お金を稼ぐ2
「副ギルド長、コンドールさんをお連れしました」
ギルド長の部屋に案内された僕たちは、テーブルの席へと座りギルド長を待つはずが、あれ? いま副ギルド長って言ってた?
ギルド長の部屋の奥の席に座っていた人物が立ち上がり、テーブルの方へとやって来た。
「やあやあコンドールさん。今回も冒険者ギルドに依頼をしてくれてありがとうございます。ですが、何ですかこれは? 探す物が分からなければ報酬も期間も何も決められませんよ?」
飄々とした顔でコンドールさんの向かいに座った男性が、依頼の内容を確認する。
「ふん、受付に聞いて分かっておる癖に」
ムスッとした顔で、その人を睨むコンドールさん。
「それと」
そう言って、チラッと僕を見たその人は。
「この子は何ですか? 見た所冒険者のようですが?」
「こいつはアベルだ。昨日ギルドに登録したばかりの新米冒険者だと、今日は私の依頼の達成の為に来て貰っている」
「えっ?! 昨日? そしてもうコンドール商会の指名依頼ですか?」
驚いた顔をして僕の方を見る副ギルド長さん?
「指名依頼と言うか、私の探している物をアベルが持っているから。私が依頼を出して、アベルが受注、依頼の品を納品、依頼達成だ。何も問題あるまい?」
「え? それでしたら直接……あ、まあそうですね。うちに依頼を持って来て頂けたのは感謝致します、昨日登録したばかりのFランク冒険者の成果としては破格の依頼になりますかね」
コンドールさんは、椅子に深く座り直すと。
「それもこのアベルから言い出した事だ、私は直接でも良いんだがね」
そう言うと、今度は副ギルド長さんの方が慌てて。
「いやいやいやいや! 待って下さい! コンドール商会さんからの依頼ですから、ギルドでも一番に受理させて頂きますよ!」
その時、部屋の扉が開いて豪快な笑い声と共に一人の人物が入ってきた。
「ガッハッハッ! コンドールさんよ、あまりルビーを虐めてやらんで下さい。ほらルビーも、さっさと依頼を受理してこい」
副ギルド長さんは、入ってきた人を確認すると慌てて用紙を持って飛び出して行った。入れ替わりに副ギルド長が座っていた席に座った人は。
「あれ?」
僕は、座ったおじさんに見覚えがあった。
「おう坊主、また会ったな。しかも今日はギルド長の部屋で、この街の大商人コンドール氏と一緒たあ、大した出世だな」
「ギルド長を知っているのか?」
隣に座るコンドールさんが、不思議な目で僕に聞いてきた。
「昨日、冒険者登録の受付をしてくれたおじさんです。ギルド長とは知りませんでした」
「何をやっているんだアンタは」とコンドールさんに突っ込まれ「冒険者の様子を知るには一番なんだよ、たまにこんな面白れえ事も起こるしな」と笑いながら僕の方を見てる。
「お待たました」
扉をノックする音と同時に入ってきた副ギルド長さんの手には、受理された依頼の用紙が握られていた。それと、受付のお姉さんがカップに入ったお茶まで持ってきてくれたよ。
ギルド長が副ギルド長から用紙を受け取って内容を確認。ニヤリと笑いながら頷くと、用紙を僕の目の前に置いて。
「受理したての依頼だ、坊主。受けるか?」
受けるも何も、僕しか依頼を達成出来ないのだから受けますよ。
「受けます」
僕がそう答えると、その用紙に依頼を受けた僕の名前が記入される。
「これでアベルが依頼を受けた訳だが。で?」
僕は服のポケットから指輪を出すように見せかけて、収納から指輪を取り出す。
「これを、依頼の品としてギルドに提出します」
そう言って、テーブルに置かれたトレーに「コトリ」と指輪を置いた。そう、僕の手から指輪が離れたと言う事はスキル「わらしべ長者」は完了したんだ。
さっ、とコンドールさんが手を伸ばすのをギルド長さんが制して、ギルド長さんが摘み上げると、指輪を眺めて何かを確認する。
「間違いなさそうだな、ほれ」
そう言うと、その指輪をコンドールさんへと渡す。コンドールさんも指輪の裏側をジッと見て確認すると。
「間違いなく、私の指輪です」
ギルド長さんはその言葉に頷いて、テーブルにあった用紙をコーンドールさんに渡してサインをさせ、続いてギルド長がサインをする。
「これで、依頼は達成だ。最短記録じゃないか?」
そう話すギルド長の目の前では、副ギルド長とコンドールさんとでお金のやり取りがされている。
そして。
コトッ
副ギルド長が持つトレーに乗せられた金貨が、僕の目の前に置かれた。
「この依頼の報酬、金貨五枚から。ギルドの取り分二割を引いた残り金貨四枚です。確認して下さい」
ほえー、たったこれだけのやり取りで金貨四枚だって! これから僕とニヤの食費とか服代とか色々必要だったからメチャクチャ助かる!
「それから、アベル。冒険者証を出してみろ」
そう言われたので、首から下げていた冒険者証をギルド長に渡すと。何故かポケットから出したナイフで僕の冒険者証を削り出した。
「えっ!?」
驚いている間に、作業が終わってホレッと渡されたそれには。
「Eランク?」
Fに一本線を加えたEランクと書き換えられていた。
「Fランクの冒険者は。依頼を規定数こなすか、自前で依頼を取ってくるか、金貨二枚を稼いだら昇格するんだ。お前さんは、自前で依頼を取ってきて金貨四枚を稼いだ。立派にEランクの資格を持っているから今日からEランクだ。これも最短記録か?」
この国で金貨一枚と言うと、僕の住んでいた町では家族が約一ヶ月暮らすのに必要な金額になる。この街だともっと必要になるだろうから、一ヶ月分で金貨二枚? 新米冒険者が、一ヶ月分の生活費を稼いでやっと新米卒業という事かな?
僕がボンヤリと考えていると、隣からニュッと手が出てきて。
「坊主。いやアベル、今回は世話になったな。これから何か入り用になったら私の店を訪ねるといい。さっきいたのが私の店コンドール商会だ。いいな、必ず訪ねて来いよ!」
そう言って立ち上がると、護衛のおじさんと一緒に帰って行った。
「あ、では僕も帰ります」
帰ろうと立ち上がった僕にギルド長さんから「ご苦労だったな」と声を掛けられたので、「たまたま運が良かっただけですよ」と返す。
「運が良いのも冒険者にとって必要なスキルだ、運が悪いと水路掃除でも亡くなる奴はいる。アベル、お前は運良く水路掃除で指輪を拾い、上手く交渉してギルドの依頼にして自分の功績にした。全てお前の力だ、誇っていいぞ」
そう言って見送ってくれた。ちゃんと評価して貰えるって何だか嬉しい。
ギルド長の部屋を出て、受付の前を通った時にもまた受付で声を掛けられて。今日の水路掃除の報酬、銅貨十枚を受け取る。
「銅貨十枚」
僕の収納には金貨四枚が入っているけれど、新米冒険者の真っ当な報酬だとこれが正当なんだよなとヒシヒシと感じる。
さて、これからお腹を空かせたニヤにお土産を買って帰ろう。今日は干し肉でも買おうかな。




