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だから僕は普通に音楽がしたい。  作者: Kei-ichi
第二章 総音研、侵入
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D-50の鈴鳴り


「はい、ここで私のターン!」

 弥生がギグバッグをぽんと床に置く。金具を外す音が妙に小気味いい。

 蓋を開くと、起毛が少し日焼けして、縁は毛羽立っていない。丁寧に扱われた時間。

 取り出したのは、アリアのドレッドノート――D-50。トップのスプルースにきっちり通る年輪。サイド&バックのローズは褐色が深く、三ピースのセンターにハカランダが走る。

 弥生は今月四本目だというそれのチューニングを合わせ、軽くストローク。

 開放EからG→D→Cへ。

 高域の鈴が空中でほどけ、桜の木漏れ日みたいに耳の奥で光る。低域は背中で鳴って、椅子がないのに背もたれが震えた“錯覚”が来る。

「……はい、鈴鳴り」

 弥生が得意げに笑う。

「トップのラッカーが薄め。吹き過ぎてないから鳴き出しが前に出る。で、ハカランダの“らしさ”はここ」

 彼女は親指の角度をほんの少し変え、そっと弾いた。立ち上がりの“縁”だけが硬く、音の上に薄刃の光が一本引かれる。

「今の、分かった?」

「分かる……のが悔しい」

「やった」

 真壁が感心したようにうなる。

「ハカランダの帯域の出方、やっぱ独特だよな。低い芯が残ったまま上にキラが乗る感じ」

 成瀬がPCの前でメモを打つ。

「録るなら、マイクは45度に振ってハイ落ちを避けたい。……あ、いや今は録らないけど」

 八神先輩はケーブルを胸の前で組み、満足げに頷いた。

「ケーブル的にも、ここは短距離・低容量が似合う音だ」

「ケーブルに人格を与えないでください」

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