表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

撃墜計画

1944年・俺14歳・東京

「……これは、間に合うかもしれない」


俺は、紙の上に描いた空の地図を見つめながら、そう呟いた。

敵の通信傍受、航路予測、迎撃機の性能。

すべての条件が、ギリギリで噛み合い始めていた。


この作戦の目的はただ一つ。

――エノラ・ゲイを撃墜すること。

原爆を積んで広島へ向かうB-29を、空の上で止める。


「坂上少尉、迎撃機の選定は?」

軍の技術班が、俺の顔を覗き込む。

俺は、図面を指差した。


「改良型震電。未来技術を応用した高高度対応型です」

「震電……あの後ろ向きのプロペラ機か?」

「ええ。空力特性を調整すれば、B-29の高度にも届きます」


俺は、未来の航空力学をベースに、震電の設計を再構築した。

エンジン出力、機体強度、酸素供給装置。

この時代の技術では限界もあるが、俺の知識がそれを補う。


「問題は、パイロットだな」

「ええ。特殊訓練を施した部隊を編成します。選抜は、俺がやります」


俺は、訓練場に足を運んだ。

そこには、若い兵士たちが並んでいた。

彼らの目は、まだ戦争の意味を知らない光を宿していた。


「お前たちに任せるのは、ただの迎撃じゃない」

「空の向こうにある未来を、守るための戦いだ」


俺の言葉に、兵士たちは戸惑いながらも頷いた。

彼らは命令に従う兵士であると同時に、未来を託す同志でもある。

俺は、彼らに未来の戦術を教えた。

高高度飛行の呼吸法、通信妨害のタイミング、編隊の組み方。


「坂上少尉、あんた……本当に14歳か?」

「さあ、どうでしょう。俺もよくわかりません」


軽口を叩きながら、俺は彼らの訓練を見守った。

この時代の空は、重い。

でも、俺たちの機体は、その重さを突き抜ける。


夜、俺は作戦室に戻った。

地図の上に、サイパン島から飛び立つB-29の航路を描く。

その先にあるのは、広島。

そして、その途中に、俺たちの迎撃ポイント。


「茜……お前なら、どう言う?」


彼女の声が、記憶の中で響く。

「暴力じゃなくて、思想で世界を変えるの」

でも、今だけは、力が必要だ。

この一撃が、未来を守るための思想になる。


俺は、作戦書に最後の一文を書き加えた。


“この作戦は、未来を守るための思想的行動である。”


それは、俺の中で茜と交わした誓いの延長だった。

思想は、言葉だけじゃない。

時には、行動として形にしなければならない。


「よし。やるぞ」


俺は、空を見上げた。

その向こうに、未来がある。

そして、俺たちの手で、それを守る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