チェスターは、ソフィアを連れてお茶会に行く。
俺が何時もの様に部屋でだらけていると、マーガレットがやって来た。
「チェスター様!エリーゼ様とのお茶会の日程が決まりました!」
「また、今回のお茶会には、ハルベルト殿下も参加されると連絡が入っております。今回のお茶会の場所は、北の宮殿で御座います」
「ああ、分かった。マーガレット、良くやった!」
俺の返事を聞いたマーガレットが退出する。
俺が南半球に建設する宇宙港をハルベルト兄上に譲渡すると伝えさせた。
その代わりに、兄上の婚約者エリーゼが、俺の婚約者のソフィアと仲良くする様にして欲しいと、兄上に伝えさせた。
早速、兄上がエリーゼに話を通してくれたみたいだ。
俺はエリーゼに会った事は無い。
兄上もソフィアに会った事が無い。
当然、エリーゼとソフィアも会った事が無い。
そもそもソフィアは、領地から出た事が無い。
公爵令嬢同士でも“初めまして”だ。
だから、俺と兄上が一緒に参加して、互いの婚約者を紹介するのだ。
エリーゼは、何年も前から首都星に来ている。
皇宮で行儀見習いを終えた後も、首都星のボーデン公爵家の屋敷に残り、貴族令嬢を招いては、お茶会を開催しているそうだ。
第2皇子の婚約者だから、派閥の貴族令嬢をお茶会に招いては、情報収集をしたり、兄上には直接言い難い話を聞き、兄上に根回しをしているんだろう。
会場は、北の宮殿か…
東の宮殿にはハルベルト兄上が住み、南の宮殿にはゲルハルトとアドルフが住んでいる。
そして俺は西の宮殿だ。
現在、北の宮殿には誰も住んでいない。
でも、帝国は使用人をクビにする事は無い。
イメージが悪くなるからだ。
帝国が財政難であっても、そこは変わらない。
貴族社会は見栄の世界だ。
誰も人が住んで居なくても、今まで通り人を雇い続ける。
だから、宮殿の中は常に掃除されピカピカだ。
庭も同様。
専属の庭師が手入れをしている。
前世で俺が勤めていた会社なら、人員の配置転換をして、使わない施設を閉鎖しているところだ。
巨大な帝国だから、みんな危機感が薄いのかも知れない…
いや、待てよ…
この帝国は、学校で歴史の授業で学んだ、室町幕府に何となく似ている気がする。
幕府には、直轄地が殆んど無く、あるのは権威だけだ。
だから、権威が無くなると大名達が好き勝手を始めて、戦国時代に突入した。
この帝国も同様。
帝国の直轄地は、この首都星のみ。
皇帝の権威が失墜すると、各地で貴族達が好き勝手を始めて、やがて戦国時代か?
不味いな…
財政難から脱却し、他を圧倒する位の経済力が必要だ。
ハルベルト兄上に皇帝の座を押し付けて、俺は公爵になり、早く後継者に当主を譲って、毎日だらけて暮らすと言う、俺の目標が達せられなくなってしまう…
何とかしなくては…
★★★★★
ソフィアを伴い、西の宮殿を出た俺は北の宮殿に向かう。
今回の俺とソフィアは、招待される側だ。
だから北の宮殿に到着すると、兄上と婚約者のエリーゼがお出迎えしてくれる。
兄上がエリーゼを紹介し、そして俺がソフィアを紹介する。
こうして、お茶会が始まった。
年長のエリーゼが積極的に話し掛け、会話をリードしてくれる。
初めは緊張気味だったソフィアも、段々打ち解けてきた様で良かった。
出されるお茶も「惑星○○産の茶葉で御座います」とか
「ケーキの小麦は惑星○○産。クリームは惑星○○産で…」とか説明された。
前世で、小市民だった俺からすると、こんな贅沢をして良いのだろうか?と、納税者に申し訳なく思ってしまう。
なかなか庶民感覚が抜けず、皇子としてどうなんだ?
そんな事を考えていると、ハルベルト兄上が話し始める。
「チェスター。私に何か?頼み事があるんだろう?そうでなければ、宇宙港を直接、帝国に譲渡すれば良い話だ。わざわざ、1度私に譲渡し、私が皇帝に即位したら、そのまま帝国の所有にして欲しいなんて言うハズは無いからね~」
「流石は!兄上です!」
「ああ、最初に言っておくが、私にも出来る事と、出来ない事があるからね」
「はい!兄上。承知しております。ですが、この話は、兄上以外に出来る人はおりません!」
「…まあ良い。取り敢えず、話だけは聞こうか…」
流石!兄上だ。
おれの意図をちゃんと察していて、大助かりだ。




