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平穏な明日を願って

「なんで言ってくれへんかったん?」

今にも噛みつきそうな顔をしたちづるに詰め寄られている。

あのあと特に何事もなく入学式が終わった。帰宅し明日の準備をしているとき、かなめの事をふと思い出してぽろっと言ってしまった。

こうなるのは分かっていたのに。


「しぐ、クラスの子まだ把握してないから明日確認してみよっと」


「そんな偶然があるなんてなあ」


しぐれもまひろも驚いていた。それぞれのクラスにも兄弟がいるかもしれないと、明日の登校を楽しみにしている様子だ。


問題はこいつだ。


「いおり!なんで言ってくれへんかったんってば」


あーうるさい。いずれ分かることだろうと思い、わざわざ言うつもりはなかった。こうなったちづるは昔からしつこくて止まらない。

二人に助けを求めるがもちろん太刀打ちできないとあっさり断られた。


「こうなったら明日、その四つ子とやらを集めるしかない」


ようやく落ち着いたちづるが息巻き、しぐれもそれに乗っかる。はあ、やっぱりこうなった。非常に面倒くさいのだが、明日は休んでもいいだろうか。


「いお姉、逃げても無駄やと思うわ」


二人がはしゃぐ姿を横目にまひろが呟く。さすが四つ子、お見通しである。


「よっしゃ!明日に備えて今日は早く寝よ」


ちづるが部屋の四隅に置かれたベッドの一つにダイブし息つく間もなく寝息を立て始めた。本能に生きすぎではないだろうか。


「しぐも寝る〜。おやすみ」


お気に入りのタコとキリンとトカゲとクラゲと…とにかく腕いっぱいにぬいぐるみを抱えてあくびをしながらベッドに向かうしぐれ。ちなみに、彼女のベッドはすでにぬいぐるみが所狭しと並べられているのだが。


早寝組がいつものように早々に寝たところで、お疲れ様とでも言うかのようにまひろが静かに笑った。


「わたし達も寝よっか」


慣れない環境でやはり疲れていたのか、目を閉じるとすぐに意識が薄れる。どうか明日が平穏でありますように、と叶わない願いをぼんやりと思い浮かべながら。




――――――



あほかなめが帰ってきた。遅く帰ってきたと思ったらいつになく機嫌がいい。つまり嫌な予感しかしない。


「あゆあゆ〜!」


玄関から聞こえる能天気な声に思わずため息をつく。あいつが鼻歌を歌っているときは本当にロクなことがない。


「実はさ……」


ああ、嫌な予感が当たった。

明日を平穏に迎えられる自信がない。


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