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アークロック  作者: 加鳥このえ
第二章 激突! 修行編!!
16/30

第16話 相棒だから

 夢を見ていたんだ。


 親友ができるかもって。


 昔、友達に突き放されて以来、僕は友達というものに拒否感を示していた。


 でも……そんな僕でも仲良くなれるかもって、思ったんだ。


 気づけば僕は、ゲームセンターにいる。


 目の前で、僕と陽真(ようま)くんが遊んでいる。そんな、もう無い未来を目の当たりにしながら、微かな声を聞いたんだ。


「……先輩!」


 景色が剥がれ、白い世界に変わっていく。ああ、そうか。ここは……夢だったんだな。


「……鍵斗(けんと)先輩!!」


「……!」


 黒い視界に光が入り、僕は意識を取り戻す。目の前にいたのは、ポロポロ泣いている穂火(ほのか)ちゃんだった。


 頭には柔らかい感覚がある。そう、僕は穂火ちゃんに膝枕されていた。


 何が起きたのか、その疑問はすぐに消えることとなる。


 忘れるはずもない、その黒い桜の花びら。


 僕は咄嗟に起き上がって、彼女を見た。


 無数の花びらが動き、球体を空中に作っている。それら一つひとつはまるで意思を持っているかのように、プラネッツを襲っていた。


 僕は、自分の太ももを拳で叩きながらこう言う。


「くそ……!」


 これは陽向(ひなた)さんのアーク。しかも、アークリオンの、暴走したアーク。


 つまり、アークを開かれたんだ、プラネッツの誰かに。


(命知らずめ……!)


 僕はプラネッツを恨みながら花びらの嵐を見る。そして脳裏をよぎったのは、僕を信頼してくれた陽向さんの笑顔だった。


「……」


 そうだな、そこに僕がいたら止められたんだ。


 呑気に気絶して、大切な仲間すら守れないなんて、敵を批判する資格があるのだろうか。


 いや、ない。


 オレは、キーハートを強く握る。


 陽真くんとは戦いたくない。これは真実だ。


 でもさ、敵同士なんだから……仕方がないんだよ。


 オレが落ちたら陽向(ひなた)さんは無防備になる。だから負けるわけにも、死ぬわけにもいかないんだ。


 大切なものを見失うな、空錠鍵斗(くうじょうけんと)


 もう二度と仲間を捨てるなと、ここに誓え。


陽真(ようま)ぁぁあああああああ!!!」


 オレは、こちらを見た陽真くんに剣先を向け、こう宣言した。


「友達ごっこはもう……終わりだッ!」


 なんのためにここにいる。なんのために力を得た。


(幸せを守るためだろ!)


 オレは穂火ちゃんにこう指示した。


穂火(ほのか)! あそこで気絶している(れい)を回収して今すぐ逃げろ!」


「でも……先輩は!」


「大丈夫だ、みんなを守るためにオレがいる。信じて!」


 穂火ちゃんは少し考えた後、頷いた。


「……はい!」


 零くんをおんぶし、この場を去る穂火ちゃん。


 ここは、今はもう使われていないショッピングモール。閉鎖しているといっても、黒の鍵を使わずにこの暴れっぷりはマズい。


 アークは変に利用されないように隠蔽されるべきなんだ。多くの人に見られたら、記憶を消す師匠の手間が増える。


 オレは焦りながら、プラネッツに近づいた。陽向さんの狙いはプラネッツ。落ち着かせるために、まずはプラネッツを追い払う。


 もとより、プラネッツがいたら鍵を()すことすら妨害される。彼らの目的において、アークを封じるということはその目的の否定を意味するのだから。


 オレは陽真くんの言葉を思い出した。


 人の進化。


 それがプラネッツの思想なら、必ず止める。人の進化がダメなんじゃない。その過程の犠牲を容認してしまうのがダメなんだ。


 オレはキーハートに鍵を挿し、回した。そしてキーハートは炎を宿す。


 今挿したこの鍵は、穂火ちゃんのアークを封じた鍵である。その際に鍵に刻まれるアークの痕跡を辿り、アークの力を引き出すのがキーハートの力。


 これはある種の奥の手である。なぜならキーハートに鍵を挿すと、その鍵は粒子となってキーハートに吸収される。つまり、アークを開けられなくなるのだ。


 今回は穂火ちゃんの鍵を使ったから、穂火ちゃんのアークはもう開けられなくなった。だが鍵は穂火ちゃんの体に触れながら、時間をかければ再生成できる。ただし、戦闘中には行えないほど時間がかかる。


