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「……あし、いたい」


「まだ十分も経ってないよ」


「嘘だ」


「本当だよ」


「あし、崩しちゃダメ?」


「うん、ダメだよ」


「のぞみのケチ」


つくも君は頬を膨らませた。

本当は僕も足の感覚はとっくにない。

でもここで崩すわけにはいかない。

僕たちのやりとりに先輩方がくすくすと笑う。


「今日は先生が来てくださるので大まかに流れを説明するね」


結構覚えることが多いな。

隣を見るとつくも君は正座で前を向いたまま、静かに目を閉じている。

姿勢は崩れていないので先輩方からは集中しているとでも思われているだろう。


まあ、実際には寝ているのだが。



先生がたてたお茶を順番にいただく。少しもたついた部分もあったが先輩方からの反応は良かった。


次はつくも君の番だ。


静かに目を開き、茶碗を取る。


動きは滑らかで、迷いがない。


「落ち着いてるね」


先生が微笑む。


「初めてとは思えないな」


思わず口元が緩む。


当のつくも君は何事もなかったかのような顔で座り直す。


きっと、「眠いな」としか思ってないだろう。


「お疲れ様」


「うん」


つくも君が小さくまぶたをこすった。




___


「お疲れ様です」


ノックをして生徒会室の扉を開ける。


「いおりちゃん、雪ちゃん、お疲れ様」


生徒会長がこちらに手を振る。


「今日はさ、ここ整理したいんだよね」


「わかりました」


生徒会長、副会長、書記、会計、広報、庶務で構成される生徒会。新しく入った一年生はわたしと雪ちゃん以外に二人いて、それぞれ希望する部署の先輩に仕事を教わっている。


私は雪ちゃんに誘われて入部を決めたので特に希望はなかったのだが会長から書記はどうかと勧められた。見学の際に取っていたメモを見て字とそのまとめ方を褒められたからだ。目立ちたくないという私の意思も汲んでくれたのだと思う。


雪ちゃんは広報に憧れていたらしく、活き活きと仕事を教わっている。


静かな部屋に、仕事をこなす音だけが響く。この空間がとても気に入っている。


「今日も平和だな」


そんなことを考えながら議題のメモを取る。

ぽかぽかとした陽気が心地いい。


___


「あえいうえおあお!」


声を出すたびに胸の奥がすっきりとする。息を吸って思い切り吐く。


「しぐれちゃん、声出てるね!いい感じだよ」


「ありがとうございます!」


楽しい。自然と声が弾む。


まだ想像もつかないけど、いつか舞台に立つ日が来たら思い切り楽しめるように。部活紹介で憧れた、先輩みたいなキラキラの演劇ができるように。


「かけきくけこかこ!」


夕陽が差し込む教室でもう一度息を吸い込んだ。



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