死の商人、ミザリー商会②
海賊の船長が「先日襲った貨物船から大量の小麦を手に入れた。俺達だけじゃ食いきれねぇ。だから高値で引き取ってくれないか?」
ミザリーは考える。
小麦なら足が付く事も無いだろう。
それに帝国首都星は、慢性的に食料が不足気味だ。
だからすぐに買い手が付くだろう。
「良いよ!手数料は30%だ!それで良いね!」
「おいおい、ミザリー。俺達の仲じゃないか、それは無いだろう…」
「仕方ないね…じゃあ手数料は27%にまけてやる。長い付き合いだからね~これ以上は負からないよ!」
「ああ、分かった。それで頼む」
ミザリーはコンテナに入った小麦をすべてチェックする。
そして部下に「この小麦を全部積んどきな!良いね!」
「はい。会長!」
そしてミザリーと海賊の船長は、別室に場所を移す。
この場所には、指輪やネックレス等がテーブルの上に並んでいた。
海賊が旅客船を襲撃する。
そして海賊達が旅客船に乗り込み、金目の物を略奪する。
船の中を家捜しして金品を奪う。
その中には当然、女性達が身に付ける指輪やネックレスも含まれる。
そして船からの救難信号を受信した、帝国軍宇宙艦隊が到着する前に、その場から撤収する。
帝国軍艦隊に取り囲まれ、逃げ道が無くなる前に逃げるのである。
ミザリーは鑑定スキルを持っている。
1つづつ鑑定し、紙に金額をメモする。
そしてその合計金額が書かれたメモを船長に渡す。
「これじゃ安すぎる!もう少し高値で引き取ってくれ!」
「この金額で目一杯だよ!」
こうして2人の間で価格交渉が始まる。
暫くして、やっと合意に達した様だ。
「何か必要な物はあるかい?」ミザリーが聞く。
海賊船の船長は「肉が欲しい。本物の肉だ。それと下っ端に食わせる合成肉もな」
「後は酒だ!上等なやつを頼む。それと燃料だ」
「分かったよ。それじゃあ、代金は相殺するよ。残りの代金は帝国通貨で支払だ」
ミザリーは空間魔法を展開し、中から帝国通貨を取り出した。
「ミザリー。すまねえが、代金の一部は商国通貨で頼む」
「商国通貨だね。分かったよ」
そう言って、ミザリーは帝国通貨と商国通貨を海賊の船長に渡した。
海賊との取引は物々交換か現金取引だ。
海賊達はお尋ね者だ。
しかも住所不定である。
従って銀行口座を開設する事が出来ない。
だからタブレットを使った電子決済が出来ないのである。
海賊達は人質を取る事も無い。
身代金の受け取り場所を帝国軍からマークされる。
そして追跡され、もし、基地が発見された場合は、基地を包囲し、陸戦隊が乗り込んで来る。
それに人質に食料を提供しなくてはならない。
ここは広大な宇宙である。
食料調達も難儀する。
従って海賊達は人質を取り、身代金を要求する事は、まず無いのである。
ミザリーが振り返る。
「ああ、伝え忘れるところだったよ。マリーニ男爵家関連の船を襲って欲しいそうだ」
ミザリーは船長に伝える。
「まあ、約束は出来ないが、考えておくよ!」
船長はそう答えた。
船長からすると、貴族の派閥争いなんて全く興味が無い。
しかし、ミザリーを怒らせ取引に来てくれないと、自分が干上がってしまう。
だからミザリーの機嫌を損ねない様、曖昧な返事を返した。
それに襲う相手の情報収集も必要である。
だから、迂闊に返事は出来ない。
「じゃあ、頼んだよ!」
ミザリーは船長にプレッシャーを掛けると部屋を出て行った。
海賊基地から出たミザリーは、小麦を積んだ船の船長に指示を出す。
「今から首都星に行って、小麦を売却して来な。すぐに買い手が付くだろうから、売却したら戻って来るんだ。良いね!」
「はい。会長!承知しました」
残りの船を引き連れて、ミザリーは宇宙を進む。
旧帝国領がある銀河と、現帝国領のある銀河との間は、広大な宇宙空間が広がっている。
そして、沢山の小惑星が存在する。
ミザリーは、そんな小惑星の1つに秘密基地を有していた。
海賊の基地は、帝国軍に見付かった時、速やかに放棄し、海賊達は一目散に逃げる。
だから海賊達は基地に投資をしない。
しかしミザリーは違う。
ここは何処の国にも属していない場所だ。
だからミザリーは、この基地に莫大な投資をしてきた。
強固な防衛設備と、強力な攻撃力を備えた、正に準要塞並みの基地だった。
ミザリー率いる船団が基地の近くに到着する。
ミザリーは基地と通信を繋いだ。
対応したのは女性だった。
「ミザリーお姉ちゃん、お帰り!」
ミザリー率いる船団は基地内にある、宇宙船ドッグに入港した。




