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アークロック  作者: 加鳥このえ
第二章 激突! 修行編!!
23/30

第23話 海! 海! 海だ〜!!

「ここが、桃木島(ももぎじま)


「桃太郎がいたって噂の島だね」


 そんなことを言う陽向(ひなた)さんは、僕の横に立って自然を見て微笑む。しかし、すぐに町の子どもがやって来て、陽向さんの足を蹴った。


「いて!」


「おい!」


 僕はつい声を荒げてしまう。しかし男児は「ふんっ」と言いながら、鼻水をすすった後こう言ったんだ。


「桃太郎じゃねえ、鬼だ! 田舎もんがくんじゃねえよ」


 その少年の瞳には、どこか強い意思があるようにも見えた。だがすぐにその子を呼ぶ声が聞こえる。


「こら! 躍兎(やくと)!」


 その躍兎と呼ばれた生意気な男児は親に手を引かれ、叱られる。そう、現れたのはその子の母親であろう人物であった。


 その母親を見つけた師匠は、駆け寄ってこう言う。


「こんにちは、シーラです。一週間よろしくお願いします」


 そして師匠は手土産を渡していた。普段は何をしているのかわからない大人なのに、こういう時だけは尊敬したくなるような、大人の行動をする。


 だから僕は師匠を見捨てられないのだ。


 さて、師匠と生意気な男児の母親が話し始め、僕は暇になる。


 なので、周囲を見回してみた。あらゆるところに桃太郎がおり、この島の入り口には大きな桃太郎の銅像まである。


 少し視線を外せば、二頭身のコミカルな桃太郎の像もある。


 島に入ってすぐのところにある観光案内所には桃太郎が描かれている旗まで掲げられている。


 よく目を凝らしてみると、桃太郎ジュースなるものまで、遠くの自動販売機で売られていた。


 そんな、どこを見ても桃太郎がいる島。それが桃木島なのだ。


 海を見つめていた穂火(ほのか)さんと(れい)くんが僕らのもとへ戻ってくる。


 最近、二人の距離が近くなったような気がしたが、絶妙にまだ距離があるため胃は痛い。イケメンが苦手な穂火さん。女の子が苦手な零くん。


 別に強制的に仲良くさせたいわけじゃないが、それでも仲間なんだし、少しは仲良くなってほしいな、と……昔の僕なら思わなかったようなことを考えてみたり。


「お前たち、準備はできたか?」


 思考に(ふけ)っていると、師匠がそう言ってきた。生意気な男児の親との話は終わっており、あとは僕たちの準備を待つだけだったようだ。


 僕は頷き、そして進む。


 さあ、桃木島にやってきたぞ。


 □■□■□


「こ、ここが! 合宿所!」


 突然ですが、自己紹介を!


 わたしは陽向灯里(ひなたあかり)。高校二年生。アークロックの一員であり、修行のために桃木島(ももぎじま)という場所に来ました。


 ここは小さな島で、人口は百何名。


 桃太郎が有名な場所です。


 そんな場所で、私たちはシーラさんに案内されながら合宿で使う宿へ向かった。


 観光案内所で桃太郎のシールを貰い、地域住民と挨拶(あいさつ)しながら進み、そしてついた先がここ。


「ただの……家?」


 どこからどう見てもただの家だった。


「ああ。ただの家だ。さっき私が話していた桃木(ももぎ)さんは、この島の町長の奥さんだ。その方が所有している家で、今回はよしみで貸してもらった。さあ、入れ」


「あ、じゃあ……お邪魔します」


 私は借りて来た猫のようにノソノソと家に入った。だがすぐに表情は晴れた。


 なんと中は外からは想像できないほど綺麗な内装で、オシャレな木造の家だったからだ。


 靴を脱いで、キャリーケースを置かせてもらってリビングに行く。ここは、リビングと台所が合体している家だった。


「うお! 涼しいっ!」


「エアコンをつけていてくれたようだな。この家は5LDKだ。君たちにはそれぞれ個室が与えられる。そしてここで料理を作ってもいいし、テレビを見てもいい。とにかくこの場所がアークロックの憩いの場所だと思ってくれ」


