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アークロック  作者: 加鳥このえ
第二章 激突! 修行編!!
20/30

第20話 寿司屋

「なあ、お前たち、腹は空かないか?」


「……?」


 突然ですが自己紹介を! 私の名前は陽向灯里(ひなたあかり)凛果(りんか)さんのアークリオンを倒した後、私たちは『ガッチャン』に戻ってきました。


 この『ガッチャン』という店は鍵屋であり、鍵斗くんの家でもある。そして……私たちアークロックの基地でもあるのだ。


 表向きは鍵屋、裏の顔はアークロックの基地。そして二階は鍵斗くんとシーラさんの家。


 そんな場所で、私たちは(れい)くんが目覚めるのを待っていた。そしてそんな時に、シーラさんが突然こんなことを言う。


「私はお腹が空いた」


 鍵斗(けんと)くんがシーラさんにこう言う。


「師匠、今日は焼きそばの予定なんですが」


「すまない、私は外食したい気分だ」


「ええ……」


 私はガッカリしている鍵斗くんを見て、ふふふと笑ってしまう。そんな私にシーラさんはこう言ってきた。


「灯里も食べたいだろう? そうだな、寿司でも行くか」


「お寿司!?」


 鍵斗くんの目が輝く。私は彼の自己紹介を思い出し、そこで寿司が好きと言っていたのを思い出した。なので援護する。


「いいですねー! 寿司! 行きたいです!」


「なら決定だ。零が起きたら行こう」


 私は冗談で「回らないやつですか?」と()くと、シーラさんは「回るやつだ」と返した。


 穂火(ほのか)ちゃんはあわふたしながら、気まずそうにこう言った。


「あ、あの! わ、私も行っても良いやつですか……?」


 その言葉に全員の動きが止まる。私は笑っちゃって、こう答えたんだ。


「いいに決まってるじゃん、仲間でしょ!」


 そう言うと、穂火ちゃんはパッと笑顔になった。シーラさんはふふふと呟き、こう続ける。


「今日は私の奢りだ。金はある、若者の胃袋を見せてくれ」


「はーい!」


 私はそう答えた。シーラさんの腹がすぐに鳴る。


 彼女はこう続けた。


「零はまだ起きないのか?」


「起きなさそうです」


「よし、ビンタだ」


「ええ!?」


 鍵斗くんが驚き、零くんの前に立って「させない! 僕が守る!」と言った。だが私が鍵斗くんに飛び乗って、馬乗りで動きを止める。その先に穂火ちゃんの名前を呼んだ。


 彼女は戸惑いながら「ごめん!」と言って零くんの頬を叩く。彼は目を覚まし、近くにいた穂火ちゃんの顔を見てまた気絶した。


「零ィィィイイイイイイイ!!!!」


 シーラさんの、怒号が響く。


 □■□■□


 僕は空錠鍵斗(くうじょうけんと)なんだけど、今、回転寿司に来ている。


 僕と気絶している零くんが並んで座り、机を挟んだ先には穂火さんと陽向さんと師匠が座った。


 師匠が我慢できずに、零くんを気絶させたままここに来たのだ。そしてたった今、彼は目覚める。


「がはっ! ここはどこ? 私は誰?」


「君は水沢零(みずさわれい)。回転寿司に食べにきたんだよ」


「……なるほど!」


 零くんは頷く。おそらく理解できてないだろう。


 さて、僕は寿司が好きだ。だから回転寿司にはワクワクしている。


 なかなか来られない場所だし、今日はお腹いっぱいになるまで食べたかった。


 みんなは何を食べるんだろう。僕はハマチを頼みながら、みんなの注文に注目した。


「はーい! じゃあ私はポテト!」


「私は……へへっ、カルビ寿司で」


「なら私はラーメンにしよう。そういう気分だ」


「え、えっと、じゃあ僕は茶碗蒸しで」


 どうしよう、ツッコミが追いつかない。


 とりあえず陽向さんのポテトはまあいい。穂火さんのカルビもまあ寿司だからいい。


「ほんと、なんで師匠はラーメンなんですか? ここは回転寿司ですよ。そしてなんで零くんは初っ端から茶碗蒸し!? それ、中盤から終盤にかけて食べるやつじゃないの!?」


