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だから僕は普通に音楽がしたい。  作者: Kei-ichi
第二章 総音研、侵入
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ケーブルの山から

「……八神先輩?」

 弥生が声をあげる。

 山の頂から黒い髪が出てきて、続いてメガネ、そして人。

「やあ、新入りくん。新人歓迎のサプライズ、成功だね」

 彼は腕いっぱいにケーブル束を抱えたまま、にこりともせずに言った。

「サプライズというより地層からの発掘なんですけど」

 八神陽斗。総音研の先輩。ケーブル科人類最高峰――という肩書きが冗談にならないくらい、ケーブルで生きている人。

「ほこり、吸った?」と僕。

「吸ってない。吸わせない。巻けば舞わない」

「名言っぽいけど現場の知恵だ」

 八神先輩は僕のギターケースに視線を落とす。

「そのケースの角、擦れてるね。よく歩いた跡。……ここに居場所ができるタイプの音だと思う」

「音の居心地をケースで診断しないでください」

 ケーブル山の影から、もうひとり。

 すらりと背の高い男子が、ストラトのネックを抱きかかえて顔を出す。

「新顔? 真壁。ギター。エフェクターは沼。よろしく」

 真壁亮。穏やかな声に反して、足元のボードは明らかに過積載。

「沼って自称する人はだいたい底が見えてないやつだよ」

「底が見えたら沼じゃない。だから大丈夫」

「何が大丈夫なんだ」

 そして机の角。ノートPCの前から、ひょいと手が上がる。

「成瀬。DTM。生音は好き。打ち込みも好き。仲良くしてください」

 成瀬律。薄い笑顔、指先の動きが落ち着いている。画面にはDAW。タイムラインに色とりどりのブロック。

「人数、けっこういるんだな」

 僕がつぶやくと、弥生が指折り数えた。

「私たち三人に、八神先輩、真壁、成瀬それに顧問の神前先生……で、あと数人たまーにしか顔ださない部員もいるけど、いつも通り、今日は来てない」

「けっこう、いるんだな(二回目)」

「安心して、濃度が問題なだけで、人数は普通」


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