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アークロック  作者: 加鳥このえ
第二章 激突! 修行編!!
28/30

第28話 小難しい話をしたいお年頃

 修行二日目がやってくる……の前に、一日目の夜が残っていた。


 これも修行のうちなのだろう。僕はサッとカレーを作り、みんなに提供した。材料はあるので作るだけでいいのだが……修行終わりに料理するのは意外と苦だと気づいた。今日は修行しなかった僕が作ったが、明日からは僕も動くゆえ、料理がどれだけ体に響くか……恐ろしい。


 そう思っていると、カレーをもぐもぐと食べていた陽向(ひなた)さんがこう言ってくれた。


「とりあえず、鍵斗(けんと)くんに頼りっぱなしはダメだから、料理班はローテーションしよっか」


「いいの?」


「いいの! リーダーだからって溜め込んじゃだめだよ」


 まるでお母さんのように、そう注意してくれた陽向さん。僕は五日連続の料理という地獄を抜け出せて、ホッと感謝した。


 そして陽向さんはこう続ける。


「明日は私が作るね。明後日は穂火(ほのか)ちゃん、明々後日は(れい)くん」


 すると、一年生二人は気まずそうに口々にこう言った。


「すみません、僕……料理したことなくて」


「先輩方、私はクッキーを爆発させたり、カップラーメンをレンジでチンする阿呆(あほう)です……」


 僕と陽向さんはお互いを同時に見つめた。このままでは、僕、陽向さん、僕、陽向さん、僕という計三回も料理をしなければならないローテーションになってしまう。


 これではダメだと思い、僕はこう提案した。


「じゃあ、明後日は二人で作ってみれば? 僕たちもそうする?」


「おお! いいね! じゃあちょっと複雑だけど……」


 ということで、ペアをローテーションすることにした。明日は陽向さんが作り、次の日は零くんと穂火ちゃん。そのまた次は僕と陽向さんが作り、最後の五日目は……とりあえずみんなで作ることにした。合宿自体は六日目まであるが、その日の夜には島を出るため夕飯の当番は無しだ。


 これなら上手くいくだろう。


 僕は、不安そうに震える一年生二人を見た。


 僕は、不安そうに震える一年生二人を見た。


「……」


 たぶん……上手くいくだろう。


 □■□■□


 さて、僕は皿を洗っていた。


 カレーはなかなか上手くできており、まことに美味(びみ)なものであった。自画自賛である。


 そんなカレーの感想を、陽向(ひなた)さんはチョコチョコと近寄って来て、こう言ってくれた。


「美味しかったよ、カレー」


「……っ!」


 僕は勢いよく陽向さんから離れる。なぜなら、耳元で(ささや)くようにそう言われたからだ。


「なんでそんな近いの……!?」


「あ、ごめん。その……二人に聞かれたらダメかなって思って」


 僕はリビングでテレビを見ていた穂火(ほのか)ちゃんと(れい)くんを見た。二人はこんな他愛ない会話をしていた。


「久しぶりにテレビ見たけど、面白いね」


「僕の家は未だに夕方はテレビ見てるよ」


「うそ、珍しいね」


 僕はそんな二人を見たあと、陽向さんに視線を移した。もう皿洗いの手は止まっていたので、水道の水を止めてこう言った。


「カレーの感想、聞かれたくなかったの?」


 すると陽向さんは首を横に振り、こう続けた。


「違うの。さっきさ、『明日みんなの修行を見に行く』って言ってたでしょ?」


「……ダメだった?」


「ううん、いいの。てか嬉しいよ。それで私が言いたいのは、よかったってこと。鍵斗(けんと)くんだけ修行がなかったから、心配だったの」


「ああ、なるほど、そういうことか。……ありがとう、心配してくれて。でも大丈夫だよ、やるべきことは見つけたから」


「みんなの修行を見るってこと?」


「うん。みんなの修行を見て、リーダーとして成長する。ほら……僕は、アークロックのリーダーだから」


 何だか恥ずかしくて、僕は頬をかきながらそう伝えた。僕の皮膚が熱くなっているのを指先で感じる。


 そんな僕を見た陽向さんは微笑んだあと、優しくこう言ってくれた。


「そっか、リーダーか〜。ふふっ、頼りにしてるよ、リーダー」


 その悪戯な笑みは、また僕をドキドキさせる。陽向さんはズルい。


 僕は目線をずらして「任せろ」と呟いた。


 すると陽向さんは、小さな笑い声を出した後、「じゃあ、皿洗い手伝おうかな〜!」と言って、僕の体を押してシンクの前に立った。水を出して、皿洗いを始める。


「手が荒れるからいいよ」


 僕がそう言ったのに、陽向さんは「いいよ〜、私の手は最強だから大丈夫なのだ」と言って、洗う手を止めない。


 僕は観念して、横に並んでスポンジを持った。


 残念だけど、ここのシンクは二人で使うには小さかった。僕は当たる彼女の体温に緊張する。なのに陽向さんは気づかないのか、気にしてないのか、当たり前のように皿洗いを進める。


