ポールを専属担当にする。
暫くすると、1人の男が入って来た。
「ポールで御座います」そう言って頭を下げた。
「取り敢えず座って!」俺が着席を進める。
暫く考えて込んでいたポールが、俺の前の席に座った。
「君には、私の専属担当になってもらおうかと考えている」
「いいえ。私には無理で御座います。専属担当には、どうか他の者を選んで頂きたく」
「何故だ?」
「私では実力不足で御座います。成績も上位者では御座いません」
「君が何を心配しているのかは知らない。しかし私の専属担当になったら、もう力をセーブする必要は無いぞ!」
「これでも第4皇子だ。この私に喧嘩を吹っ掛けてくるのは、よほどの実力者か、愚か者のどちらかだ」
「ちゃんと骨は拾ってやるから、安心しろ!」
ボールは無言で俺の話を聞いている。
ガブさん。
どう思う?
《はい。マスター。この人物なら安心して担当を任せられると判断します》
よし。
もう少しプッシュしてみるか。
「それとも、私の担当になるのは不満か?」
「いいえ。決してその様な事は…」
《マスター。婚約の話をする事をお薦めします》
婚約?
何で?
《ボールの実家は、マスターの婚約者候補ワグナー公爵家の寄子男爵家です》
《マスターとワグナー公爵家との関係を話せば、ポールは断れません》
《また、マスターの担当になったポールは、マスターの為に全力で仕事に打ち込むと予想します》
よし、分かった。
「君の実家は、ワグナー公爵家の寄子だったな?」
「はい。しかし、私の実家と今回の話は、別ではありませんか?」
「まあ聞け」
「君はワグナー公爵家のソフィア嬢を知っているか?」
「はい。お名前は存じておりますが、お会いした事は御座いません」
「そうか…」
「これから話す事は、正式に発表される迄は、他言無用だ」
「実は、ワグナー公爵家令嬢のソフィア嬢と私は婚約する予定だ」
「既に宰相には話を通してあり、現在、宰相から皇帝陛下に打診中だ」
「私とソフィア嬢との婚約が正式に発表されれば、ワグナー公爵家の信用が上がる」
「そうなれば、もう無理に成績をセーブする必要は無いぞ」
「まだ、何か不安材料があるか?」
「いいえ。御座いません…」
「そうか。じゃあ、決定だな」
やっとポールが俺の専属担当になる事が決まった。
「チェスター様。資金の運用はいかが致しますか?」
「資金の運用?」
「はい。チェスター様がお預けになっている資金を運用するか?しないかで御座います」
「もし、運用されるのであれば、契約が必要です」
「資金を運用する場合は、利益が出る出ないに係わらず、手数料が引かれます」
「その手数料は私の成績として計上されます」
「また、利益が上がるよう努力致しますが、必ず利益が出ると保証するものでは御座いません」
ガブさん。
どうしようか?
《はい。良いと思います》
《マスターの専属担当になると、他の仕事が出来ません》
《運用させないとポールの成績が上がらず、ポールだけではなく、マスターの評判まで下がります》
そうなの?
《はい。マスターは第4皇子なのに、運用させるだけの資金がないとか、人を信じない心の狭い人間だとか、他の派閥貴族の関係者が、マスターの評判を下げようと噂を広げます》
なるほど…
それは面倒だな。
「ポール。君には僕が預けた資金の25%を限度として、運用を頼む」
「承知しました。1ベルンでも多くの利益が上がる様、努力致します」そう言ってポールが頭を下げた。
「ポール。余り無理に利益を上げようとしなくて良いぞ!」
俺がそう言うと、ポールが驚く。
「それは…どう言う事でしようか?」
「無理して利益を上げなくても良いと言う事だ。無理するとろくな事が無いからな」
「赤字にならなければそれで良い。気楽にやれ!」
俺がそう言うとポールは安心した顔になる。
「承知しました」
そして俺は、ポールに資金運用を依頼する契約を交わした。
ガブさん。
疑似ダンジョンで作った希少金属もポールに預けた方が良い?
《今はダメです。後日、ポールを西の宮殿に呼び出し、そこで預ける事を提案します》
何でダメなの?
《執事のセバスチャンが居るからです》
《貴族や商人からの贈り物や、返礼品は執事のセバスチャンが管理しています》
《セバスチャンが管理しているリストに記載の無い物を渡すと、出所を聞かれます》
なるほど。
だから、セバスチャンが居ない場所でこっそり渡すのか。
《はい。その通りです》
口座を作り終わった俺は、帝国銀行を出て、宮殿に戻った。




