チェスターはハルベルトに会いに行く①
ハルベルト兄上に会う日がやってきた。
何日も前から面会を申し入れていた。
腹違いとは言え、自分の兄に会うだけなのに、随分待たされた。
皇族なら、これが普通なのだろうか?
前世で一般人だった俺にすれば、面倒で仕方ない。
今日、俺と同行するのは、秘書のバイオレット。
それと護衛のヘルマン。
それから、外交を担当するマーガレットだ。
これから、帝国や貴族達との交渉事が増える。
バイオレットには、俺の補佐としての仕事がある。
そこでガブさんと相談して、新たに眷属を召喚した。
それが、ヘルマンとマーガレットだ。
マーガレットは、見た目は物凄い美人さんだが、魂は悪魔だ。
それとヘルマン。
ヘルマンの戦闘力は凄まじいそうだ。
俺は、もの凄く嫌な予感がした。
だから俺からは、何も聞いていないのに…
2人とも侯爵級悪魔だと名乗りやがった。
今後の外交交渉は、マーガレットに担当して貰う。
だから、顔合わせを兼ねて同行させる事にした。
「チェスター様。出発の準備が整いました!」
バイオレットが呼びにきた。
俺は少数で、ハルベルト兄上のところに向かう。
今日は非公式の会談だから、少数で問題無いらしい。
それに非公式の会談に、大人数で押し掛けると、相手を警戒させるし、常識が無いと貴族達の足の引っ張り合いに利用される恐れがあるそうだ。
俺達が乗る車が西の宮殿を出発する。
向かう方向が違うんじゃないか?
「東の宮殿に行くんだろう?」
俺が言うと、バイオレットが「貴族街にある、ハルベルト殿下の屋敷に向かいます」と言う。
へぇ~
ハルベルト兄上も、拠点になる場所を持ってるのか。
でも、俺みたいに貴族街から遠く離れた場所ではなく、貴族街にあるらしい。
派閥の貴族が訪問し易い様に、貴族街に屋敷を用意したのかな?
兄上の派閥は、門閥貴族が多い。
古くからの貴族だから、随分と資産を貯め込んでいるとみえる。
そんな事を考えていると、車が大きな屋敷に到着した。
バイオレットがドアを開ける。
俺が車から降りると、屋敷前に使用人達が整列していた。
若い男が1歩前に出て「お待ちしておりました」と言うと、屋敷の使用人達が一斉に頭を下げた。
その若い男は、ベンと名乗り、兄上のところに案内すると言う。
俺達は、ベンの後を付いて行った。
ベンが「こちらでお待ち下さい」と言い、部屋を後にする。
部屋に通された俺達は、暫くここで待たされる様だ。
《マスターは第4皇子で、ハルベルトは第2皇子です。従って年下のマスターが先に部屋に入り、後からハルベルトが入室します》
そうなんだ。
兄弟だし公の場では無いんだから、そんな事に拘る必要があるのか?と思ってしまう。
暫く待っていると、扉がノックされた。
さっき俺を案内したベンと言う男が扉を開けて、その後ろからハルベルト兄上が入ってきた。
ハルベルト兄上後ろに、おじさんが2人続き、更にその後ろから騎士達が続く。
俺は椅子から立ち上がり、兄上が座るのを待つ。
兄上が椅子に座り「チェスター。楽にしてくれ」と言う。
兄上の方が、皇帝継承順位が高いから、兄上が座るまで俺は座らずに待つ。
兄上から声が掛かり、俺は椅子に座った。
俺が椅子に座ると、今度は兄上の左右に居るおじさん達が着席した。
兄上が、左右に座るおじさん達の紹介をする。
「ルーベンス公爵とボーデン公爵だ」
向かって左側がルーベンス公爵。
右側がボーデン公爵らしい。
皇子と公爵では、皇子である俺の方が身分が高い。
俺は皇子だ。
皇帝継承権を持っている。
公爵と言えど俺より先に座る事は不敬に当たる。
そして、兄上の後ろに騎士達が直立不動で立つ。
左右に5名づつ。
合計10名。
「本日は、時間を作って頂きありがとう御座います」
「ああ、構わない。可愛い弟が久し振りに訪ねて来てくれたんだ。歓迎する」
それから暫く、当り障りの無い話をする。
2人の公爵は、何も喋らない。
皇子同士の会話に口を挟むのは不敬だからだ。
喋れるのは、俺か兄上が話を振ったときだけだ。
「ところでチェスター。今日の訪問の目的は何だい?」
いよいよ、本題に入るらしい。
事前に用件を打診してあり、知っているくせに、面倒だな~と思ってしまう。
しかし、永年の風習らしいから仕方ない。
「はい。兄上。実はワグナー公爵家令嬢、ソフィア嬢との婚約が決まりました!」
「帝国から正式に発表されますが、事前に兄上へ報告に伺った次第です」