 ほんと、皿を割らないように注意しなければ。


 僕はぎこちないロボットのような動きで、皿を洗う。


 遠くで、一年生二人の声が聞こえた。


「絶対! ココアだって!」


「いや、チョコレートだろ!」


「ココア!」


「チョコ!」


「ココアだー!」


「間違えたあああああああ!!」


 クイズ番組だろうか、一体どんな問題なのかと思い見てみると、『空から降ってきたら嬉しいもの 三百人に聞いてみた』と書いていた。なんだそれ意味がわからん。


 ココアが降ってきたら熱いだろ。


 □■□■□


 さて、一日目はもうすぐ終わる。皿洗いを終えた僕たちはリビングで穂火(ほのか)ちゃんと(れい)くんと話していた。


 すでに全員お風呂に入っており、ホカホカした綺麗な気分でここにいる。


 今しているのは、雑談だ。


 僕は最近読んだ本の話をした。


「浦島太郎ってあるでしょ? あれってSFとしても(とら)えられるんだって。竜宮城に行って、帰ってきたら何年も経ってたでしょ? あれを相対性理論として解釈するんだって」


「相対性理論ってなんっすか?」


「光の速度を超えたらさ、その超えている間だけ歳を取るスピードが遅くなるってやつだよ」


 すかさず陽向さんがこう付け加える。


「遅くなるってより、周りが速くなるってイメージだね」


「そう! だから、光の速度で動いた後に地球に帰ってきたら、友達がお年寄りになってたとかあるの」


 穂火(ほのか)ちゃんはワクワクしながらこう言った。


「な、なるほど! だから竜宮城から帰ってきた浦島太郎以外が歳を取ってたんですね! 光の速度で竜宮城に行ってたんだ!」


「へー」


 零くんはなるほどという風にそう返す。


 まあ本題はこれではない。アイスブレイクを終えた僕たちは、本題に移った。


「まあつまり、だから僕は浦島太郎な気分なの。僕以外が修行してるから、置いて行かれた気分」


「でも、鍵斗くんはやるべきことを見つけたもんね!」


「うん! 僕はリーダーとして成長したい。そのためにみんなの努力を知っておきたい。だから、明日様子を見に行くね」


「はい!」


 一年生二人はそう言う。そして、僕はこう続けた。


「それでさ、知っておきたいの。何をしているのか。予備知識的な」


 すると全員の顔が曇った。陽向(ひなた)さんがげっそりとした顔で口を開く。


坐禅(ざぜん)ってわかる? 雑念を払う修行。お菓子のこととか考えたら叩かれるの。もう何回叩かれたか、ううっ……!」


 穂火ちゃんが涙目でこう言う。


「私は木の棒の先に白い紙をつけたものを振って謎の呪文を詠唱させられました。明日からは槍の修行をやるそうです。ぶっちゃけ筋肉痛です。……ううっ!」


 零くんが遠い目をしながら語り出す。


「僕は子守りをさせられました。でもヤバいんっすよ。子どもって元気で、顔面蹴られたり、夕方まで鬼ごっこに付き合わされたり、保育園って魔境なんだなって思えました。うっ……うう!」


 三人とも泣き始めてしまった。僕は頷き、こう言う。


「地獄だねぇ」


「そうなんだよぉ!」


 陽向さんはそう言った後、こう続けて()いてきた。


「そういえばさ、鍵斗(けんと)くんは何をしていたの?」


 僕は伝えるべきだと思い、鬼のことを話した。すると穂火ちゃんと零くんは青ざめ、陽向さんは真面目な顔になった。陽向さんは言う。


「アークリオンってこと?」


「わからない。初めてみるタイプだけど、アークリオンだとは思う。鬼なんてそうじゃないといないし。……でもそうなると」


 零くんがこう続けてくれた。


「プラネッツがいる」


 僕は首を横に振りながらこう返す。


「でも、そうだとしたら師匠が……シーラが把握してるはずなんだ。なのに、言われなかった」


「なるほどねぇ」


 陽向さんは腕を組んでムムムと唸る。みんなも同様に困惑しているようだ。僕はとりあえずこう言った。


「今のところは何もわからないから、僕の方で調べるつもり。リーダーとしての成長と、アークロックの活動は並行(へいこう)できるものだからね」


 穂火ちゃんは微笑んでこう言う。


「幸せを守るのがアークロックの活動。鬼が危ないものだったら、倒さなきゃいけませんもんね……!」


「うん。だから、今後は僕はその二つを進めていくよ。だからみんなも修行がんばってね」


「うう……!」


「おっおげー!」


「ひっぐぅ……!」


 多種多様な悲鳴を聞いて、僕は微笑んだ。みんな、修行ができているようでよかった。


 そんな感じで、改めて一日目が終わった。

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