嫌がらせ。
時間は少し遡る。
チェスターが宰相との打ち合わせを終え、宰相執務室を出て廊下を進んでいると、数人の貴族達に行く手を阻まれた。
「何者だ!不敬であるぞ!」
護衛騎士のヘルマンが怒鳴る。
「失礼致します。チェスター殿下。私達はアドルフ殿下の使いの者で御座います」
「アドルフ殿下が、チェスター殿下に婚約祝いを用意しており、お渡ししたいとの事」
「同道願います」
こいつら、俺に道を空ける気は無い様だ。
アドルフから連れてこい!って言われているのだろう。
バイオレットが念話で「殺りますか?証拠を残さず処分可能ですが?」とか言ってくる。
「殺らねえよ!」
俺は答える。
普通の人間にしか見えないから、こいつらが悪魔だって事を忘れてた。
アドルフからか…どうせろくな話じゃ無いだろう。
でも断っても、しっこく言って来るだろから、早く終わらせるに限る。
嫌な事は早く終わらせる方が良い。
会社員時代にも嫌な事、悪い事ほど早く報告しなさい!って、上司から言われていたし…
早く報告されれば、早く処理出来る。
だから、早い方が良いと…
仕方なく、俺はアドルフのところに行く事にした。
★★★★★
皇宮内の応接室の中に入ると、正面の席にアドルフとゲルハルトが座っていた。
ゲルハルトまで居るじゃん!
《マスターが皇宮に参内すると聞き、2人で意気投合して待ち伏せしていたものと推察します》
2人ともニヤニヤしている。
想像通り、ろくでも無い話みたいだ。
同席する派閥の貴族達も、同様にニヤニヤ笑っている者が大半だった。
でも、ほんの数名、俺を心配する様な目で見ている者がいた。
俺は念話で執事のクレストンに指示を出す。
「クレストン。俺を心配そうに見ている貴族が居るな!何処の誰だか調べて報告しろ!」
「承知しました」クレストンが答えた。
アドルフのところにも、何人かはまともな人間が居る様だ。
それとも、ゲルハルトの派閥貴族か?
一応チェックしておこう。
「ゲルハルト兄上。アドルフ兄上。お呼びと聞きし参上致しました」
「おお、チェスター!可愛い弟の婚約が決まったと聞き、婚約祝いを贈ろうと思ってな~」
ニヤニヤしながら言う。
「お前が首都星に土地を購入したと聞いた。だから俺からも、お前の為に首都星に土地を用意した。受け取ってくれるな?」
アドルフがタブレットを操作する。
すると俺のタブレットにデータが送られて来た。
「どうだ?チェスター?お前にピッタリの土地だろう。早く受け取れ!」
アドルフがニヤニヤしながらそう言う。
アドルフ派の貴族達も、相変わらずニヤニヤしている。
長引かせない方が得策か…
何時までもアドルフに付き合っていられないし…
「兄上!お気遣い感謝致します」
そう言って、タブレットをタップし電子署名をする。
土地の権利証に署名をしたのを確認したアドルフが、満足げにニヤつく。
本当に嫌な奴だな!
「私からもチェスターに婚約祝いだ!受け取れ!」
今度はゲルハルトが言う。
もう…アドルフだけで、お腹いっぱいなんだが…
何処かの惑星みたいだった。
俺は黙ってタブレットを操作し、電子署名をした。
「ゲルハルト兄上。有り難く頂戴致します」
俺がゲルハルトにお礼を言うと「話は終わりだ!もう下がって良いぞ!」
ニヤニヤしながらそう言う。
ゲルハルトとアドルフは、自分の思い通りに話が進み、ご機嫌の様だった。
「では、失礼致します」
そう言って部屋を出ようとしたら、頭の中に機械的な声が響く。
《スキル・災い転じて福となすが発動しました!》
えっ!何だ?
俺は部屋を出て廊下を移動する。
なあ、ガブさん。
さっきのあれって何だ?
《はい。マスター。マスターが所持しているスキルです》
そんなスキル持ってたっけ?
《はい。この世界に転生する時、マスターが選び取得したスキルです》
ああ…そう言えば、そうだった。
随分、前だったから忘れてたよ~
でも、まあ…福をもたらしてくれるなんて、最高じゃないか?
ふふふ。
「チェスター様。あの愚か者を殺らなくて良いのですか?」
再びバイオレットが聞いてくる。
ゲルハルトとアドルフのお陰で、これから福が舞い込んで来るんだ!
だから、そんな必要は無い!
「相手にするなよ!彼奴は放置だ!」
そんな事より、どんな福を得られるのかな?
今から楽しみで仕方ない!
さて…屋敷に戻って、婚約祝いに貰った物を確認するか。




