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不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜   作者: カジキカジキ


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13/60

お金を稼ぐ

「おはようございます。何かお仕事ありませんか?」


 朝から冒険者ギルドへやってきた僕は、お仕事を求めて受付に並んでいた。


 昨日、冒険者登録をしたばかりのペーペーは、外に狩に出る事は許されないと聞いて、では何するの? と受付のお姉さんに聞いている所です。


「アベルさん、おはようございます。Fランクの新人さんには、まずこのお仕事をやって頂きます」


 勘違いしそうなくらい優しい笑顔で渡された紙には「水路の掃除とスライム集め」と書かれていた。


 うん、知ってた。


「やっぱりそれかぁ」


 出てきた町でも水路の掃除は子供たちの定番の仕事だった。十歳を過ぎた子が十三歳の先輩から教わる事でギルドでの仕事の流れ、先輩との交流、お小遣い稼ぎが出来ると言うもの。十三歳の先輩も、ギルドへの実績作りと後輩への指導経験を積む事ができる一石二鳥にも三鳥になる仕事。十歳の子はスライムを扱う事は禁止だけど、十三歳の冒険者登録した子が一緒にいるとスライムを集める手伝いが出来る。


 スライムは唯一(ゆいいつ)人に危害を与えない魔物として大昔から人の手で増やされている。何でも分解する能力を使って下水処理をさせる為だ。普段は下水槽の中に居るのだけれど。ある程度成長すると分裂して分かれる。その時に小さくなって下水槽の網より小さくなったスライムが水路に流れ出てきたりするので、水路掃除で見つけたらついでに集めるのが僕らの仕事になる。


 と言う事で水路掃除を始めたのだけれど……。


「僕ひとり?」


(そうみたいだにゃ)


 どうやら今日は年下の子や、他のFランクの冒険者は居ないか別の場所に行っているみたいだった。


「仕方ない、一人でやるか」


 僕は長靴を履きギルドで借りてきた熊手に網、背負い籠を準備してから水路に入る。水路の水は、掃除し易いように少し減らしてあり僕の足首辺りの深さになっている。


 所々で引っかかっているゴミを熊手で集めて背負い籠に入れる。それを、決められた区間の上流から下流まで歩いて掃除するんだ。


「この辺はあまりゴミは多く無いのかな?」


 以前、町で水路掃除を手伝った時よりゴミが少ない気がして、これなら簡単に終わりそうだと思っていると。隅の方にキラリと光を反射する何かが目に入った。


 ラッキー! 硬貨が落ちてる。そう思ってそれを拾いあげる。


「あっ!」


 それは、金色に輝くリングだった……そして、僕のスキル『わらしべ長者』が発動した。


「え? あっ、ちょっと!」


 今回はスキル発動と同時に強制イベントまで発動して僕の体が勝手に動こうとしたので、慌てて強制イベントを停止。水路から上がると、掃除道具を片付けてからイヅミを呼び出す。


(イヅミ、どうする?)


 僕は水路掃除が終わったように見せかけながら周囲を確認する。この指輪が、今落とされたばかりだったら探している人がいる筈だけど。そんな風に見える人はいない。


(取り敢えず、強制イベントの停止は確かめられたにゃ。掃除が終わっているのなら、先まで行ってみるにゃ)


(そうだね)


 それでは。と強制イベントを再始動させて、僕はスキルに身を任せた。


 何処まで行くんだろう?


 さっきから結構歩いている。向かっている先は街の中心部、このままだと冒険者ギルドまで戻ってしまいそうだと思っていたら。その近くにある大きなお店の前で足が止まった。


「だから探しに行けと言っているだろう!!」


「そんなの無理ですって! ギルドに依頼出して探させて下さい!」


「そんな事したら儂の面子が潰れてしまうだろうが!」


「それでも、もし拾った奴が悪用でもしたらもっと大変な事になりますよ!?」


 うん、どうやらビンゴみたい。そして、とても良い話しも聞こえてしまった。


 二人の会話を黙って聞いていたら、片方の怒鳴っていた男性がこちらに気付いて近寄ってきた。


「おい坊主、そんな所に突っ立っていると邪魔だ! 向こうへ行け!」


 シッシッと野良犬でも追い払うように手を振って退かせようとするけれど、良いのかなあ。


「あのー、何かお探しのようですけれど。良かったらお手伝いしましょうか?」


 探している物は多分僕が持っているんだけれど。馬鹿正直に渡す必要は無いし、まだこの人の物とも限らない。こう言った場合は、あの護衛のようなおじさんが言っていたようにギルドに探し物の依頼を出して貰って、それを僕が受けて、そのまま探してる物を出した方がトラブルも少ないと思うんだよね。


 その証拠に、この指輪がまだ僕の手にくっ付いたままだと言うのが答えだと思う。


「何を言っているんだ坊主? 邪魔だからとっとと向こうへゆけ!」


 真っ赤な顔をしたおじさんが、足を上げて蹴り飛ばそうとしてくる。

 

