トギリコ草の納品
計画は大成功だった。僕とニヤはトギリコ草を持って早速コンドール商会へと向かう。
「こんにちは、コンドールさんはいますか?」
お店に入ると、すぐに番頭さんが気が付いてくれて。
「いらっしゃいませアベル様。本日もイバラキ草の買取りですか?」
うん、もう何日も続けてイバラキ草を持ってきていたもんね。
「いえ、今日は別の草を持ってきていて……」
僕が、しどろもどろにそこまで言うと。番頭さんもハッと気が付いたようで。
「ありがとうございます。ここでは何ですから奥へどうぞ。すぐにコンドールも参ります」
そう言って、普段は入らない奥の個室へと案内された。
部屋に入って番頭さんが出て行くと、入れ代わりに入ってきた人がお茶とお菓子をテーブルに置いてくれたけど、何時もより香りが良くてお菓子もすごく綺麗だ。
ニヤは、ここで出して貰うお菓子が大好きで毎回楽しみにしている。もう一つお皿に乗ったお菓子を収納に入れると、僕はお茶だけを頂く。
「美味しい……」
「ありがとうございます。最近、南方から入るようになった紅茶と言う飲み物です」
そう言って、コンドールさんと番頭さんが部屋に入ってきた。
僕が挨拶するために立ち上がろうとすると。
「いやいや、そのままで結構ですよ。アレ……を持って来られたと伺いましたが?」
僕が席に座り直すと、コンドールさんも座ってきたけど、顔は少し不審気味だ。そうだよね、頼まれたのが昨日の話だもんね。
「たまたま、運良く手に入れる事が出来ました。間違っていないと思いますが、確認して下さい」
そう言って、布袋からトギリコ草を取り出す。その時、新鮮なトギリコ草の匂いもフワリと室内に漂った。
コンドールさんと番頭さんが次々とトギリコ草を確認して頷く。
「間違いなくトギリコ草だ、しかもこんなに新鮮な状態で持って来て頂けるとは……」
コンドールさんが番頭さんに目配せすると、番頭さんが一礼してから部屋を出て行く。
「あー、こんなに早く依頼の品を持ってきてくれて何とお礼を言っていいか。ただ、残念ながら先方と依頼の報酬に付いて話が付いていなくてな。今はトギリコ草の納品の金しか用意出来ない、済まないがそれで譲って貰えないだろうか」
そう言って、コンドールさんがまた頭を下げる。
「もちろんそれで大丈夫です。と言うか報酬だなんて大袈裟な」
そう言うと、コンドールさんの顔が急に強面になり。
「ダメだぞアベル、コッチが依頼してお前は受けた。そしてキッチリ仕事をしたのだから報酬は受け取らなければならない。もし報酬を受け取らなかった事が他に知れたら、お前は無料で仕事をする。そして、他の冒険者にも安く仕事しろ、無料でヤレと悪い風潮が広がってしまうんだ。コレはお前の為だけで無く、他の冒険者の為でもあるからな、しっかり覚えておけ」
そう年長者として教えて貰った。
番頭さんが入ってきて。トレーに乗せたお金、金貨一枚が手渡される。
「多すぎませんか?」と言う僕の質問に。
「季節外れで手に入りにくい商品を、依頼された日からたった一日で用意した特急料金込みの金額だよ。コレとは別に依頼の報酬は必ず支払わせるから期待して待っていてくれ」
そう言ってコンドールさんは席を立ち「急いでコレを相手に渡さなければならないので」と言ってトギリコ草を持って出掛けて行った。
残された僕とニヤに、番頭さんがお茶のお代わりを用意してくれる。
ニヤが「お菓子が欲しい」と小さく呟くと。笑顔の番頭さんが「ニヤさんにはお代わりのお菓子を持って参りますね」と、新しいお菓子も持ってきてくれた。
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(と言う事で、トギリコ草は無事相手に届ける事が出来たよ。リリーも父さんと母さんに聞いてくれてありがとう)
(ングング……おいしーい!)
(おいしいにゃ!)
今日もリリーと定時コールです。
コンドールさんの所のお菓子をお代わりの分まで収納に入れて持って帰った僕は。お菓子をイヅミとリリーに分けてあげました。リリーの美味しいの声と、イヅミの溶けそうな笑顔を見れて、お兄ちゃんは嬉しいよ。
(イヅミも頑張ったんだね)
(リリー姉様、イヅミは頑張りました)
イヅミの新しい能力も分かったし、これからどんどん遠くに行って、移動できる場所を増やしていこう。
「次は何処に行くにゃ?」
これが終わったら、ニヤも元気になったし次の街に向けて出発かな。最終目的地は予定通り王都という事で。
「それにしても、ニヤは本当に元気になったな」
イヅミの食べているお菓子を羨ましそうに見ているニヤ。あなたはコンドールさんの所で沢山食べさせて貰ったでしょう。
初めて見た時は、盗賊に捕まってボロ布かと思う状態だった、着替えさせた時の暴行の痕も痛々しかったのが、この一週間程で顔色も良くなり、茶色だと思った背中の毛は金色に輝いて、体力も戻り暴行の痕もかなり薄くなっている。
耳と尻尾は大分前に切られていたようで戻る気配はない。幸い耳は、人で言う耳たぶが切られている状態で、音は聞こえるけれど小さな音などは聞こえ難いみたい。声に出して話すのが苦手なのもそのせいだって。
尻尾も、昔はバランスを崩していたけれど、今は慣れて普通に歩けている。
新しい服を着て、頭はカチューシャやリボンで耳の穴を保護するように隠していると普通の女の子に見える。初めて会った時に男だと思った自分が恥ずかしいです。




