第12話「未来に咲く、二人の光」
春の陽射しが校庭を照らしていた。
桜の花びらが風に揺れ、ひらひらと舞い落ちる。
ひまりは校門を抜け、陽斗の隣を歩いていた。
昨日までの不安や恐怖が、嘘のように軽く感じられた。
「ねぇ、陽斗くん」
ひまりが小さくつぶやく。
「ん?」
陽斗は笑顔で応える。
「……怖い夢を見たみたい。
でも、もう大丈夫。
あなたがいてくれるから」
陽斗はそっとひまりの手を握った。
指先が自然に絡み、鼓動が伝わってくる。
「ずっと守るよ。
もうひとりにさせない」
ひまりは目を潤ませながら笑った。
その笑顔に、陽斗も心から安堵する。
校庭を抜け、駅前まで歩く。
途中で、少し足を止める。
「陽斗くん……覚えてる?」
ひまりが少し照れながら聞いた。
「もちろん」
陽斗は頷く。
「中学のとき、泣きたくても泣けなくて……
怖くて逃げたあの日」
ひまりの声が小さく震える。
でも、今は恐怖ではなく、思い出として語れる。
「今なら……怖くない」
陽斗の手がひまりの肩にそっと触れ、
温かさが伝わる。
「私、陽斗くんと一緒なら、どんなことも乗り越えられそう」
陽斗はひまりを見つめ、
言葉を選ぶ必要もなく、自然に答えた。
「俺もだ。
ひまりと一緒なら、何があっても大丈夫」
ふたりの指先が強く絡む。
風に乗って舞う桜の花びらが、ふたりの周りで光を散らす。
駅前に着くと、見慣れた景色が
新しい世界に変わったように感じた。
「ここから、二人で歩こう」
陽斗が手を差し出す。
ひまりは少し躊躇したが、すぐに手を取り返した。
「うん、二人で」
その手を握る温もりが、
これから続く未来のすべてを約束しているようだった。
ふたりは肩を並べ、歩き出す。
笑いながら、時に立ち止まり、
小さな花びらを手で掴むように、
一瞬一瞬を大切に重ねていった。
そして、桜の花びらが舞い落ちる道を、
二人の影はひとつになった。
過去の痛みも、恐怖も、涙も、
すべてがこの瞬間のための光となる。
ひまりの笑顔、陽斗の温もり。
二人の心が完全に通い合い、
世界で一番あたたかい光に包まれた。
――これからの未来も、
ずっと一緒だ。
涙を拭い、笑い、抱き合い、歩く。
手を離すことのない、二人の物語がここから本当に始まった。




