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不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜   作者: カジキカジキ


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魔法の授業2

 僕は辺りを見回して、詠唱の練習をしている他のクラスメイトを見る。魔法の素質があったクラスメイトは、問題なく魔法が発動し喜び合ったり、さも当然という顔をして他の子を見ていたり、水の魔法を発動させて服を濡らしたりしていた。


「よし」


 僕は席を立つと、その練習をしている子達に近づく。詠唱を唱えたタイミングで……『Wind』


「やった! えっ? あれ?」


 うん、やっぱり消える。


 次。


「よし! あれ?!」


 次。


「おいアベル、何をやっている?」


「!?」


 ジルヌール先生に見つかった! 僕は心臓が止まりそうになったのを深呼吸して抑え、平静を装う。


 ジルヌール先生は僕の隣まで歩いてくると。


「何をしていたのかと聞いている」


 声に少し怒りを含んでいる感じだ。


「えっ……他の子の魔法がどんなか……見ていました」


 僕の言い訳に、ジルヌール先生がジロリと睨んで。


「お前、詠唱を口にしていただろう」


「えっ?!」


 ザワッ!


 ジルヌール先生の言葉に僕も思わず声が出て、聞こえた子達が騒ぎだす。


「アベルが魔法?」「詠唱?」「何で?」


「人の詠唱と何が違うのか聞いていただけです」


「お前は魔法が使えないのだから、詠唱も何も関係ないだろう」


「だけど、ちゃんと発声すれば出来るかもと思って……」


 ジルヌール先生からの圧が強まる。


「違うな……先ほど、お前の側から魔法の発動とは違う何かを感じた。お前、何をした?」


(アベル、ジルヌールは気付いているにゃ。本当の事を話した方がいいにゃ)


「……」


「どうした? 言えないのか」


 ジルヌール先生の怒りが増している、このまま黙っていたら追い出されるかも知れない。


「あの……後で、先生にだけ話すのはダメですか?」


「ここでは言えないのか?」


 僕は唇をギュッと噛み締めて頷く。


「分かった。では、この授業が終わった後で私の研究室に来なさい」

 

 後で良いと言われてホッとして自分の席へと戻ると、アンネから「大丈夫?」と心配されたので「心配かけてごめん」と謝ってから席に座る。


(イヅミ、ジルヌール先生は何処まで分かってると思う?)


(さっきの様子からすると、因子の動きを何となく感じ取っている感じにゃ。何をしたかまでは分かってないと思うにゃ)


(そっか……)

 

(それでも隠しているのは良くないにゃ。全部話した方が良いにゃ)


(分かった、ジルヌール先生には全部話すよ)


◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆


「来たか……」


 今日の魔法の授業中に、不思議な感覚を覚えたので見てみると、アベルが何か詠唱している者の側をウロウロしていた。そして魔法が発現したと思うと、フッと消えていくのを見て愕然とした。


 あれは、超位魔法の魔法無効?! 魔法を使えない筈のアベルが何故だと思い問い詰めたら「誰も居ない所で話したい」と言い、私の研究室に呼んだのだが。


「では、お前が詠唱を唱えると勝手に他の者の魔法が消えてしまったと言うのだな?」


「はい」


 アベルは魔法の素質は無かった筈だ、それなのに詠唱をすると他人の魔法に干渉する超位魔法なんて発動できる筈がない。そう思うのだが、入学試験の時にあの石を飛ばした魔法をアベルは使っている。


 それを思うと、魔法の素質とは別の要素で魔法を使っている可能性もあると考えられる。


「では、私の魔法を消してみせてくれて」


 可能性があるのなら、本人に試させれば良い。


 アベルが黙って頷いたので、私も授業で教えた基礎魔法の詠唱を行う。


「風よ我が意を得て撃ち放て『ういんど』」


 私の手の先で魔法が発ッ……。


『Wind』


 次の瞬間、アベルの口から聞き慣れない詠唱の言葉が発せられた。


「消えた?!」


 魔法を発動した本人が意識して止めていないのに魔法が消えてしまった。


「どうですか?」


 私は念のためもう一度試してみたいと申し出る。


「土よ『ぶりっと』」


 基礎魔法の『ういんど』とは違う、初級魔法の『ぶりっと』を発動する。石弾の発……。


 『Breeze』


 アベルのその一言で石弾が消える。入門魔法でなく初級魔法まで消されるとは。しかも、何となく聞き取れる詠唱は基礎の風魔法『ぶりーず』か?


 基礎魔法の詠唱で、初級とは言え上位の魔法を消してしまえるとは。もしアベルの発現させているのが本当に超位魔法の『魔法無効』であれば簡単な事だろうが……「ん?」


 アベルが何やらジッと立ったまま動かないでいる。いや、目玉だけがキョロキョロと動き、指先や首の動きから察するに。


「お前、誰と話している?」


 アベルが念話スキルを使って誰かと話していると思いカマをかけたのだが。


「ジルヌール先生、これから話すことは誰にも言わないと約束して貰えますか?」


 その後、アベルの口から聞かせられた話しは、私の魔法人生を大きく狂わせる内容だった。


 まずアベルのスキル『わらしべ長者』。アベルが手を触れた事をキッカケに発動し、その物と何か交換出来る物を持つ(待つ)相手の元へと強制的に行動させられてしまうスキルだと言う。


 そして、そのスキルから発生した機能……と聞いたが正直実物を見せられてもスキルだとは信じられなかった機能。


「イヅミにゃ、アベルの目耳を通じてジルヌールの事もずっと見てたにゃ」


 猫ちゃん。目の前に現れたのはとても綺麗な毛並みをした白い猫ちゃん。その猫ちゃんが私に話しかけてくれている。


 思い起こせば幼少の頃、家で飼っていた猫ちゃんと話しがしたくてニャーニャー言ってみたり、言葉を教えようとずっと話しかけていたのだが、いつしか猫が私を避けるようになってしまい。


 お母様曰く「ジルがしつこくするから、メルティが逃げるのよ」と言われてしまった。


 そんな事を思い出していると……。


「失礼するにゃ」


 おもむろに私に近付き、膝に飛び乗ってその綺麗な顔を寄せてくる。「にゃ」とひと鳴きされて思わず顔を綻ばせると、ピトッと鼻と鼻をくっ付けられた。


 トゥクン。

 

(よろしくにゃ、ジルヌール)


 ふぉおおおーっ! 頭の中に直接響く猫ちゃんの声。


(先生、僕の声も聞こえますか?)


 猫ちゃん! 猫ちゃん!


(先生? せんせーい!?)


「何だアベル! 煩いぞ! せっかく猫ちゃんとお話し……」


 ジルヌール先生の顔が百面相のように変わって面白い事になっている。


「また一人、あちしの魅力に落ちたにゃ」


「んん゙っ! で、その猫ちゃん」


「イヅミにゃ」


「イヅミちゃんが、アベルのスキルから発生した機能だと言うのだな?」


「イヅミちゃん?」


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