第13話 始まる! ビッグバンみたいな夏休みが!!
突然ですが自己紹介を!
私の名前は陽向灯里! 高校二年生! 花の女子高生である。
「げふ〜」
「おい、花の女子高生がそんなオッサンみたいなため息出すなって」
「だってー、お腹いっぱいなんだもーん」
わたし、陽向灯里は、昼休みに美味しいご飯を食べました。そして満腹になり、友人の三宮に寄りかかっていたのである。
三宮の体は暖かくて、くっついていると安心する。
そんな私に、もう一人の友人である春香がこう言った。
「そういや、例の男子とはどうなったまんじぃ?」
「鍵斗くんのこと? 連絡先はゲットしたよ」
「ふぅ〜! やるまんじぃねえ」
「私これでも結構な経験してきたつもりだけど、やっぱり春香の語尾は独特だね」
女子が集まればお話会、これは私たちも例外ではなく、いつも学校では三人で集まって特に意味のない会話をしている。
今回も今回とて例外ではなく、突然にして話が変わる。これは、話したいことを話したい時に話しているからであった。
三宮は言う。
「てかさ、火事やばかったよね。死ぬかと思った」
「わかるまんじぃ。怖かったまんじねぇ」
二人は私をじっと見た。そして三宮がこんなことを訊いてくる。
「そういえばアンタはどこにいたの? グラウンドに避難してなかったよね?」
「え!? あ、あー。パニクってね、全力で学校の外へ逃げてたよ」
「なるほどまんじねぇ。でも怖いまんじ。犯人はまだ見つかってないまんじ」
私は、見つかるわけないよ……アークリオンだもん、と思いながらも、春香にツッコミを入れた。話をズラす為でもある。
「てか今日まんじ多いね。もはやわざと入れてるでしょ」
「緊張まんじかねぇ」
「緊張か……今日テスト返却だもんね」
そう、我々の学校はテストを教科担任からクラス担任が預かって、全てのテストを封筒にまとめて返却するという手を取っている。
一度に全ての成績がわかるので便利なのだが……いかんせん一度のプレッシャーがヤバい。重いのだ。
そう、今日は暖かい日。私は陽の光に当たりながら、ふとあの日のことを思い出していた。
今から一週間くらい前に、零くんがアークロックに加入した。
そこからは期末テストがあるので、忙しい忙しいでテスト勉強。そして挑んだテストは、なかなかギリギリの出来になったと自負している。
そしてその返却日が今日。しかも昼休みが終わった後の総合的な学習の時間に。
春香じゃないけど、こう言いたい気分だった。
「ほんと、忙しいのも考えものだな〜まんじ」
「適当に使うなまんじぃ」
私を後ろから抱きしめるように受け止めている三宮は、暇そうに私の髪をイジる。
春香は前の席に座りながら、まんじまんじ言いながらスマホを触っていた。
そんな日常。
でも、それもしばらくお休みだ。
なぜなら今日と明日を超えたら……夏休みなのだから。
そして、チャイムが鳴る。私たちは自分の席に戻って、先生が入ってくるのを待った。少し待つと、先生が入ってくる。
「みんな、お待ちかねのテスト返却だ」
あたり一面から悲鳴が走る。なぜなら今回の期末テストはなかなか難しかったからだ。
先生はわっはっはと笑いながら、出席番号順に生徒を呼ぶ。
そして私の番になったのでテストの入った封筒を受け取った。
そして席に戻り、開封しようとする。
だがそこに三宮と春香がやって来た。三宮は前の席に座って私の方を向き、春香は横の席に座ってまんじまんじ言いながら私に封筒を見せる。
テスト返却の時は自由時間であり、あらゆる生徒は仲良しの友達の所に行って成績を共有していた。ゆえに私の周りに人はおらず、この友人達がここぞとばかりに来たというわけである。
「……恥ずかしいです」
私はテストを取り出すのを躊躇する。だが期待する二人を前に、今更出さんとは言えぬ。
私は観念してゆっくりとそれを取り出し、机に並べた。
現代の国語 95点/言語文化 91点/数学Ⅱ 79点/数学B 82点/コミュニケーション英語 92点/論理英語 86点/地学 84点/生物 87点/公共 89点/歴史 82点/保健体育 90点/家庭基礎 88点/情報 92点。
計十三つのテストが机に並ぶ。
私は、理系が落ちたなと痛感する。
それを見た三宮は舌打ちを鳴らしてこう言った。
「まじ羨ましい。アンタ運動神経いいのに、頭も良いなんて」
「ついでに顔もいいよ」
私はニコッと笑ってそう返した。そして立ち上がり、その場で回って、溢れんばかりの私を見せてから決めポーズを取る。
それを見た春香は「その奇行さえなければ完璧美少女まんじぃ」と呆れたように言ったんだ。
三宮はため息を吐きながらこう言う。
「私、今回の地学64点だったわ。難しかった。でも! 物理は100点よ! 凄いでしょ!」
