表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だから僕は普通に音楽がしたい。  作者: Kei-ichi
第二章 総音研、侵入
13/26

丸い鍋、ではない

 彩月は指を軽く湿らせ、縁をとん、と弾いた。

 ぽうん。

 空気が一瞬だけ広がり、その音のために席を空けて座る。倍音の揺れは、ふくらはぎから背中へ、見えない波が撫でるみたいに移動した。

「はい、まず注意。これは、鍋ではありません」

 彩月が指を一本立てる。

「分かってる、ガンクだろ」

 僕が言うより早く、弥生がうんうんと頷く。

「学校にあるのはガンク。新宿で彩月さんが叩いてたのはスチールパン。親戚筋だけど作りも鳴りも別物」

「正解。弥生ちゃんには飴をあげたい」

「僕には?」

「飴の在庫は有限」

「資源がシビア」

 彩月はガンクの面を手のひらで撫で、指の腹で浅く叩く。

 ぱん、と鳴らす直前に押さえ、立ち上がりを丸く包んでから放つ。ガラス杯の縁に落ちる一滴みたいな柔らかいきしみが乗る。

「ここは“鈴”。ここは“鐘”。ここは“水”。……概念に共犯して」

「概念に共犯は怖いな」

「でも、今の“水”は分かったでしょ?」

 悔しいけれど、頷く。

「分かるのが悔しいの、いい反応」

 そのとき。ドア脇のスチール棚の陰で、小さな咳払いがした。

 振り向くと、ケーブルの山――本当に“山”――が、もぞり、と動いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