魔法の検証2
それから数日した所でまた先生から呼び出しを受けた。今度はアンネとアルフも一緒だ、詠唱による効果の違いを試したいらしい。
先生の研究室に着くと、中で先生と話している人の声が聞こえる。
「この声、何だか聞き覚えがあるような?」
扉をノックして入室を伺うと、すぐに「入れ」と返事が返ってきたので扉を開けると。
「あっ」
「やぁアベル君! 久しぶりだね。元気だったかい!」
中にいたのはガリレオ教授だった、どうりで聞いた事ある声だと思ったんだ。教授はジルヌール先生の机に何か本を沢山広げて読んでいる所だった。
「さあ、後ろの二人も入ってちょうだい。あっニヤちゃんも来たんだね、ニヤちゃんはこっちに座っておいてくれるかな」
ガリレオ教授が横のテーブルにお菓子を広げニヤをそこに座るように言うと、ニヤはとても嬉しそうにちょこんと椅子に座ってお菓子を眺めてる。
「ニヤ、少しづつ食べるんだぞ」
僕はそう言ってテーブルに水を置いておく。
「お菓子……」
ニヤはお菓子に釘付けだ。
「それでは、三人も席に座っておくれ。今日の予定を説明しよう」
ガリレオ教授がジルヌール先生を放っといてドンドン先に進めようとしているので、先生がちょっと待ったをかける。
「教授! 今日は教授も知らない生徒も居るのですから、先に名前くらい聞いてください!」
ジルヌール先生が突っ込むと、ガリレオ教授は僕たちの顔を見回してから。
「アベルにアンネさん、ニヤちゃんに……君は確か、D寮の寮長のアルフ君だったよね?」
ガリレオ教授に名前を呼ばれて、慌てて立ち上がって挨拶をするアルフ。
「はい! 上級部二年B組のアルフレッド・ログマイヤーです! ガリレオ教授に名前を知って貰えてて光栄です!」
緊張した様子で自己紹介をするアルフと、なぜ名前を知っているのかと不思議な顔をするジルヌール先生。その顔を見たガリレオ教授が自慢そうに。
「テストの採点の時に君に呼ばれたからじゃないか。何故かシルビア君への課題を説いた学生がいると言って。その後、どうしても気になって話しを聞きたいと大学園に来て貰ったらアベル君だった訳だが、その時にアンネさんとニヤちゃんも一緒だったので知っているのだよ。それに、僕は大学園と学園の全生徒の顔と名前を全員覚えているからね」
トントンと頭を指で突きながら。どうだとばかりに胸を張って語るガリレオ教授に、ジルヌール先生は「全員!?」と言って固まってしまった。
「分かったらもう話しを進めるよ! 時間もあまり無いのだからね!」
プンプン! と言った感じで机に戻ると、置いてあった本を手に取って僕たちに説明を始める。
「今日来て貰ったのは、アベル君の詠唱の正体とその効果を調べるため。二人はアベル君と仲が良いと聞くし、あの詠唱も一度耳にしたのだろう? 他の人には話せないとなると、既に知っている者に協力して貰うしかないからね」
あれ? その手にした本の意味は?
「ちなみにここにある魔法の本には、アベル君が発した詠唱と思われる言葉は載っていなかった」
「えっ!? 全部ですか?」
机の上にはかなりの量の本が載ってますけど? 全部?
「全部だ」
ガリレオ教授とジルヌール先生も頷く。
「まあ、ジルヌール君に聞いた詠唱の言葉を何となく文字にして、今使われている詠唱の派生や歴史的に古い言葉や文字が書かれている本で調べた内では、と言う程度だけどもね」
「と言う事で、アベル君にはその詠唱を文字に書いて欲しいのだけれど……アベル君、書ける?」
そう言って紙とペンが用意されて、何となくペンを持たされたけれど。
『ぶりーず』が『Breeze』で文字になると……。
ダメだ、全くペンが動こうとしない。
(アベル、あちしだと書けそうな気がするけれど、どうする?)
(イヅミが? だけど、そうすると人の姿をしたイヅミを皆に見せると言う事になるね。それはまだ避けたいかな)
(分かったにゃ、では後で部屋で書くにゃ)
(そうするかな、後でお願いするね)
ペンを握ったままジッとしている僕を皆が見つめている中で、僕はイヅミとそんなやり取りをしていたのだけれど。
「やっぱり書けないみたいです、暫く試してみるので紙とペンを借りておいても良いですか?」
そう言って、ジルヌール先生に数枚の紙とペンとインクを貸して貰った、部屋に戻ってから書くとしよう。
「では、次は詠唱の効果を確かめるとしましょうか。訓練場へ行きますよ」
僕が詠唱を文字で書けないと分かると、ガリレオ教授は次の課題へと切り替えた。皆で研究室を出て訓練場へと移動する、ニヤもお菓子を抱えて付いてくる。
「アルフ君はアベル君の詠唱言えたんだよね?」
今日の訓練場は、ジルヌール先生が実験を行うからと他の生徒は入れないようになっていたので、僕らだけの貸し切り状態だ。
僕の詠唱を教えたのはジルヌール先生とアルフだけ、そう言えばアンネはどうなんだろう?
「アンネはこないだの詠唱言えそう?」
アンネがちょっと首を傾げて「もう一度教えてくれる?」と言ってきたので、僕はフッと町にいたルルの事を思い出してしまった。
「アベル?」
「あっ、ごめん『Breeze』だよ」
「んー、『Breeze』」
ブワァ!!
「うわっ!」「うぉ!」「きゃ!?」
いきなり発生した突風に皆が驚いていると、当のアンネも驚いた顔をしている。うん、いつもの『ぶりーず』と思ってると全然違うから驚くよね。
「アベル君、いきなり試さないでくれるかな? こっちにも準備があるのでね」
資料を用意していたダビンチ教授から、突風で舞い散った紙を拾いながら文句を言われた。僕とアンネも慌てて紙を拾う。
「ごめんなさいダビンチ教授、でもアンネが一回で詠唱を言えると思わなくて」
「まあいいでしょう。検証できる検体は一人でも多い方が良いですからね」




