第1皇子ゲルハルト。
俺はゲルハルト。
第1皇子だ。
俺が産まれた時は、第3皇子だったらしい。
しかし兄2人が死に、俺が第1皇子に繰り上がった。
きっと死んだ兄達は、運が無かったのだろう。
運も実力のうちだと言う。
いま、私はワグナー公爵家からの返事を待っているところだ。
第1皇子であるこの俺が、ワグナー公爵家のソフィア嬢との婚約を打診した。
第4皇子のチェスターと婚約の噂を耳にしたが、ワグナー公爵家は寄子男爵家の件で信用を落とした。
第1皇子の俺とソフィアの婚約が決まれば、ワグナー公爵家の信用が上がる。
第1皇子と第4皇子では、第1皇子の俺を選ぶに違いない。
第1皇子の方が格上なのは、誰の目にも彰かだ。
だからきっと、俺との婚約話に飛び付いてくるだろう。
生意気な事に、第2皇子のハルベルトは既に婚約者がいる。
第1皇子の俺より先に婚約者を決めるなど、不敬ではないのか?
そんな事も分からない愚か者に違いない。
ハルベルトの派閥は、門閥貴族が多い。
きっと門閥貴族達に良い様に使われて、傀儡にされているのだろう。
愚かな奴だ。
しかもハルベルトの婚約者は、ボーデン公爵家令嬢だ。
ボーデン公爵家は、帝国有数の資産家で有名だ。
ハルベルトがボーデン家令嬢と婚約したせいで、年頃の公爵家令嬢は、ワグナー家のソフィアしか居なくなった。
第2皇子のハルベルトが公爵家令嬢と婚約した。
俺も公爵家令嬢と婚約しないと立場が無い。
まあ、婚約が決まったら、多少はワグナー公爵家に便宜を図ってやるか。
しかしハルベルトは邪魔だ!
俺が皇帝に即位したら、じわじわと追い詰めてやるか。
今から楽しみで仕方無い!
俺が頭の中で、ハルベルトを虐める方法を教えていると、側近のエミールがやって来た。
「ゲルハルト殿下。大変です!」
俺が、どうやってハルベルトを虐めてやろうか?
楽しく考えているのに、空気の読めない奴だ!
こいつは母上が選んだ従者だから、勝手に首に出来ない。
俺は仕方無く、エミールの話を聞く事にした。
「騒がしぞ!エミール!」
「失礼致しました。緊急にお伝えするべきと判断し、まかり越しました!」
「それで何があったのだ?」
「はい殿下。チェスター殿下とワグナー公爵家令嬢ソフィア様との婚約が決まりました」
「…ふざけるな!何でそうなる?」
「いったい、何が起こったのだ!」
「以前から噂がありましたが、事の経緯は不明です」
「チェスターを呼べ!婚約を辞退させる!」
「殿下。恐れながら…それは無理で御座います」
「なに!何故だ!」
「既に宰相殿下を通じて、皇帝陛下に打診され、皇帝陛下の承認を得ているそうです」
「ふざけるな!」
俺を馬鹿にしやがって!
「エミール。下がれ!」
「暫くの間、誰も入れるな!」
「俺を1人にさせろ!」
俺がそう言うとエミールが退出する。
くそー!
ふざけやがって!
俺の面目丸潰れではないか!
何か良い手立ては無いものか?
暗殺者を送り込んでチェスターを始末するか?
それともチェスター派閥の貴族を抱き込み、不正を働かせて、チェスターごと葬るか?
それでは時間が掛かるか…
いっそのことチェスターの不正をでっち上げて信用を落とすか?
俺が思案していると、エミールがやって来る。
「エミール!暫く1人にしろと言ったでは無いか!」
「それが…ランスベルク伯爵が面会を求めております!」
「暫くの間は、面会出来ないとお伝えしたのですが…」
伯爵から言われ、断われなかったのか?
だから下級貴族出身は嫌なのだ!
ランスベルク伯爵か…追い返す訳には行かない。
俺の派閥の上位貴族だ。
仕方無い。
「エミール。伯爵を呼べ」
「面会する」
「承知致しました!」
エミールが下がると、代わって伯爵が入室する。
「お時間を頂きありがとう御座います」
伯爵が頭を下げる。
「気にする必要は無い。それで何用だ?」
「はい殿下。殿下にご提案があり伺った次第です」




