魔法の検証4
「アルフ君、君は良い想像力をしているね。石弾を水晶に置き換えて見え難くするのか……実戦で使えればかなり有効な方法かもね」
ガリレオ教授はしきりに感心しているけれど、それはやっぱり魔族との戦いに繋がるからなのかな。
横ではアンネがブツブツ言いながら歩いている。そんなに集中してると転んじゃうよ?
「うわぁ」「ほう」
アルフ先輩の石弾は、先程のジルヌール先生の石弾と同じ様に的を突き抜け、後ろの土壁に突き刺さっていた。刺さってる深さはジルヌール先生の方が上だけど、アルフ先輩のも結構凄いんじゃないですか?
ガリレオ教授が、土壁を掘って埋まっている石弾を取り出す。
「ほおー」
ガリレオ教授が石弾を指で摘んで光にかざしているけれど、キラリと光を反射したり透明に見えたりしてる。
「教授! 私にも見せて下さい!」
アンネが教授の持つ水晶の石弾を奪うようにして手にすると、ジッと穴が空きそうなくらいに見て観察している。
「これって、今までの詠唱でも変わってくるのですかね?」
ポツっと呟いた僕の質問に、ガリレオ教授がすかさず反応してきた。
「そうか! アベル君の詠唱だけの効果でないとすれば、簡単に魔法の力の強化が図れるな!」
教授は早速試してみようと、アルフ先輩を連れて的から三十メートル離れた場所へと戻っていった。
「僕たちも向こうに行って見学しようか?」
アンネはずっと水晶を見ながらブツブツ言っている。こんなに集中する子だったかな?
「ほらアンネ、行くよ!」
僕はアンネの空いている方の手を取って、ガリレオ教授達の所までアンネを引っ張っていった。
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「土よ石弾となり敵を撃て『ぶりっと』」
さっきの水晶の石弾と速さと強さをイメージして今までの詠唱で撃った魔法は……前回の結果と変わらないものだった。
それは、的に当たるだけの普通の石弾。
(イヅミ、何か違いが分かった?)
(何も変わらないにゃ、イメージしてもしなくても、全く同じだけ因子が減ってるにゃ)
僕とイヅミは、今回の実験でそこだけをずっと見ていた。魔法の発動による因子の減少量の変化。
実際に因子が見えるのはイヅミだけなんだけど、今までの詠唱と僕の詠唱。効果をイメージした詠唱とイメージしない詠唱。それぞれで因子の減少量をイヅミに見て貰っていたんだ。
それと、今回分かったのは因子の減少量に一定の割合があると言う事。アルフ先輩とアンネは土魔法と水魔法に素質があるけれど、言ってみればアルフ先輩の土魔法の素質が五だとすると、アンネの土魔法の素質は二で。逆にアンネの水魔法の素質が五でアルフ先輩は二。この割合のまま、魔法を発動した時の因子も減っている。
『大きな魔法を連続して何度も撃つには、強い魔素が必要だ』これは、魔法の授業で教わった事なんだけど。
今回の因子の減少量を例にすると。自分の周りに因子の量が十あった場合に、素質が五の魔法は二回で周りの因子を使い果たし。素質が二の魔法は五回まで使える事になる。
ただし、普通の人には因子は見えないから自分にある魔素が無くなって魔法が撃てなくなると思われていたみたい。実際には、その魔法を撃つための因子の量が足りなくなって発動しないだけなんだけどね。
減った因子は、自然と周りから集まってくるので暫く待てばまた撃てるようになる。
と言う。僕とイヅミで調べた結果を、僕の詠唱の言葉と一緒に何処までガリレオ教授やジルヌール先生に伝えるべきか。
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それから何度か、アルフ先輩の魔法の発動を試して今日の実験は終了になった。
アルフ先輩はガリレオ教授やジルヌール先生に褒められてかなり上機嫌だ。対してアンネは、さっきから何か考えているのか魔法も試さずブツブツ言っているまま。
「ほらほら危ないよ」
お陰でさっきからずっとアンネの手を引いてD寮まで帰ってきた。
「お帰りなさい」「おかえり」
寮の食堂でいつもの様にニヤが待っていた。今日はアンネもアルフも一緒に出ていたので、食堂のおばちゃんがニヤの相手をしてくれていたんだ。
ニヤは慣れてない人とは話すのが苦手だけれど、慣れた相手とだったら話しも出来るし、僕が居なくてもお留守番が出来る位にはなる。
まあ、その後で大分構ってあげなければならないけど。
僕と、アンネとアルフ先輩で夕食を食べた後。ニヤと一緒に部屋へと戻り、今日僕がいない間に何をしていたのかニヤの話しを聞いてあげる。
そんな時、ニヤは嬉しそうにピョコピョコしながら話しをするんだ。僕の妹のリリーが小さかった時もこんな風にピョコピョコしてたなぁと思い出していた。
(ちょっとお兄ちゃん! 何時もの定時連絡遅くない?!)
おっと、可愛いリリーからの内線だ。
(ごめんごめん、今日も先生に呼ばれて遅くなってたんだよ)
(それって大丈夫なの? お兄ちゃん勉強ついて行けてる?)
(それは大丈夫! こう見えて学年では一番の成績だからね!)
(それは、それで不安……てか、じゃあ何で悩んでいる様子なの?)
(リリーは何でもお見通しなんだね。今日、先生達とやった実験で、これを本当に進めて良いんだろうかと悩んでいたんだよ)
(それは、お兄ちゃんは必要だと感じてるの?)
(そうだね。これがあれば、沢山の人が助かるんだと思う)
(だったら、お兄ちゃんの思うようにすれば良いよ。きっとそれを考えられるだけで、お兄ちゃんの目的は半分達成されているはずだから!)
(何それ?)
(何となく? そう思った)
(ふふ。ありがとうリリー、何だかスッキリしたよ、リリーはすごいなぁ)
(ふふふん。お兄ちゃんの妹だからね! ねね、ニヤは何してるの?)
(ニヤは。今日はずっとお留守番だったから、今は僕の膝でゴロゴロしているよ)
(膝!!)
その瞬間、膝で寝ていたニヤが飛び起きた。
(はい! ニヤです! リリーお姉様!)
リリーがニヤと話し始めたので、僕は机に向かって作業しているイヅミの様子を見てみる。
「どんな感じ?」
「ちょうど書き終わったとこにゃ」
今のイヅミは人の姿になって、僕の詠唱を文字に書いている所だった。
「これを先生に渡すだけ……では終わらないよね」
「あの人達には読めないにゃ」
そうだよね、少なくともここに書いた初級魔法の詠唱位は、誰かが言えるようにならないと僕の出番は終わらないよね。
「取り敢えず。明日この紙を先生の所に持って行って、考えるのはそれからだね」