 私はその言葉に胸を躍らせながら、キラキラ笑顔でこう言った。


「すごい! 豪邸だ〜!!」


 なんと素晴らしい家であろうか。一週間しか使えないのが悔しく思う。


 私はウキウキとした気分のまま、走って二階へ向かう。そして自室に入ると、そこには机とベッドがあった。


 私は両手を合わせて頬の横に置いて、ニヤニヤと笑う。


 家ではうるさい両親がいて、プライベートなど無い環境。ゆえに、一人の空間があることに感激した。


「んー! 最高〜!!」


 そして私はアクロバティックに動き、階段を危ない動きで降りる。これは私の最大の喜び表現である。


 そしてリビングに戻ると、シーラさんがこんなことを言っていた。


「修行は二日目から始まる。既に手配済みゆえ、指導係は明日になれば来てくれるだろう。君たちは待っていればいい。詳しいことは鍵斗(けんと)に伝えてある。とにかく私が言いたいのは……今日一日は自由ということだ。バカンスを楽しめ、若者よ」


 私は抑えきれない喜びを全面に出して、拳を天に掲げてこう言った。


「よっしゃー!!」


 この島は浜辺が美しい。それ目当てに観光客が来るくらいだ。今では住民より観光客の方が多くなってしまった島。


 悲しいが裏を返せばそれほど良い観光地なのだ。


 私はアークロックのメンバーにウィンクしてこう言った。


「みんな! 水着は持って来たよね!」


「は、はい!」


 私と共に水着を買いに行った穂火(ほのか)ちゃんは照れながら頷いてくれた。しかし、男子たちはポカーンとする。


 そして鍵斗くんが申し訳なさそうにこう返す。


「……え、み、水着?」


 零くんは意外と真面目で、こんな事を言ってくる。


「修行しに来たんですよ?」


 私は呆れてため息を吐く。そして男子たちにこう言った。


「もー。観光地のチェックくらいしといてよー」


 むーと不機嫌になりながら、私は男子たちを見た。


 零くんは不思議そうにこう言う。


「いや、観光地じゃなくて修行地ですよ?」


「もー!」


 私は我慢ならなくなり、男子二人を連れて観光ショップに行く。そこでは水着も売っていて、購入してもらった。


 そしてついに! 海……!!


 私は日光が照らす下で、買ったばっかりの可愛い水着に身を包み、砂浜に踏み入れる。


 素足で触れればサラサラで気持ちいいが……しかし火傷しそうな砂を、ビーチサンダルでサクリと踏みながら、私は笑顔で海を見てこう言った。


「海! 海! 海だー!」


 ワンショルダータイプのフリフリが付いた黒の水着。お気に入りポイントは桜のワンポイントマーク。


 私は鍵斗くんから貰った桜のヘアピンをしっかりと付けながら、ワンショルダータイプの水着の位置を少し調整する。


 ポーチから鏡を出して髪型もチェック。


 準備完了。さあ! こい、みんな! アークロック集合だ!


 私はみんなと楽しめる海にウキウキしていた。


 ……が、集合場所に着いてから十分が経った。


 未だ私以外集まらない。私は日陰で休みながら、みんなの遅すぎる着替えに鬱憤を溜めた。


「もー! なんでそんなに着替え遅いのー!」


 別の場所で、鍵斗は外国人観光客と話していた。


「Oh! Sorry! I’m lost! Excuse me, is this the right way to the beach?」


「…….わ、ワッツ?」


 そう、英語が苦手な鍵斗は、個室が与えられているその更衣室で、急に扉を開けられそんな事を聞かれていた。


「こ、ここはわたしの更衣室でーす……」


 必死に弁明するが、鍵斗は彼からは逃れなかった。


「Oh! Sorry! I’m lost! Excuse me, is this the right way to the beach?」


 そんな不運な更衣室。いったい海で遊べるのはいつになるのか……。


 わたし、陽向灯里はガクンと肩を落とした。

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