魔法の検証3
「では、これから皆さんにやってもらう事を説明しますよ。我々が普段使っている詠唱と、アベル君の詠唱でどの位強さが違うのか、調べるのは土魔法の『ぶりっと』で、的に到達する距離を測りたいと思います」
一般的に『ぶりっと』では十五メートル離れた距離で的を破壊できる力を持つ。的に当てるだけなら三十メートルでも届くけど、これを僕の『Bullet』だと何処まで離れられるか調べるんだって。
後は、人による違い。ジルヌール先生は別格として、アンネは水魔法に適性があって、アルフ先輩は土魔法だからその違いも出るのか調べたいそうだ。
アンネとアルフ先輩がそれぞれ区切られた枠の前に立つ、的までの距離は十五メートル。最初は今までの詠唱の『ぶりっと』から
「土よ石弾となり敵を撃て『ぶりっと』」
バキッ!
「土よ石弾となり敵を撃て『ぶりっと』」
バンッ!
アルフ先輩の石弾は的を破壊し、アンネの石弾は当たったまで。
次は三十メートルまで離れた場所から。
「土よ石弾となり敵を撃て『ぶりっと』」
バンッ!
「土よ石弾となり敵を撃て『ぶりっと』」
パン。
アルフ先輩も流石に当てるだけ、アンネは辛うじて的に当てていた。
ガリレオ教授は紙に何かを書き入れながら「なるほど」と呟いている。
「では次に、アベル君の詠唱で「ぶりっと」を発動して下さい。的までの距離は十五メートルから、効果の公平性を測るのでフル詠唱でお願いします」
「土よ石弾となり敵を撃て『Bullet』」
バキッ!
「土よ石弾となり敵を撃て『Bullet』」
バキッ!
二人の『Bullet』は、どちらも的を破壊した。
次は三十メートル。
「土よ石弾となり敵を撃て『Bullet』」
バキッ!
「土よ石弾となり敵を撃て『Bullet』」
バンッ!
今度は差が出た、アンネの『Bullet』は的を破壊できずに当たっただけだ。
もう十五メートル離れる。訓練場の壁ギリギリまで下がった場所なのでこれが最長になる。
「土よ石弾となり敵を撃て『Bullet』」
バンッ!
「土よ石弾となり敵を撃て『Bullet』」
今度は、アンネの『Bullet』は的まで届かなかった。見るとアンネは少し悔しそうな顔をしている。
「次はどうするんですか?」
ガリレオ教授に聞くと、次は水の魔法で同じ事を繰り返すんだって。アンネが水の魔法と聞いて少し笑顔になっていた。
さっきの石弾に合わせる為に、『うぉーたーぶりっと』と『WaterBullet』を詠唱する。
ここで思わぬ結果が出た、アンネの『WaterBullet』が四十五メートル離れた場所から的を破壊したんだ。これにはガリレオ教授やジルヌール先生も驚いていた。ちなみにアルフ先輩はさっきのアンネと同じ結果だった。
「アンネは水魔法の適性が高いんだね」
アンネは僕の方に振り返って「Bクラスの中では私が一番水魔法の力が強く出たんだよ」と教えてくれた。
「そうだ、アンネは魔法を撃つ時何を考えている?」
「?」
アンネは僕の質問の意味が分からないのか、首を捻るだけだったので言い方を変えて質問する。
「詠唱してる時、どんな結果をイメージして魔法を使っているのかなと思って」
アンネの返事は「特に何も考えていない」と言う事だった。そして、アンネに先日みたジルヌール先生の魔法の結果を話して聞かせた。
ギュッと固まった石弾が音もなく飛び、的を突き破って背後の土壁にも突き刺さる。それをアンネにも想像するように説明する。
初めは「分からない」と言っていたけれど、何度かアンネの水魔法が的を突き破って土壁に突き刺さる想像をさせる。
「そのイメージを持ったまま、もう一度『WaterBullet』を撃ってみてよ」
アンネがすっと歩いて的の前に立つ。さっきの想像を頭の中で繰り返しているのか、目を閉じたまま動かない所をガリレオ教授やジルヌール先生も気が付いて何を始めるのかと見守っている。
アンネの目が開き的を睨む、的に向けて手を伸ばし。
『WaterBullet』
シュッ!
ガッ! バァン!!
「やった!」
僕は思わず声を上げたけれど、何だか周りの様子が変だ。皆んなを見るとアンネを見て固まっている。当のアンネも自分の手を見て信じられないような顔をしている。
「アンネ・マッターホルン! 君は今何をしたのだね?!」
一番に復活したガリレオ教授がアンネに詰め寄る。
「アベルに教えて貰って、結果をイメージして魔法を撃ってみただけです」とオロオロしながら僕を見るアンネ。
ガリレオ教授とジルヌール先生の目が僕を睨む。
「またアベルか……」
「アベル! 僕にも教えて欲しい!」
アルフ先輩が自分にも教えて欲しいと駆け寄ってきた。
「さっきのアンネの魔法は見てましたか?」
アルフ先輩はブンブンと頷いて。
「見た、見た、見た、見た!」
「あの魔法を自分で撃ったと思って想像するんです。と言うか、もっと速く、もっと強くと想像してもいいと思います」
「アレを自分が撃ったと想像……」
アレフ先輩は、ボッーっと何処かを見る感じで固まってしまった。
『Bullet』
ガッ! バズンッ!
突然、隣の枠から『Bullet』の詠唱と大きな音が聞こえてきた。見ると、ジルヌール先生が立ち構えていたので先生が詠唱を唱えたのだろう。
的の方を見ると、音の割には何も変わって無いように見える。
「あれ?」
先生達と一緒に的まで歩いて近寄る。
「えっ!?」「ほぉ」
ジルヌール先生の魔法は、的に小さな穴を開けて、後ろの土壁に深く深く突き刺さっていた。
その状況もジッと観察するように見ていたアルフ先輩が「んっ!」と声を上げると。
「僕もやります!」と言って一番離れた場所まで戻ってゆく。
アルフ先輩に続いて皆が戻ると、先輩は「うん」と頷いてから。
『Bullet』
的に向かって手を伸ばした先から、見えない石弾が発射される。
ガッ!
バスッ!
全員で的を確認しに歩く。
「アルフ先輩。さっきの石弾……見えなくなかったですか?」
先輩が横を歩きながら自慢そうに鼻を鳴らす。
「分かったか? 石弾って別に土に限定する必要も無いんじゃないかと思ってな、家にあった水晶を思い出して詠唱してみた」
「水晶?」
「アベルは見た事ないか? 水晶ってのは少し白っぽい透明で六角形をした宝石なんだよ。家にあるのが石弾と丁度同じ位のサイズだったからイメージしたんだけど、上手くいったみたいだな」
後ろでその話しを聞いていたガリレオ教授とジルヌール先生も、先輩の工夫を感心して頷いていた。