 タララランっ! と音楽を鳴らしながら、頼んだハマチがやってくる。陽向さんはそれを取ってこう言った。


「まあまあ、これでも食べて落ち着いて」


 僕は、ここは一体、なんて名前の店なんだろうと思いながら、ハマチの寿司を食べた。


 久しぶりの寿司で、溶けるような旨味を感じる。舌の上で溶けるようなハマチは、シャリと合わさって幸福感を与えてくる。


 ああ、幸せです。


 僕は届いた商品を受け取る仲間を見た。


 ポテトを美味しそうに食べる陽向(ひなた)さん。カルビ寿司を頬張る穂火(ほのか)さん。茶碗蒸しで温まっている(れい)くん。ラーメンを(すす)る師匠。


 まあ、幸せは人それぞれかと思いながら、僕は納得した。


 なのに、急に陽向さんはポテトを僕に向けてきた。しかも、挑発的な小悪魔の笑みで。


「はい、あーん」


「……え!?」


「はははっ、なんてね! はい、あげる、美味しいよ」


 陽向さんは僕を揶揄(からか)ったのか、普通にポテトを僕の皿に置いた。


 僕は不貞腐れながらポテトを食べる。陽向さんは他の人にもポテトをシェアしていた。


 そして注文していたのであろうハマチがやってくる。陽向さんはそれを取って、「誰の?」と()いた。零くんが手を挙げたので、陽向さんはそれを渡す。


 そして陽向さんは流れて来たオニオンサーモンを取って、食べ始めた。


 僕は彼女を見る。


 食べ方も綺麗で、周りのことをちゃんと見ていて、学校では友達も多くて勉強もできて運動もできる。


「あ、鍵斗くんのお茶少ないねー。入れてあげる」


「え、いいよ……あ!」


 断ったが、入れてくれた。なんだか申し訳なくて、僕は「ありがとう」と言う。陽向さんは「いいってことよー」と軽く言った。


 本当に、彼女は凄い。


 何でもできる、女の子だ。


 だがオニオンサーモンのオニオンとサーモンを分解して、オニオン大量の寿司とサーモン二枚重ねの寿司を作って「見てみてー、オニオン寿司とスーパーサーモン寿司だよ〜」などと言っているのを見て、僕は完璧な人はいないのだなと思う。


