魔法の授業
冬休みが明けると、いよいよ魔法の授業が始まる。
と言っても、魔法の素質が無ければ使う事は出来ないのだけど、その素質を少しでも伸ばす方法と補助素材を使えば、ちょっとの素質でも魔法は使えるようになると聞いていたのだけれど。
「アベルには、魔法は無理なようだな」
ガーン!
魔法の素質を測ることが出来ると言う『測定盤』、その板に書いてある魔法陣に手を置くと、体内にある本人の魔素を感じ取って素質を測ってくれる物と言っていたけれど……。
「たのむ、頼むから黙っていないで反応してくれよ!」
先ほどから測定盤は真っ黒なまま、これっぽっちも反応してくれない。
ちなみに他の子達の場合は。
「やった! 水の素質がある!」
測定盤に書かれた魔法陣から五方向に伸びる線のいずれかが光って反応し、その線の方向と長さによってその者の魔法の素質と強さが分かる。
その五方向の素質は、火、水、土、風、光の魔法に対応している。
「ねぇ先生! もっと強い補助具は無いんですか!?」
僕は今、先生から借りた魔法の補助具の一つ、杖を持って測定盤に挑んでいたけど惨敗。
「この杖、壊れてるんじゃないの?」
「貸してみな」
そう言ってロイが試しに杖を持って測定盤に触れると、ピカー!っと火と土の方向に光がメチャ伸びてた。
「くそッ! お前のかーちゃん女王さまっ!!」
「そうだけど……何だよそれ?」
当然のことを言われてポカンとしているロイ、あまりに悔し過ぎて自分でも何言ってるのか分かんなくなってる。
「アベル、お前にはあの石を飛ばせる土魔法があるではないか? 何でそんなに魔法に拘る?」
ジルヌール先生がやってきて僕にそう言うけれど。あれは魔法では無いんだよー、僕は魔法が使いたいんだよー。そんな事を思っても先生には伝わる訳もなく。
「他の者も調べなければならないんだ、気が済んだら向こうへ行ってなさい」とあしらわれてしまった。
魔法とスキルの機能って何が違うのかなぁ? ボンヤリと考えるけど何も分からない。これから授業で習っていくのだから、その内教えて貰えるのかな?
「「「わーっ!!」」」
ひときわ大きな騒めきが起こる。
見るとアンネが皆に囲まれていた。今日の授業はAクラスとBクラスの合同になっているのだけれど、だけどBクラスの皆は誰もAクラスの方に近寄って来ようとはしない。
「アンネは確か魔法が使えるんだったよな、いいなぁ魔法」
僕は嬉しそうにしているアンネを見て、羨ましさと妬ましさを感じてしまった。
魔法の素質の確認が終わったら、次は魔法の勉強になる。僕はどうせ魔法使えないし、と思っていたら「相手がどんな魔法を使ってくるのか分かれば対処も出来る、防いだり発動の邪魔をする事も出来るようになるのでしっかり覚えるように」と言われて大人しく授業を受けています。
魔法の素質、魔素があれば。この大気に含まれている因子を取り込んで詠唱を唱えると魔法が発動すると言う事なんだけど。
大気に含まれる因子って何だろうと思って聞いてみたけれど、先生も「見えないがそこにある存在」だと言われた。当然先生にも見えないらしい。
(イヅミには分かる?)
(今まで収納して取り込んだ書籍や資料にも、その辺の事は書かれてなかったにゃ。先生の話している事と同じにゃ)
(もしかしたら、ガリレオ教授なら知ってるかな? 今度会ったら聞いてみよ)
授業ではまず、入門魔法と呼ばれる魔法の詠唱を教えて貰い、要素のある生徒は魔法が発動するまで詠唱を練習していた。
ちなみに入門魔法は生活魔法と違って対応する要素がなければ詠唱しても発動されない。そして対応する要素は風と火と水魔法だけ。
念のため僕も詠唱を覚えておく。
教科書に書かれてある詠唱、水よ我が意を得て撃ち放て『うぉーたー』。火よ我が意を得て撃ち放て『ふぁいあ』。風よ我が意を得て撃ち放て『ういんど』、なるほど。
「風よ我が意を得て撃ち放て『ういんど』」
シーン。
やっぱり何も起きないのか……。
けど、何かこの詠唱には気持ち悪さがあるんだよなー。何だろう?
「風よ我が意を得て撃ち放て……」ふん、まあこの部分は問題無いな。
『ういんど』ん、やっぱりここだな、何か違和感が、言ってて気持ち悪いと言うかスッキリしないと言うか……。
『Wind』
「!!」
ん? 何だ今の感じ? 確かに何か感じたのだけれど、何も起きてはいない。
「何だろう、もう一度……『Wind』」
「!!」
「あれっ?」
その時、僕の隣で魔法の詠唱を唱えていた子が急に声を上げた。
「どうしたの?」
「う、うん。今、僕の詠唱で確かに火の魔法が発動したと思ったのだけど、発現した瞬間に消えてしまったんだ」
「それって失敗したんじゃなくて?」
「失敗の時は発動した感覚も無いからね、さっきは確かに発動したと思ったのに、何でだろ?」
(アベル……さっきの詠唱をもう一度唱えてみるにゃ)
(イヅミ? まあ、いいけど)
『Wind』
「えっ!? あれ?」
今度は反対に座っていたアンネが声を上げた。
「どうしたのアンネ?」
「今、発動していた魔法が勝手に消えちゃったの」
アンネまで?
(アベル、見えたにゃ!)
(どうしたのイヅミ? 見えたって何が?)
(因子にゃ、魔法の発動の元になる因子がみえたにゃ)
(え?! どゆこと?)
イヅミの説明によると、因子だと思われるとても小さくてキラキラした光の粒が僕らの周りに漂っていて。詠唱を唱えると魔法の発動と共に光の粒が集まって魔法が発現しているんだって、そこに僕が詠唱すると光の粒がゴッソリとその辺から無くなっているみたい。そして、その光の粒が無くなると、発現していた魔法も消えてしまったという事。
へー、僕が詠唱すると魔法は発動しないけれど因子は消費しているって事なのかな? しかも、他の子が成功している魔法ではほんの少しの因子しか無くならないのに、僕の詠唱ではかなりたくさんの因子が無くなってしまう。
ん? それってもしかして、もっと沢山の因子がある場所だったら僕にも魔法が使える可能性があるって事?
因子が沢山ある場所って何処だろう? この光の粒って何処からやってきてるのかな?
それともう一つ思いついたのが、僕が詠唱を唱えたらゴッソリと因子が無くなるって事は、他人が詠唱している時に僕が詠唱して魔法の発動の邪魔をする事も出来そうだという事かな? 現に、さっきも隣の子やアンネの魔法が消えていたしね。
これも色々検証したいなあ、だけど手伝って貰える友達いるかなあ……。




