王立学園
それからジーンさんに聞いた学園へ入る方法は、毎年行われる入学試験に合格する事。
学園は十才から十三才までが学ぶ初級部と、十四才から入れる上級部に別れている。初級部までは優秀なスキルで選ばれた子供は無条件で入れるが、上級部に進むには入学試験を受けないと入れない。
入学試験も誰でも良いわけでなく推薦者が必要と言う事で僕はコンドールさんにお願いする事にした。
僕が学園に入るのは上級部からと言う事になるね。
今年の試験は一ヶ月後に行われると言う事だったので、それまでの間に勉強して合格を目指さなければ!
・
・
・
「試験を受けられる方は、順番に並んで下さい!」
朝からずっと並んでいるんですけど。
悠々と馬車でやってきて、執事と思われる男性に付き添われて出てくる坊ちゃん、嬢ちゃん。金色のカードと共に書類を渡すと次々に受理されるのに、朝から並んで書類だけを持っている僕たちの列は、遅々として進まない。
「お願いします」
やっとの事で受付まで辿り着いた僕は、やる気のなさそうな受付の職員さんに書類を渡した。
「……」
いや、一言くらいあるでしょ?
書類の中を開き。後見人。スキル項目と特記事項が確認される。
僕の場合は、後見人がグリードル子爵とコンドール商会。王立学園への推薦をお願いした所、コンドールさんが子爵にも話して二人で署名してくれた。
スキルは誤魔化さず「わらしべ長者」と記入。特記事項の欄に、村の神童、村一番の秀才で、たまたま立ち寄ったコンドール商会の会長が見つけて、王立学園に推薦。スキルが凡庸だった為に教会では推薦されていなかった、と言う。見落とされていた才能を拾い上げたコンドール商会と言うストーリーをでっち上げた。
で、誰が神童で秀才だって?
もちろん僕です。イヅミの能力に係れば、どんな計算だって歴史だってマナーだって全部覚えてくれるからチョイチョイってもんです。
この後、書類が受理されればテストもあるらしいけど、そこで満点合格してあっと言わせて見せますよ。
あれ? お姉さん、何を悩んでいるのですか? 早くその右手に持った受理印を押して下さい。僕は中に入りたいのです。
お姉さんが後ろの男性に「代わって下さい」と言って席を立ち、奥に座っている偉いさんと思われる人の所に僕の書類を持って行く。
「終わったなら退けよ」
後ろの少年から小突かれて、僕は横にズレてお姉さんを待つ。少しすると、奥のお偉いさんが席を立ち、お姉さんと一緒にこちらに向かってきた。
「アベルか、お前の持つスキルの詳細が分からず。受験資格を満たすのか判断が付かない、向こうで実演をして見せて貰えるか?」
なるほど『わらしべ長者』ですもんね。問題ありません、これも想定済みです。
奥の、少し広くなっている場所に連れて来られる。他にもチラホラと人がいて、見ると剣を振ったりスキルを披露している様子だ。
「お前のそのスキルで何が出来るのだ?」
明らかに馬鹿にしているような口ぶりで聞いてくるお偉いさん。そうですか……。
「あの的に、石をぶつけます」
立っている場所から十五メートルほど離れた位置に立っている的を指差して答える。
「石を? お前の『わらしべ長者』は土魔法の系統なのか?」
勘違いだけど、少し興味を持って貰えたようだ。
「では無いのですが、物理的に石を飛ばせる能力があります。えっと、どこかに石コロは落ちてないかな」
足元を見回すけれど、キレイに清掃された広場には石コロ一つ落ちていなかった。
「これを使え」
そう言って出された手に、急に石が現れた。
「えっ!?」
僕が手のひらに出てきた石を見て驚いていると。
(アベル、この人かなり出来るにゃ)
(どう言う意味?)
イヅミから教えて貰ったのは、無詠唱で魔法を任意に制御できるのは上級でも難しいレベルの使い手なのだと。
今の場合は、土魔法の「ばれっと」を無詠唱で発動し、発現した石弾を前に飛ばすのではなくて、手のひらに発現させた事にあるんだって。
「ありがとうございます」
手のひらに乗った石弾を受け取る。この時、僕の心臓はドキドキしていた。だって本物の魔法だよ?! 僕の「スキル」で飛ばしている魔法モドキでは無くて、本物の土魔法で出来た石弾!
その石弾は、表面がツルッとしていて卵のような楕円形で、その辺に落ちている石とは全く違う質感だった。
「飛ばさないのか?」
初めて魔法に触れたドキドキと、これからやる事に緊張していたら早くやれと急かされた。
「やります。ちなみに、この距離で的に当てたら合格出来ますか?」
せっかくやるなら合格させて欲しいもんね。
土魔法使いのお偉いさんは、的との距離を見て「この距離で当てるだけなら凡庸、破壊出来れば可、倍の距離から当てて優良」と言った。
「それでは」
僕は、クルリと的と反対を向いて歩き出すと、ちょうど倍の距離で振り返る。
「ここから当てて、破壊します」
「なっ!?」「ほう?」
驚いたのは受付してくれた女性で、土魔法のお偉いさんは薄笑いで見ている。
渡された石を手のひらで包み、腕を前に伸ばす。一旦収納しないと飛ばせないから、その瞬間を見られたくないからね。
(イヅミ、任せた!)
「ハッ!!」
握りしめた手を開いた瞬間、声を出して収納から石弾を飛ばす。
バキッ!!
次の瞬間には、的から合格の音が聞こえてきた。
三人で的の場所まで歩き、一応状態を確認する。上司の魔法使いさんは、的の具合をジッと見てから。
「受理印を押してやれ」
「えっ? でも」
「私の顔に泥を塗る気か?」
そう言われて、お姉さんは渋々受理印を押してくれた。
「これで受験資格は得られたが、この後の試験でも合格出来なければ入学は出来んぞ」
その問に、僕は自信満々の顔でこう答えたのさ。
「満点で合格して見せますよ」




