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放送部との遭遇
角を曲がると、放送部のカートが廊下をゆっくり進んでくる。
マイクスタンド、ミキサー、ケーブルの束。キャスターの音がぎぃと響く。
「おつかれさまでーす」
僕が会釈をすると、先頭の女子が「あ、総音研さん」と目を丸くした。
「音、足りてます?」
半分冗談みたいな問いかけ。
「音は、いつでも、足りるようにするの」
彩月の返しは、詩と実務の中間。
どちらにも少し失礼なのに、なぜか絵になる。
「素敵」
放送部の子はそう言って笑った。
ズレは、受け取り手の角度次第で“素敵”に変換される。
僕はそれを横で見ていて、救われるような、取り残されるような、複雑な気持ちになった。
(……やっぱり普通が欲しい)
そう思いながらも、隣を歩く二人といる自分を、嫌いじゃないのがまた悔しい。




