Eランクの仕事
昨晩はお土産の干し肉に、ニヤが涙しながらアグアグ食べていました。
「さて、今日は何しようかな?」
昨日も仕事をしたけど。水路掃除は簡単に終わったし、その後のやり取りの方が面倒だっただけで特に疲れてもいないので今日もお仕事をしようと冒険者ギルドに向かったのだけれど。
「Eランクのお仕事って何ですか?」
昨日も顔を合わせている受付のお姉さんに声を掛けると、昨日あれだけ稼いでおいて何で来ているんだコイツは? みたいな顔をされた。確かに昨日は金貨四枚なんて大金を稼いでいるが、これから旅を続けて行くには全く足りない。何か割りの良いお仕事無いですか?
「今残っているのは特に無いですね。通常依頼の薬草採取はどうですか?」
Eランクになると街の外に出て仕事が出来るので、薬草採取や食用になる獣の討伐なんかも通常依頼に入ってくる。
けれど、通常依頼となると報酬はそれなりに安い金額となる訳で。
(アベル、アベル。薬草だったら私の検索で探せるにゃ。報酬の高い薬草を効率よく探せば、薬草採取でも稼げるにゃ)
なるほど、イヅミからの提案はお手軽かつ効率の良いものだったので僕はその案を採用して薬草採取を受ける事にしたんだ。
「ところで、どの薬草が高く買い取って貰えるのか教えて貰えますか?」
と言う事で、ギルドの受付のお姉さんに聞いてみたら。
「こちらが薬草の通常依頼の買取り価格になります。薬草の種類や見分け方、収穫の注意事項があちらの資料棚にありますので、キチンと調べてから行かれる事をお勧めします」
そこで、資料棚から資料を取り出し薬草の種類や収穫の注意点なんかを覚える、主にイヅミが。
(覚えたにゃ)
「よし、覚えた」
資料を戻すと、冒険者ギルドを出て薬草採取に適した場所を目指して移動を始める。西門から出た先の山の方向に一時間程歩いた林というか山の入り口に到着すると。周りに冒険者や他に人がいない事を確認する。
(さて、イヅミ。よろしく頼むよ)
(任せるにゃ)
と言って姿を現すイヅミ。
「んーーーっ!」
猫のような伸びをするイヅミを横目に、僕は薬草取りをする為の準備をする。手袋をして、茎から切るためのナイフと、根を掘るための小さなシャベル。薬草を入れておく籠(まあ収穫した薬草は収納に入れておくんだけどね)
「準備は良いかい?」
そう言うと、イヅミの瞳がキラリと光った。
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「お願いします」
トサッ。
慣れた手つきで薬草をチェックする受付のお姉さん。
「今日も全部イバラキ草ですね」
初級ポーションの材料になるイバラギ草と、上級ポーションの材料になるイバラキ草。その違いは、葉っぱの裏側の筋が赤いかどうかだけ、更に生えてる数も少ないとあって買取り価格は何と十倍にもなる。
イバラギ草は五枚で銅貨二枚、イバラキ草は五枚で銅貨二十枚だ。
僕はそのイバラキ草だけを、三日連続で集めて持って来ていた。
「全部イバラキ草です。状態も良く、収穫も丁寧にされているので満額で買取りさせて頂きます。イバラキ草、五十枚で銅貨二百枚です、お確かめ下さい」
僕は、出されたトレーの銅貨を特に数えもせずに布袋へとしまうと、すぐにカウンターを離れてギルドを後にした。
ギルドの外に出た僕は、早足で歩くとすぐ近くにある商店へとかけ込む。
「コンドールさんは居ますか?」
店の中にいる見慣れた店員さんに声をかけると、「あっ、アベル様。いつもありがとうございます。イバラキ草の買取りですね。どうぞコチラにお掛けください」
そう言って店の真ん中のテーブルに案内される。
相変わらず座り心地の良い椅子に心を奪われていると。店員さんが大きなトレーを持ってきて「こちらに買取の品をお願い致します」と差し出してきた。
僕は、収納経由の背負い鞄から出したイバラキ草をトレーに出してゆく。
トサッ、トサッ、トサッ、トサッ。
あっという間に薬草で山になるトレー。店員さんは顔色ひとつ変えずに受け取ると「暫くお待ち下さい」と言って離れて行った。
別のお店の人がお茶を持ってきてくれて、お菓子と一緒に置いて行ってくれたので。お茶とお菓子を頂きながらコンドールさんを待つ。
「また沢山の薬草を持ってきたな、番頭も驚いとったぞ」
そう言ってこの店の主人、コンドールさんが現れた。店の主人が現れた事で、店の中にいた他のお客さん達が騒めく。態々店主が出てきて対応するのがまだ若い冒険者なんだ目を引いて当然なのだろう。
コンドールさんと世間話をしていると、背筋を正したおじさんが近寄ってきた。
「旦那様、アベル様の買取り代金になります。ご確認ください」
そう言って出されたトレーのお金は、金貨一枚。
冒険者ギルドでの買取り価格は、イバラキ草五枚で銅貨二十枚だったけれど。コンドールさんに提示された金額はイバラキ草五枚で銅貨二十五枚。今回買取に出したイバラキ草は二百枚だったので、買取り価格は銅貨で千枚、金貨で一枚だ。ちゃんと全部買い取って貰えたようです。
「ありがとうございます」
お礼を言って、金貨を布袋へとしまい。立ち上がろうとした所でコンドールさんに呼び止められる。
グイッと顔を寄せると静かな声で「ちなみに、トギリコ草を手に入れる事は出来ないか?」と聞かれた。
トギリコ草、冬明けから暑くなる迄の僅かな期間に育つ薬草で、特に産まれたての赤ちゃんが罹る病気に効く薬になる薬草だったと覚えている。(イヅミが)
「トギリコ草が必要なんですか?」
コンドールさんは少し声を低くして「ある屋敷に産まれた子供が病気に罹ってな。トギリコ草を探しているんだが、今は時期はずれになるんで手に入らないでいる。普通なら放っといても治る病気なんだが、その屋敷の子供は別の病気も持っていて、併せて発症した事で命も危ないと焦っているんだ。金なら幾らでも用意させる、何とか手に入れて欲しい。頼む」
何と、コンドールさんが頭を下げて頼んできたので慌てて頭を上げて貰った。僕も可能性は低いと断ってから、一応探してみると約束してお店を後にした。
(イヅミ、トギリコ草ってどこかに残っているかな?)
(この辺りだともう厳しいかもにゃ。もっと冬場が寒い地域だと残っているかも知れないにゃ)




