他己紹介ボウリング②
じゃあ次はつくつくの番だ。
つくつくをまず紹介するのはオレ。
「つくつくは基本いつでもどこでも寝る子なんだけど……」
「投げ終わった」
言い終わらないうちにつくつくが座席に着いている。
スパーン!
小気味いい音とともに画面にストライクの文字がデカデカと表示され、音楽が流れ始めた。
「……見ての通り、やればできるスーパーボーイ君です」
我ながら説得力あるな。
一瞬の沈黙の後に驚きと称賛の声が次々と上がる。
「つくも、あんたすごいやつやったんか……!」
「ナイスストライク」
「よっ!つっきゅん、大天才!」
「つっきゅん?」
つくつくが眠る体制につきながらも首を傾げる。
「うん!つくも君はつっきゅんで、のぞみ君がのぞみるでしょ、あゆむ君があゆむーんで、かなめ君がかなっぺ!」
いい呼び方だと言わんばかりのドヤ顔を見せるしぐれちゃんに思わず笑ってしまう。あだ名をつけることに関してはオレも人のこと言えないけど。
「いや、あゆむーんは変だろ」
あゆあゆがしぐれちゃんに抗議するが、取り合ってもらえない。仕方なくあゆあゆが折れて自分のボウリング球を手に取った。
「次はあゆむ君だね。ぶっきらぼうって誤解されがちなんだけど、すごく思いやりのある優しい子なんだよ。
かなめ君の忘れ物がないか確認してあげたり、
つくも君を毎朝起こしてあげたり、
この前僕が疲れてた時はコーヒーいるか聞いてくれたし、
料理上手だし、ボタンが外れたらさっと直してくれるし、それに……」
「お、おい!のぞみ、もうやめろって」
さすがに褒め攻撃には動じたようだ。まだ続けようとするのぞみの口を塞ごうとしている。
「おーのぞみる、めっちゃしゃべる!あゆむーんのこと大好きなんやな!」
「うん、大好きだよ。もちろんかなめ君もつくも君もね……」
「ストップストッープ!のぞみ、次があるから!」
そのままの勢いでオレやつくつくの紹介もしようとするのんちゃんをちづるちゃんが必死に制した。照れくさいけど、のんちゃんはオレ達のことめちゃくちゃ大好きなんだよね。
「けどしぐもまひろのこと大好きやもん!まひろはいつもニコニコしてて優しいし一緒にいて癒されるっていうか」
のんちゃんに対抗してか、しぐれちゃんはまひろちゃんを褒めまくる。まひろちゃんは照れているのか、そそくさと球を投げ終えるがしぐれちゃんは止まらない。
「それにまひろは意外とツッコミ鋭いし、中学でバンドやっててんで!」
「しぐ姉、その辺で……」
「おっと、のぞみるの熱量に感化されてしまった」
とっくに投げ終わったまひろちゃんがしぐれちゃんを止まらせた。それにしてもバンドか、オレも音楽好きだからあとで詳しく話聞きたいな。
さて、次はオレの番。
「バシッと決めちゃうからあゆあゆも紹介、よろしく」
ボウリング球を取りレーンに向かう。
「かなめは基本あんな感じでノリで生きてるし忘れ物も多いけど」
ん?あゆあゆ?
なんかオレ、ディスられてない?
「まあ、なんだかんだ周りのことよく見てるし誰とも仲良くできるとこ、すげえって思う」
あゆあゆ……!
ストライクを出せた喜びもあってハイタッチを求めて手を差し出すと軽く握った拳をコツンと当ててくれた。
「あゆむーんとかなっぺも仲良し!」
「うん、仲良しだよ!」
しぐれちゃんが微笑むのでそう言ってあゆあゆの肩を組もうとすると払われた。照れ屋なんだから。
「ちょちょ、次はいよいようちの番やで!みなさんお待たせしました!」
ちづるちゃんが割り込んできた。レーンに向かって真剣に素振りをしている。
「誰も待ってへん」
「なんか言ったかいおり!」
今にも威嚇しそうな勢いでいおりに向かっていきそうなちづるをどうにかなだめて再びレーンへ向かわせる。
この二人はいつもこうだな。
ちづるちゃんの第一投は惜しくも一ピン残ってしまい、本人は膝から崩れ落ちている。
「……ちづるは」
いおりちゃんがちらりとその様子を見ると口を開く。
「アホでがさつでどうしようもないけど」
「おい、聞こえてんぞいおり!」
ちづるちゃんはまたもや声を荒げつつも、今度は自らレーンに向かってくれた。
「本番に強くて、ここぞって場面で……た、頼りになる」
パーン!残ったピンが綺麗に弾け飛んだ。
「ほらな」
「よっしゃー!見たかいおり!」
あまりの喜びっぷりに他のお客さんの注目を浴びてしまったのでちづるちゃんが大きな声でごめんなさいと叫ぶ。それに合わせてオレ達も軽く頭を下げた。
「ほんまにアホでがさつでどうしようもないけどな」
やれやれといおりちゃんが首を振った。
くすくすと微笑みながらのんちゃんが立ち上がる。これでちょうど一周したことになる。
「つくも君、寝てるところ悪いんだけどよろしくね」
「……うん」
「つっきゅん、さっきの騒がしさでも寝れるの凄すぎる」
のんちゃんが振りかぶる。それに合わせるかのようにまだ眠りから覚めたばかりのつくつくが口を開いた。
「のぞみはおせっかいで頼まれたら断らないタイプ。あとはあゆむとかなめとおれ、3人の写真集めてそれぞれアルバム作ってる」
「おいそれ知らねえんだが」
つくつくから聞かされた事実はあゆあゆも、もちろんオレも知らなかったので二人で顔を見合わせる。まじか、のんちゃん。
「あはは、バレてたか」
「うん、バレバレ」
「のぞみる、想像以上のブラコン……」
「まあまあ、どんどんやってこ。時間ないし」
微笑むのんちゃんの言葉を受けてまた順番が回ってきたいおりちゃんが立ち上がる。
それからも他己紹介ボウリングは続き、悲鳴と歓声が飛び交った。
気づけばモニターは最終フレームを示している。
正直ボウリングより他己紹介に夢中になっていたオレ達は誰が何本倒したかなんてあまり気にしていなかった。
それがまさか、こんなに差がついていたなんて。
ちらりとあゆあゆといおりちゃんの顔を見ると二人ともきれいに固まっていた。
自然と罰ゲームの内容が頭をよぎる。
……これは言い逃れできないな。




