死の商人、ミザリー商会①
帝国領内を輸送船団が航行している。
だが、普通の輸送船団とは様子が違った。
輸送船を海賊から護衛する、傭兵団の宇宙船が1隻も随伴していなかった。
この船団の主はミザリー。
惑星間商人達は、彼女の事を死の商人ミザリーと呼ぶ。
理由は簡単だ。
彼女は海賊御用達の商人だからだ。
ミザリーが取り扱う商品は、食料品から燃料、武器に至るまで幅広い。
海賊達が必要な商品なら、何でも取り揃えていた。
海賊は商船を襲い、物資を強奪する。
しかし強奪した物資を、現金や自分達が必要な物資と交換しなければ、彼等も生活が出来ない。
ミザリーが海賊達に食料や燃料。
必要な武器などを供給していた。
つまり、ミザリーがいなければ、海賊達は干上がってしまうのだ。
従って、彼女が率いる船団が、海賊から襲われる事は無い。
「会長。後5日程で帝国首都星に到着予定です」
それを聞いたミザリーは「ここから先は、この船1隻だけで進むよ。残りの船は、この場で待機だ」そう指示を出した。
ミザリーを乗せた輸送船は首都星に向かって進む。
首都星の宇宙港は、今日も大渋滞だ。
入港するのに、3ヵ月待ちはざらである。
それらの順番待ちをしている船など眼中に無い様子で、行列を無視して船は進む。
順番待ちをしている輸送船の乗組員が「船長!また横入りですよー!」と文句を言う。
「どこぞのご貴族様の御用商人だろうよ!」
船長からすれば、何時の事である。
さほど気にしていない様だった。
ミザリーが乗る船の船員が、管制塔とやり取りを始める。
「こちらは、第3皇子アドルフ殿下御用達商人ミザリー商会。殿下からの指示で参内する。至急、入港願う」
「…承知した、最優先で入港させる。暫くその場で待機してくれ!」
程なくして、ミザリーが乗る宇宙船は、首都星の宇宙港に停泊した。
★★★★★
ミザリーは、首都星にある最高級ホテルで、1人の男と食事中である。
他には誰もいない。
男の名前はアンソニー。
第1・第3皇子を産んだ第2王妃キャサリンの実家の侯爵家の依子貴族出身である。
彼は幼き時より、アドルフに仕えた幼馴染みであり、アドルフが最も信頼する側近であった。
「さるお方からの伝言だ。マリーニ男爵家に関連する商船を襲わせろ!」以上だ。
何処で誰が聞いているか分からない。
だから彼は、さるお方と言う。
決してアドルフの名前を出す事は無い。
「そう伝えるよ!」ミザリーは答える。
彼女は伝えるだけ、商船を襲うのは宇宙海賊達である。
そして、ミザリーは無言でテーブルの脇を指差す。
「これは今回の航海のお土産だ。持って帰りな!」
アンソニーは無言で頷く。
食事が終わり、アンソニーは部屋の外で待つ部下に指示をする。
ミザリーからのお土産を指差し「あれを車に載せろ」
そう言って彼は、部屋を出て行った。
マリーニ男爵は、アドルフの派閥に参加する貴族だった。
しかし彼は、アドルフを見限り、中立派に鞍替えした。
それを知ったアドルフは激怒した。
そして、マリーニを潰す為、過激な方法を取ろうとした。
アドルフの派閥は弱小派閥だ。
まともに中立派とやり合うのは分が悪い。
そこでアンソニーがアドルフを説得。
そして海賊の襲撃に見せ掛けて、マリーニ男爵家に打撃を与える事に方針転換したのだ。
さるお方宛にお土産を渡し終わったミザリーは、首都星を出航する。
ミザリーを乗せた船は広大な宇宙を進んだ。
自身が所有する船団と合流する。
そして、マリーニ男爵領の方角へ船は進んで行った。
★★★★★
広大な宇宙をミザリーの船団が進む。
「会長!海賊船が接近中です!」
「何処の海賊だ?」
「はい!グレーバー海賊団です!」
ミザリーの船団をグレーバー海賊団の海賊船が取り囲む。
海賊船から通信が入る「こちらグレーバー海賊団だ!停船しろ!」
ミザリーが対処する。
「こちらは、ミザリーだ!久しぶりだね、グレーバー」
「何だ!ミザリーか…」
「随分な言い方じゃないか?文句があるなら、このまま帰っても良いんだよ!」
「連れない言をうなよ、ミザリー。長い付き合いじゃないか。売りたい物もある。基地へ寄ってくれ!」
「そうかい。仕方ないね~。それじゃあ久しぶりに寄って行くかね~」
宇宙に無数に存在する小惑星。
グレーバー海賊団の基地は、巨大な小惑星である。
小惑星の中をくり貫き作られている。
外からはただの小惑星にしか見えない。
隕石の一部が開き、船が中に入って行く。
さあ、商売の時間だ!
ミザリーは気合いを入れた。




