ボーデン公爵家①
私はボーデン家の4男として産まれた。
我がボーデン家は、帝国の名門貴族家だ。
新帝国建国の英雄、ジークフリート10世陛下の孫が、時の皇帝ジークフリート11世陛下から公爵位を賜り興した家だ。
我が家の歴代当主は、鉱山開発を初め、様々な事業を展開して成功を収めた。
今や帝国でも有数の資産を有するに至った。
貴族家の子供は皆ライバルだ。
男兄弟は、次期当主の座を得る為にしのぎを削る。
私も3人の兄達との争いに勝利し、当主の座を獲たのだ。
女も同様。
少しでも良い家に嫁ぐ為、姉妹同士で競い合う。
上位貴族の家の数は限られる。
つまり、嫁ぎ先の数も限られると言う事だ。
上位貴族家の娘は、下級貴族家を馬鹿にする。
プライドが高く、下級貴族家に嫁に行くのを嫌がる。
従って嫁ぎ先が決まらない娘は、プライドを捨て下級貴族家に嫁ぐか、帝国軍に入隊するか、役人になるか、又は領地の修道院に入るかだ。
私は、前当主から受け継いだ莫大な資産を使って、帝国財務省長官に登り詰めた。
宮殿で財務省長官としての仕事を終えた私は、首都星の屋敷に戻り、公爵としての仕事を行う。
領地から、様々な資料が送られて来る。
私はそれらの資料に目を通し、決済して行く。
それが終わると、今度は経営している商会の資料だ。
我がボーデン家は、様々な事業を展開している。
また、それ以外にも、目ぼしい事業があれば、その事業に投資する。
最近は、首都星の景気が悪い。
経営する商会の利益が減少に転じている。
個人消費が伸びず、庶民は節約傾向の様だ。
利益が増えないのであれば、経費を削らなければ、利益を増やす事が出来ない。
先日も、24時間営業の小型スーパーの従業員を全員首にした。
代わりに人件費の掛からないアンドロイド店員に置き換えた。
商品の補充もロボットが行う。
大型スーパーの商品補充の仕事も、人間の従業員を全員首にして、ロボットに置き換え済みだ。
店舗の運営も、1店舗に数人だけ残していた従業員を全員首にして、アンドロイドに置き換えるか?
人件費が削れるからな…
アンドロイドやロボットは、初期費用は掛かるが、給料を払う必要が無い。
それに休憩もいらず、24時間働き続ける。
帝国首都星には、数千億人が暮らしている。
豊かな首都星を目指して、不法移民が押し寄せてくる。
その不法移民達が子孫を残す。
首都星の市民権の無い者から産まれた子供達も、当然市民権を有していない。
その結果、帝国すら正確な住民数を掌握出来ていない。
帝国が掌握しているのは、市民権を持つ住民の数だけだ。
数千億人と推定される住民を食わせる為には、膨大な食料が必要だ。
だから私は、スーパー事業に参入したのだ。
人は食事をしなければ生きて行けない。
食品事業は、人がいる限り無くならない事業だ。
私は経営者として、利益を上げる為に、スーパーの従業員を全員首にして、アンドロイドに入れ替える決断をした。
帝国首都星は、最大の市場だ。
だから当然、競争も激しい。
生き残りを掛けた経済戦争だ。
決して敗けられない。
人件費をカットし、浮いた経費で売価を少し下げるか…
他の商会から消費者を奪いとる。
私は、食品部門以外のアパレルや家電品を売る商会も、従業員を総て首にし、アンドロイド店員に置き換える事にした。
しかし最近は、治安が悪くなる一方だ。
警備用のロボットも増やすか…
一次的な出費だが仕方無い。
「旦那様。ヨハン様が面会を求めておりますが、如何致しますか?」
先代から我が家に遣える執事が言う。
次男のヨハンが、私に話したい事がある様だ。
「良い。通せ!」
ヨハンが入室して来た。
「父上。お時間を頂きありがとう御座います!」
「前置きは良い。要件を話せ」
「はい。父上。アドルフ殿下の元に忍ばせていたラーマン子爵から連絡が入りました!」
「そのご報告に伺った次第です」
「それで?私に報告とは何だ?」
「はい、父上。アドルフ殿下を焚き付け、首都星のスラム街の土地を買わせる事に成功したのです!」
「それだけでは分からん。もっと分かり易く話せ」
「チェスター殿下の婚約祝いに、スラム街の土地を買わせ、チェスター殿下に贈らせる」
「これにより、アドルフ殿下とチェスター殿下の関係は悪化するでしよう」
「それに、誰も買い手の無いスラムの土地が売れ、厳しい帝国財政の中、父上の成果として計上出来るかと…」
「ほう…そうか、計画通りに進展したか…ヨハン。最後まで気を抜くなよ」
「はい、父上。心得ております」
「報告は聞いた。下がって良い」
「はい、父上。失礼いたします!」
ヨハンが退出した。
さて…我が子のお手並み拝見だ。




