ゲルハルトはランスベルク伯爵の提案にのる。
「チェスター殿下とワグナー公爵家ソフィア嬢との婚約の話を耳にしました」
「このまま黙っていては、ゲルハルト殿下の面目丸潰れです!」
「それに殿下の派閥貴族達からも不安の声が上がり、派閥から離脱する貴族が出るかも知れません」
「そうなっては、殿下の求心力が下がり、他の派閥から切り崩されてしまう恐れもあります」
「ランスベルク伯。言われなくても分かっている」
「だから1人で思案していたのだ」
「なるぼど…対応の早さ、流石で御座います!」
「実は、私から提案したい事があり伺った次第」
「殿下には、是非ともご思案願いたく思います」
「ほう…伯が、そうまで言うのだ…」
「良いだろう。話してみるが良い」
「はい殿下。感謝致します」
「殿下は、ホフマン男爵家を覚えておいでですか?皇帝陛下から預かった領地すら治められず、取り潰しになった愚かな男爵家です」
「ああ。覚えている。ワグナー公爵家の寄子の男爵家だった家だろう。その家のせいで、ワグナー公爵家の信用が下がったからな」
「はい殿下。ホフマン男爵は領民の反乱を抑え切れず、帝国軍の宇宙艦隊が領民ごと惑星を焼き払いました」
「現在は、帝国の直轄地となっております」
「それがどうした?」
「はい殿下。現在、帝国の直轄地となっている旧ホフマン男爵家の領地を殿下が購入なさっては、如何でしよう?」
「なに?そんな領地を購入して、どうするのだ?」
「チェスター殿下の婚約祝いとして贈るのです!」
「ワグナー公爵の寄子貴族の領地だった場所です」
「そのせいでワグナー公爵家の信用が下がりました」
「そこをチェスター殿下に贈るのです。洒落が効いていると思われませんか?」
「それに、あの惑星を再生するには、膨大な時間と莫大な費用が必要です」
「チェスター殿下の派閥から、資金力を削ぐ事が出来ます」
「それに惑星再生が上手く行かなければ、攻撃材料として使う事も出来ます」
「如何でしよう?」
「ほう…伯は、なかなか知恵が廻る」
「良い考えではないか!!」
「至急、派閥貴族達に資金集めの指示を出そう!」
「ランスベルク伯。そちは知恵が廻るな!」
「これからも、期待しているぞ!」
「大儀であった。下がって良い」
ランスベルク伯爵は部屋を退出した。
そして廊下を歩く。
その表情がニヤけていた事を誰も知らない。
ランスベルク伯爵は、ゲルハルトが住む南の宮殿を出て、車に乗り込む。
車がゆっくりと動き出した。
ランスベルク伯爵は車の中から電話をする。
電話の相手はボーデン公爵家嫡男ハンスだった。
「ゲルハルトをこちらの思惑通りに、誘導する事に成功しました!」
「ボーデン公爵殿下にお伝え下さい」
「ああ、分かっている」
「ランスベルク伯の手柄は、計画を立案した私の成果でもある」
「きっと父上もお喜びになるだろう」
「よろしくお願い致します。では、失礼致します」
電話を切ったランスベルクは、車の中でご機嫌で鼻歌を歌った。
ランスベルクは、ボーデンのスパイである。
多額の報酬と、ハルベルトが皇帝に即位した場合、高いポストを得る事を条件に、ゲルハルト派を裏切った。
その事をゲルハルトは知らない。
「私の存在をゲルハルト殿下にアピールする事も出来た」
「ゲルハルト殿下とハルベルト殿下。どちらが皇帝になっても、我が家は安泰だ!」
ランスベルクはご機嫌だった。




