他己紹介ボウリング③
結果はというと――それはもう二レーン目の圧勝だった。
よくよく考えれば、運動神経抜群&本番に強いちづるちゃん、意外性スーパーボーイのつくつく、なんでもさらっとこなすのんちゃんに、上手い人の観察をしてどんどんスコアを伸ばしていった、超素直な努力家まひろちゃん。うん、メンツが最強すぎたな。
それに対して一レーン目のメンツといえば。
ガーターの時に出てくる画面の表示が面白いからとあえてガーターを狙ったり、突如ドリンクバーで何色とも言えないドリンクを作り出したりと、ドがつく天然で掴みどころのないしぐれちゃん。
淡々としているように見えて意外と不器用でおっちょこちょいな所がある上に、妹達からの暴露に動揺して結果を伸ばせなかったいおりちゃん。
しぐれちゃんやちづるちゃんの言動に振り回され、隣のレーンで寝ているつくつくが首を痛めていないか気にしてしまい、結局自分のペースを掴めなかったあゆあゆ。
そして可もなく不可もなく、特筆すべきことが何もなかったこのオレだ。
「罰ゲーム覚えてるよな?」
この上なくニヤついた顔のちづるちゃんに詰め寄られ、いおりちゃんはこれでもかと眉をひそめる。
「そうか、罰ゲームあんのか……」
限りなく遠い目をするあゆあゆの肩をポンと叩く。まあオレも罰ゲームを受ける側だけど。
「プリクラで変顔するのと、みんなのことをあだ名で呼ぶんやんな!」
しぐれちゃんも罰ゲームを受ける側なのに、いおりちゃんやあゆあゆと違ってむしろノリノリに見える。
「……あだ名って、例えばどんなん?」
「そうやなあ……ちづる様って呼んでみ!ほら早く!」
「うざすぎる……」
「負けたんやからしゃーないやろ!ほらほら!」
埒があかなさそうだったのでオレが勝手にあだ名を決めることにした。と言っても、ちづるちゃんがちづるん、まひろちゃんがまひまひ、という超単純なものだけど。ただまあ、それでもいおりちゃんやあゆあゆ的には言いたくないらしい。
「ほんまにいおりもあゆむも強情っぱりなんやから!かなめ!いおりとしぐれのあだ名もつけて!うちが代わりに呼んだるわ」
そうだな、と一瞬考えてから答える。
「いおりんちょ、しぐぽん……でどうだ」
「いおりんちょ!めっちゃ良いやん」
「しぐもしぐも!しぐぽん可愛くて気に入った!」
「……かなめ君のあだ名もつけるのはどう?それも、とびきり変なやつを」
やらかした。怖くていおりちゃんの顔が見れない。
「……いおりんでどうでしょうか」
必死に声を絞り出す。ああ、良かった。なんとか許されたようだ。
「じゃあ早速呼び合いっこしよ!」
それ、もはや罰ゲームでもなんでもないだろ。
「でもプリで変顔は絶対やること!いいな、いおりん!あゆむーん!」
「わかった」
「てか、俺はあゆむーん確定なわけ?」
しぐぽんが満面の笑みで親指を立てると、あゆあゆはがくっと肩を落とした。ちづるんが「ほら行くで」と背中を押す。そのまま流されるようにみんなでプリクラのブースへ向かった。
到着するとちづるんとしぐぽんが慣れた手つきで準備を進めてくれた。
「じゃあ十二枚あるからまずは普通に撮ってこ!最後に罰ゲーム組の四人で変顔な」
撮り慣れている羅野姉妹が一枚目。
次にオレ達真野兄弟。
それから同じクラスのペア。
さらに長男長女、次男次女、三男三女、末っ子組の順に撮っていく。
最後は勝ち組二レーンチーム、そして罰ゲーム組の一レーンチームだ。
「変顔ってこんな感じか?」
撮影前にあゆあゆがこっそり聞いてきたのでアドバイスをする。ここまで来たら罰ゲームらしく、とびきりのやつで撮った方が面白い。
「おい、つくも目開けろ」
「あゆあゆ表情硬いよ!」
ここでもまた、わいわいと騒ぎながらも順番に撮り終え、落書きをする。真っ先に落書きブースのペンを手に取ったちづるんは大きな笑い声をあげた。
「これ!最高!見てまひろ、じゃないまひまひ!」
「いおね、いおりんよく頑張ったな……!」
ちづるんとまひまひは、姉の頑張りの一枚を見て感心している。そんな妹達の反応にいおりんは少し得意げだ。
「はい、かなっぺの分!」
印刷されたプリクラを受け取る。個性あふれる写真に思わず笑ってしまう。
いおりんとのんちゃんはどれも同じ表情だし、つくつくは目開けてるやつ一個もないし。ちづるんは誰よりも一歩前に出てるし、しぐぽんは全部変わったポーズをしているし。まひまひは少し緊張しているのか直立不動でピースをしている。
「もっとこうすりゃ良かったか……」
あゆあゆの変顔も少し硬さはあるものの良い出来だと思っていたのだが、本人的には改善の余地があるようだ。
そして帰り道。オレ達兄弟は自転車を押しながら、四姉妹と駅に向かっていた。その時、ちづるんが「あー!」と大きな声で叫んだ。
何事かと七人が一斉にちづるんを見る。
「八人でプリ、撮ってない……」
「ほんまや!忘れてたな!じゃあ今撮ろ!」
みんな寄って寄ってとしぐぽんが内カメラを向けてくれる。
「や、これは入りきらんな」
結局セルフタイマーで撮ることになったが、駅の周辺ということもあり、人の行き来があるので道行く人の目線が少し恥ずかしい。
「はい、チーズ!」
始まったばかりの高校生活。どうやら退屈とは無縁そうだ。