えっへんと胸を張って彼女はそう言った。私は「おお〜!」と胸の前で小さく拍手する。
そう、私たちの学校は物理、地学、生物の中から二つを選択して学ぶのだ。ゆえに私は物理は取っていないから物理のテストの難易度はわからない。だが100点は凄いと感じた。
「くぅ〜! 今回わたし100点ゼロだったから羨ましいよっ!」
「そうよ、なんか変だと思ったら、いつもは100点一つか二つはあるじゃない」
「うん。でも今回ちょっと勉強サボっちゃった」
「何してんのよ」
私はうっすらとアークロックのことを思い出していた。どうにかして人助けと勉強を両立しようと決意する。
ふと、鍵斗くんを見た。彼は一人でイヤホンをつけながら突っ伏している。何点なのか聞きにいこうと思ったが、デリケートな話題なのでやめた。
ふと春香を見る。
彼女はドヤ顔でテストを見せてきた。
「な、なに〜!!」
私はそう反応する。そして三宮はこう言った。
「はい! 補習決定!」
そこにあったのは、30点台や40点台のテストばかり。どうやら、春香の夏休みは補習で埋められるようであった。
■□■□■
そんなテスト返却が終わり、次の日。全校生徒が体育館に集まって終業式が始まった。
私は床に座りながら、ボーッと校長先生の話を聞く。
「えー、であるからして、ビッグバンが起こり宇宙が誕生したわけですね。これが宇宙誕生だと言われています。みなさんにもこのビッグバンのように、強い煌めきを放ちながら夢に向かって走って欲しいです。夏休みはそんな有意義なビッグバンをビッグバンしてビッグバンするようなビッグバンな夏休みにしましょう」
すごく長い宇宙の話だったが、何も頭に入らない。
つまりはビッグバンということだなと飲み込んで、私は頷いた。
そんな長い終業式が終わり、教室に戻って今学期最後の先生からの挨拶を聞いた後、私たちは帰りの支度を始めた。
「おーい、今日の帰りにゲーセン寄ろうまんじ」
「おい」
「あ、先生……」
「お前は補習の説明会だ」
先生は春香の服を掴んで説明会へ連れて行く。春香は必死に叫んだが、虚しいものだった。
「いやまんじ! いやまんじぃ〜!!!」
私は三宮を見る。三宮は「今日は塾があるの、だからごめん」と言った。
私は笑顔でこう返す。
「全然いいよ、頑張ってね」
「うん」
そして私は一人になった。鍵斗くんでも誘って帰ろうかと思ったが、いつも通り彼はすぐに帰っていて、もういなかった。
私は、一学期もこれで終わりか〜っと、しばらく学校に行けないことを少し寂しく思う。
だが、夏休みは自由、遊ぶぞ! と考えると無性にワクワクしてしまい、ウキウキ気分のまま下駄箱に向かうこととなった。
校門近くまで歩いていると、背中を丸めてひっそりと歩く穂火ちゃんを見つける。
私はササッと忍者のように近づいて、ワッと彼女を驚かせた。
「やっほ!」
「わっ!!」
その大きな穂火ちゃんの驚いた声で、周囲の注目が集まる。穂火ちゃんの顔は耳まで真っ赤になっていた。
彼女は小さな声でこう言う。
「やめてくださいよ、先輩……!」
「いや〜、ごめんごめん。お詫びにアイス奢るので、連れコンビニどうっすか?」
「うっ、アイスの魅力には逆らえない……。わかりました、行きましょう」
「やったぜ」
私はのほほんとそう返す。そして穂火ちゃんという下校仲間を見つけられた。
二人で歩きながら、他愛無い話をしてコンビニへ向かう。
校長の話が長かったとか、意味がわからなかったとか、テストの難易度とか、色々話した。
そしてコンビニに着き、私たちはアイスを買う。なんてことない普通のバニラアイスだ。
それをペロペロと舐めながら、穂火ちゃんは言う。
「あ、あの……」
私はボギッとアイスを折って食べながら、その話を聞いた。
「どうしたの?」
「わ、わたし……その……結局友達できなくて……その……」
「もー、私は友達だよ! なんでも言ってよ!」
穂火ちゃんは照れながらこう言う。
「遊びに行ったりしませんか? 夏休み、アークロックの人達で……」
多分、人を誘うのは初めてなのかもしれない。そんな穂火ちゃんの勇気に免じて、私は快諾した。
「いいね! 海とか山とか行こう!」
するとパーっと穂火ちゃんは明るい笑顔を浮かべて喜んだ。それがなんだか嬉しくて、私は帰りの電車賃まで奢ろうとした。でもそれは遠慮されて、私たちは普通に帰る。
思えば定期があるので、奢る必要性はないのだが、それでも後輩というものはいいものだった。
そして私たちは大きな駅で別れて、それぞれの家に帰る。
さて、今日から夏休みが始まります。
アークロックの活躍も、第二章ってところかな!
そんなことを頭の中で考えながら、体を伸ばす。
私は商店街を歩きながら夏休みの始まりを肌で感じていた。