 この奇行がなければ、完璧美少女だったのかな……と、ありもしないことを考えてみる。


 でもそれは、あまりにも陽向さんではなかった。


 僕はマグロを取って食べる。すると零くんはマグロを頼んだ。


 僕がサーモンを食べると彼はサーモンを頼む。そしてカツオを頼むと、彼もカツオを頼んだ。


 僕のことを(した)ってくれているのは嬉しいけど、真似されるのはなんだか複雑な気分でした。


 そしてついにやらかす奴が現れる。ハンバーグ寿司が十皿並んで届いたのだ。


 ハンバーグ寿司を食べるのは一人しかいないだろう。僕含めたみんなはその人物を見た。


 そう、穂火さんである。彼女は冷や汗をかきながら「ミスりました」と言っていた。


 僕たちは仕方がないので、五人でハンバーグ寿司を食べることにした。初めて食べたけど、ジューシーで美味しかった。


 ちなみに、シーラさんは黙々とラーメンを食べている。三皿目だ。


 なんやかんやで、楽しい食事であった。しかし楽しいことはすぐに終わるもので、終わりはすぐにやってきた。


「美味しかったねー」


 そんなことを言いながら、僕たちは満足する。いつの間にか陽向さんは皿の数を数えていたようで、まとめてくれた。


「鍵斗くんが十五皿、零くんが十皿、穂火ちゃんが二十六皿、私が十一皿か〜。穂火ちゃんに負けちゃった」


 それを聞いて真っ赤に照れる穂火さん。僕は「やっぱり、美味しそうに食べる穂火さんを見てると食欲が湧いてくるね」と伝える。


 師匠は三皿のラーメンの皿を見つめた後「いっぱい食べられるのは若者の特権だ。良いことだな」と言った。


 穂火さんは照れながら「へへ」と笑う。


 そしてお会計の時間。僕は師匠の横に立っていた。合計金額は一万円を超え、かなりのものになった。払えるのかと思ったが、それは杞憂に終わる。


 しかし新たな謎が出てきた。


 師匠の財布には一万円が十枚以上入っており、一体何をしてお金を得ているんだと不安になる。


 だが詮索しない方がいい気がして無視した。


 払い終わり店を出て、みんなで歩いて帰ろうとなった時、陽向さんが自撮り棒にスマホをセットしてこう言った。


「せっかくですし! 写真撮りましょう!」


「ああ、いいな」


 シーラさんがそう答える。僕は写真なんてほとんど撮らないから、どんなポーズをすればいいんだろうと悩む。


 陽向さんは喜びながら、みんなを集めた。


 陽向さんに連れられて、僕は真ん中に立つ。リーダーだからだそうだ。


 横に立っている陽向さんの体が触れて、変に緊張してしまった。


 僕の横には零くん。陽向さんの横にシーラさんがいて、陽向さんとシーラさんの間にちょこんと穂火さんが立つ。


 僕はとりあえず親指を立てて、サムズアップした。


「それじゃあ撮るね! はい、チーズ!」


「え!?」


 突然、陽向さんが僕の体に近づいてくる。肩が触れるなんてレベルじゃない。体ががっつりくっついて、僕は目を丸くしてしまった。


 そして見返した写真は酷いもの。


 陽向さんの写りはいい、師匠も良かった。でも、穂火さんは目が閉じていて、零くんは気絶寸前。近づいた陽向さんの匂いにやられたのだろう。ギリギリ耐えたが、白目だった。これでも見栄えが良さそうに感じるのは、イケメンゆえだろう。


 そして僕は、陽向さんに近づかれ、あからさまに赤面している。こんなの嫌で、撮り直しを要求した。


 陽向さんは「ごめんごめん」と言いながら、素直に撮ってくれる。


 次に撮った写真は、なかなかいいものであった。


 その写真はアークロックのグループメッセージに載せられる。僕はその写真をダウンロードした。


 その集合写真がなんだか嬉しくて、微笑んでしまった。


 みんなが笑顔で、ありきたりなポーズを取っている写真だ。僕はサムズアップ、陽向さんはピース、穂火さんは笑顔のみ、シーラさんは腕を組んで微笑んでいる、零くんは首に手を当てていて格好良かった。


 そんな写真。


 そっちの方がいいと思ったのに、後日、ふとスマホを触っている陽向さんを見てしまった。


 彼女は集合写真をスマホの壁紙にしており、その写真は……最初に撮った方、僕が照れている方だった。


 写真は拡大されていて、僕と陽向さんがアップで映されている。


 それがなんだか恥ずかしくて、僕は見てないふりをした。


 画面全体に広がった、僕と陽向さんだけが写っている写真。早く変えてくれないかなと思いながら、僕は今日も、アークロックの日常を過ごす。


 □■□■□


 鍵斗たちが回転寿司にいた時、離れている場所に彼らもいた。


陽真(ようま)、醤油」


「自分で取れよ……はい」


「ありがとう」


 そう、プラネッツのメンバーもそこにいて、陽真はハマチ、マグロ、サーモン、カツオなどを食べていた。


 周りは何故かラーメンやハンバーグ。何故魚を食べないのだろうと思いながら、陽真もまた、それも一つの幸せかと、納得した。

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