「良いんですか? 探し物が見つからなくて困っているのはおじさんの方ですよね? それはきっと小さな物で、無くすと信用にも関わるような大切な物じゃないんですか?」


 そう言うと、サッと足を引いて今度は僕に向かって大声で怒鳴ってきた。


「何だ坊主! もしかしてアレを儂から盗んだのはお前か!?」


 今度は盗んだと言ってきたよ。


「盗むなんてとんでもない! おじさんには何時も(いつも)そっちの護衛の人がついているんでしょ? そんなおじさんにスリが出来るなんてよっぽどの手練でしょう? 僕がそんな風に見えますか?」


 今日の格好は、町から出てきた時の冒険者の服で、町での作業だから腰にはナイフしか下げていない。それに、ギルドで借りた掃除道具と背負い籠も背負っているのにスリなんて……ねえ。


「ちょっとまって下さいコンドールさん! ちょっとその子供の話を聞いてみましょう」


 ここで、やっと護衛のおじさんが話に入ってきた。


「おい坊主。その格好と言う事は、お前はFランクの冒険者で、今日は水路掃除をしていた。と言う事で合っているか?」


 このおじさんも元冒険者とかなのかな? 事情通なのは話が早くて助かります。


「そうです。そして、その最中にある物を拾ったのですが、それがそこのおじさんの探している物なのか分かりませんが、良かったら確認されますか?」


 そう言って僕は、その指輪が見えるように手のひらを上に差し出した。


「!?」


 おじさんは、一目で分かったのか手を出そうとして来たので僕も慌てて手を握って引っ込める。


「何を!?」


「渡す前にお願いがあります。ギルドに探し物の依頼を出して貰えませんか」


 それだけ言うと、護衛のおじさんはスッと真面目な顔をして隣の雇い主のおじさんに向き合った。


「コンドールさん、パッと見でしたがこの少年の持っている物で探し物は間違いないと思います。ですが、相手は冒険者ですので、ここはギルドに依頼を出して貰えませんか? そこですぐに依頼を受けて貰って引き渡せば面子も何も問題ない筈です」


「ふん、お前がそこまで言うのなら、そうした方が良いのだろうな」


 てっきり怒り出すのかと思ったら、案外聞き分けの良い人のようだ。そして、スタスタと歩き出すおじさん。少し歩いて後ろを振り返ると。


「何をしているのだ?! さっさと冒険者ギルドへ行くぞ!」


 そう言われて、僕と護衛のおじさんは顔を見合わせて苦笑してから、先を歩くおじさんについて行った。


 ・

 ・

 ・


「冒険者ギルドへようこそ」


 入り口を入ると、すぐに受付から声がかかる。


「あら? コンドールさん。また依頼を出して頂けるのですか?」


 名前を呼ばれたおじさんは、スタスタと受付に近寄ると。


「依頼だ、用紙を出してくれ!」


 言われた受付のお姉さんは、くすりと笑って用紙を出すと、おじさんも奪うように用紙を取って記入を始めた。


「あ、アベル君も水路掃除終わったのかしら?」


 受付のお姉さんは、僕が一緒なのは偶然だと思ったのか水路掃除の仕事の完了手続きをしようとしてくれた所に。


「ほら、書けたぞ。受領してくれ」


 横から、依頼の紙を書き終えたおじさんが割り込んでくる。


 受付のお姉さんはちょっと驚いた顔をしたけれど、僕に「少し待ってね」と断ってから、おじさんの依頼を先に受け付ける。


「え? ある物を探して欲しい依頼ですか? ある物って何ですか?」


 お姉さんの顔は不思議でいっぱいだ。


「それはもう分かっているから、ホラ依頼料だ。これで良いか?」


「そんな、訳も分からない探し物の依頼で報酬だって……え? 報酬が金貨五枚!?」


「大声を出すな馬鹿者が! 正当な報酬だ、儂が出すと言っているのだから問題ないだろう」


「いえ、報酬については依頼の内容と達成の難度によって決まりますので、勝手に決められては困ります。一体何を探せと言うのですか?」


 ギルドのお姉さんも仕事に忠実なのか、おじさんの依頼をしっかり確認しようとする。


「……だ」


「え?」


(商人ギルドの組合員の指輪だ)ボソッ


 耳元でそっと言われた言葉が伝わったのか、受付のお姉さんの顔が真っ青になる。


「すみませんが、ギルド長にも確認してきますので少々お待ち下さい」


「あ、おい! 待てっ!」


 おじさんが止めるより早く、お姉さんは裏へと引っ込んで行った。


「クソッ!」


 周りにいる他の冒険者の人たちが、コッチを見ながらヒソヒソと話をしている。


(ギルド長案件だとよ)(今度のコンドールさんの依頼は美味しいのかもな)(どんな依頼だ?)


 だんだん噂が広がってゆくのを、ハラハラしながら待っているおじさん。


「お待たせ致しました。副ギルド長が呼んでいますので、奥の部屋へどうぞ」


 そう案内されて、おじさんと護衛のおじさん、そして僕が着いて行こうとすると。


「あら? アベル君はこっちで大丈夫よ? 水路掃除の依頼の完了でしょ?」


 そう言って止められそうになったけれど。


「その坊主も同じ要件だ、一緒に入って貰ってくれ」


 と、おじさんがフォローしてくれて。お姉さんは首を捻りながら一緒に中へ案内してくれた。


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