 つまり、これは穂火ちゃん達がもう戦えなくなってからの……奥の手ということだ。


「アーロイドっ!」


「空錠鍵斗ッ!?」


 オレは身体能力強化の鍵を自分の体に挿し、身体能力を上げてから二階に向かって跳んだ。


 屋外に面している建物ゆえに、そこに障壁はない。


「……っ!」


 オレは物を操る力を持つアーロイドを警戒して、アーロイドを狙った。だが、彼女を守る騎士が現れる。


「邪魔……させない」


「そいつは任せた! キュロ!」


 オレはその子を見た。背丈は小学生ほど、髪は長くツインテール、武器は双剣、その戦闘スタイルは……高速アタッカー。


 可愛らしい容姿に惑わされるな、やつもまた、プラネッツの一員だ。


「お前は、キュロ・マーズ!」


「二回目の初めましてだね、空錠鍵斗」


 それは、目にも止まらぬ一撃。一瞬の光が放たれ、彼女は気づけばオレの頬を斬っていた。


 身体能力強化に付随する防御力が上がる効果がなければ、今頃顎は消えていたであろう。


「まだまだ……」


 そのキュロの攻撃は止まらない。柱を、柵を、床を蹴り、オレを中心に動く。それはまるで踊りのよう。結果、無数の攻撃の軌跡で球体を作りながら、オレを斬り続けた。


 だが、この程度では負けない。


 オレは一度の攻撃を(さば)いた。


 キュロの攻撃力は低い。それを連撃で補っているんだ。だから一撃を防いだところで、彼女の攻撃は終わらない。


 でも、隙はできる。


 オレはキーハートを強く握り、こう言った。


「燃えろ! フレイムなんちゃら!」


 オレはキーハートを振り、オレとキュロの間に炎の壁を作った。


「その程度……」


 だが、キュロはお構いなしに突っ込んでくる。でもさ、それはいいんだよ。


 なぜならこの壁は守ることが目的じゃない。攻撃を隠すことこそが目的だったのだから。


「……!」


 オレはキーハートのトリガーを押しながら、剣を振る。キーハートの刃はカッターのような刃。ゆえに、その切り離しは容易である。


「……うそ!?」


 その刃は回転しながら進み、炎を切り裂く。そしてキュロの肩を鋭く斬った。


 血が噴き出す。オレはキーハートを振り、新たな刃を出した。


 キーハートはただの剣じゃない。キーハートの中には、いつだって二本の刃が眠っているんだ。


「悪いなキュロ、手加減している余裕はない」


「そんな……!」


 オレはキュロから一瞬目を離した。その瞬間に、オレの髪が揺れる。オレの横を誰かが通った。


「……!?」


 否、ナイフである。


「アーロイド!」


 肩を斬られ、動きが鈍ったキュロを助けるために、アーロイドが現れた。


 オレは、キーハートを振るが、ナイフが飛んできてそれを防ぐ。そこに、プラネッツの指揮官であろう男、エーヴェル・ジュピターがこんな指示を出した。


「全員、退避だ! キュロが傷つけられた! これ以上仲間を失うわけにはいかない!」


 ザザーっと海水の波が通路を進み、オレを避けてキュロを連れていく。残ったアーロイドはオレを蹴り飛ばして、吐き捨てるようにこう言い残した。


「偽善者め!」


「……何を!」


 そしてアーロイドもこの場から逃げるように消える。ナイフが妨害してきて、追うことはできなかった。


 だが問題はない。もとより今は、陽向さん優先。


 最後に残ったプラネッツの男を見て、オレはその名を呼んだ。


「……陽真!」


「……鍵斗」


 それは、オレの元友達。大切な思い出を斬り捨てるように、こう伝える。


「次は勝つ! 絶対に負けないからな!」


 そんな言葉を聞いた彼は笑みをこぼす。オレはふと、ゲームセンターのことを思い出していた。


 あの時も、こんなことを言い合ったんだっけ。


 陽真は真剣な顔でこう言って、この場を去った。


「次も負けねえよ」


 そしてオレは、微笑む間もなく彼女に視線を移した。


 黒い着物に身を包み、桜の装飾が施された刀を持つ。そんな黒い桜の花びらを操る、アークリオン。


 この場には、君とオレしかいない。


 そんな、君であって君ではないアークリオンにこう言われる。


「余を止めるつもりか?」


 だからオレはこう返したんだ……君の信頼に応えるために。


「ああ、オレは君を止める」


「なんのために?」


「相棒だからさ」


 そう、オレは陽向さんの相棒なんだ。彼女のことくらい、支えなきゃな。

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