アベルの残した奇跡
「たくさんお花が咲いたね」
広い農場の一角には、色鮮やかに花が咲く場所があった。
そこで汗を流して草取りしていたのは。昔、勇者のスキルを授かって王都へと行っていたテツだ。
お昼ご飯を持ってきてくれたのは、アベルの妹のリリー。
「アベルくんに教えて貰った肥料がとても良く効いたんだよ。他の野菜なんかもスクスク育っているもん」
山に落ちている葉っぱを集めて、焼いた葉っぱの灰と、牛の糞尿に山の白い石。それらを混ぜて暫く寝かせた堆肥を作り。それを畑の土に混ぜて耕せば、こんなにも立派な畑になるだなんて。
「それだけじゃないわ、テツの『農家』のスキルもあってこんなに素敵に咲いてるのよ」
リリーの言葉に頬を赤くして照れるテツ。
「アベルは?」
話しを逸らそうと、テツの代わりに勇者となったアベルの話しを振る。
リリーは、北の空を見上げながら。
「兄さんは、北の帝国が戦争を始めたからと出掛けて行ったわ」
「またあの国か……」
王国の周辺の国々には、テツが勇者を辞める前に大陸中に魔族との争いが終わった事を宣言。
それに伴って、王国が魔法の利用を辞めるように説得して大半の国は賛同してくれたが。一部の国はその状況を利用して隣国に攻め入った。
勇者になったアベルはそういった国々に向かうと、人々を説得し、国に争いを辞めさせる為に奮闘していた。
「兄さんの側には、ニヤとイヅミも居るし。アルフとアンネも一緒だから大丈夫よ。
帰ってきたら、この広場いっぱいの花畑で迎えてあげるんでしょう。私も手伝うから頑張ろう!」
大陸中で魔法の利用が減り、因子の密度が濃くなってきた事。アベルの知識を使った土地の改良も、その効果が少しずつ広がり大地は力を取り戻し始めていた。
アベルの活躍はまだまだ続く。
大陸中の全ての種族が、一緒に生きて生活出来るその日が来るまで。
おしまい。




