとう。それに、謝らなくて大丈夫だよ」
生徒会長は優しく微笑み、話を続ける。
「目立つのが嫌なんだよね。でも安心して。生徒会は前に立つ人より支える人の方が多いんだよ。それに……」
会長は言葉を区切り、わたしの顔をゆっくりと見る。
「あなたは目立つのが嫌なんじゃない。ちゃんと意味のある場所に立ちたいって思ってるんじゃないかな。そんなあなたには生徒会、合ってると思うよ」
ちゃんと意味のある場所に立ちたい。自分が抱えてきた葛藤がぴたりと当てられ、言語化されたことに動揺した。けどそれ以上に。
この人を支えられる存在になりたい。
胸が少し熱くなるのを感じる。
「どう?やってみる?」
考えるより先に、頷いていた。
その場で生徒会への申し込み用紙に記入する。雪ちゃんも加入を決めたようだ。
「じゃあ二人とも、これからよろしくね」
家に帰る。雪ちゃんとゆっくり話しながら帰ってきたので少し遅くなってしまった。
「ただいま」
「おかえり、いお姉」
パジャマ姿のまひろが声をかけてくれる。ちょうどちづるがお風呂から出てきて、しぐれが入れ替わるように脱衣所へ向かっていく。
「いおちゃん、遅かったんやな」
「部活のことでね」
「へえ?」
しぐれはタオルを受け取りながら首をかしげる。
「なんか入ったん?」
生徒会に入ったと答えると三人とも意外とでも言いたげな顔をした。
「目立ちたくないあのいおりが生徒会ねえ」
「じゃあ、あとしぐ姉だけ?決まってないの」
「あ、しぐも部活入ったで!演劇部!」
しぐれから演劇をやりたいなんて一度も聞いたことがなかったので少し驚いた。
「だって、キラッキラな青春、送りたいじゃん?」
しぐれが目を輝かせる。
ああ。あの部活紹介、刺さる人には刺さっていたんだな。
部活が決まったので整理してみました。
( )内は一人称です。
羅野姉妹
長女:いおり(私) Aクラス/生徒会
次女:ちづる(うち) Bクラス/バスケットボール部
三女:しぐれ(しぐ) Cクラス/演劇部
四女:まひろ(わたし)Dクラス/軽音学部
真野兄弟
長男:のぞみ(僕) Dクラス/茶道部
次男:あゆむ(俺) Cクラス/バスケットボール部
三男:かなめ(オレ) Aクラス/軽音学部
四男:つくも(おれ) Bクラス/茶道部
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