第3皇子アドルフ。
「アドルフ殿下!大変です!」
「何事だ!騒がしい!」
「チェスター殿下の婚約が決まりました!」
「なに?この第3皇子の俺より先に、婚約者を決めたのか?」
「兄より先に婚約するなど、ふざけやがって!」
「生意気なやつだ!」
「それで、相手は誰だ?」
「どうせ、何処かの伯爵家の令嬢だろう」
「あいつの母親も伯爵家の出身」
「あいつの取り巻きも、伯爵家ばかりだからな!」
「それで、相手は誰だ?」
「そっ…それが…」
「何だ!早く言わんか!」
アドルフから怒鳴られ、側近が口を開く。
「ワグナー公爵家のソフィア嬢です」
ガッチャン!
頭に血が上ったアドルフが、テーブルの上に置いてあったグラスを床に投げ付けた。
「ふざけやがって!」
「この俺が、わざわざワグナー公爵家に、ソフィアとの婚約を打診したのだぞ!」
「この俺と婚約して当然ではないか!」
「チェスターは第4皇子で、俺は第3皇子だ!」
「俺の方が立場が上ではないか?」
「違うか?」
「はい。アドルフ殿下の仰る通りで御座います」
「何かの間違いないでは、ないのか?」
「いいえ。アドルフ殿下」
「帝国宰相を通じて、皇帝陛下に打診され、既に皇帝陛下から許可が降りている模様です」
「ふざけやがって!」
アドルフは、椅子を蹴り飛ばした。
「このままでは済まさん!」
「この俺の面目丸潰れではないか!」
このままでは、貴族達に舐められる。
何か手を打たねば…
派閥貴族達が俺から離れてしまう。
くそ!
横からしゃしゃり出て来やがって!
「このままでは、俺の面目丸潰れだ!」
「誰か?良いアイデアは無いか?」
すると、側近のラーマン子爵が1歩前に出る。
アドルフの派閥は、上位貴族がほとんどいない。
上位貴族の大半は、実兄であり第1皇子ゲルハルトの派閥に参加している。
それにアドルフは気性が激しく、気に食わない事があると、自身の派閥から追放するからである。
「何だ?ラーマン。何か良いアイデアがあるのか?」
「殿下。こちらをご覧下さい」
そう言って、ラーマン子爵はタブレットを操作する。
そして、画面を拡大し壁いっぱいに映す。
「これはチェスター殿下が立ち上げた、商会の建設場所です」
「それが、どうした?」
「はい。チェスター殿下が購入し、現在、再開発している土地は貧民街です」
「首都星には、貧民街よりも貧しいゴミどもが住む場所があると思われませんか?」
「ラーマン。お前が言っているのはスラム街の事か?」
「この俺にスラム街の土地を買えと言っているのか?」
「流石、アドルフ殿下!」
「スラム街の土地を購入し、婚約祝いとしてアドルフ殿下からチェスター殿下に贈る」
「スラム街の住民ごと押し付けて、首都星からゴミどもを一掃する」
「私が総ての計画を話さずとも、ご理解頂けるとは、流石で御座います!」
「ああ…当然だ!」
「だが、スラム街の土地は帝国の国有地。購入出来るのか?」
「財務長官は第2皇子のハルベルト殿下の派閥です」
「しかし、財務長官としての立場があるのもまた事実」
「財務省が納得するだけの金額を用意すれば良いのです」
「帝国は財政難。長官のボーデン公は、きっと飛び付き、自身の手柄にするでしよう!」
「よし、分かった!」
「派閥の貴族達に命じて、資金を調達せよ!」
「チェスターのやつに、思い知らせてやる!」
「はっ。賜りました!」
ラーマン子爵は、頭を下げた。
ラーマンがニヤついている事に、誰も気付く者はいなかった。
★★★★★
ラーマン子爵は、派閥に参加する貴族達に資金集めを指示する。
「これは、アドルフ殿下のご命令だ!」
「各自、割り当てた金額を用意せよ!」
貴族達は困惑する。
アドルフの派閥は、貧乏な下級貴族が多い。
「この様な大金。どうやって工面するか…」
貴族達が困った様子を見せる。
するとラーマン子爵が「皆様に良い方法を教えよう!債権を発行し、債権市場で売却するのだ!」
「債権の消却期限を長く設定すれば良い」
「それまでの間に、アドルフ殿下が皇帝に即位すれば、出世は思いのままだ!」
「お~!流石は、ラーマン殿だ!」
ラーマンは、ボーデン公爵家のスパイだった。
そしてラーマンは暗躍する。
アドルフ派の貴族に借金をさせ派閥の力を削ぐ為に…
誰も買い手のいない土地を買わせ、帝国の財政難を緩和した自分の本当の主人ボーデン公爵の評判を上げる為に…
第3皇子派と第4皇子派を争わせ、互いの力を削ぐ為に…
密室に入ったラーマンは、ボーデン公爵家次男ヨハンに連絡し、自分の成果をアピールするのだった。




