毎日が日曜日
現在、俺は無職だ。
会社を首になった訳じゃない。
会社を定年退職し、その後、5年間の定年再雇用も終わり、完全にリタイアした。
今は年金生活者だ。
年金生活が始まった当初は、毎日が日曜日!と言って、平日にゴルフに行ったり、昼間から飲みに行ったりした事もありました!
しかし、だんだん外出をしなくなり、毎日、家にいて、誰かと話をする事も無くなってきた。
俺が家に居ると妻から「掃除の邪魔なんだけど」と言われ、午前中は仕方なく、健康の為などと理由を付けて、ウォーキングをする様になった。
ウォーキングの楽しみは、途中でコンビニに寄り、イートインコーナーでブラックコーヒーを飲みながら、甘い物を1つだけ食べる事だ。
最近は血糖値が高めで、家では甘い物を出してくれない。
だから、妻には内緒の楽しみだ。
ウォーキングが終わり、昼食を食べて、一休みしたら、午後からはネット小説を読む。
外で読むと、携帯代が高くなると、妻から怒られる。
だから、家に帰ってから、Wi-Fiでネット小説を読む。
最近のお気に入りは、ファンタジー小説だ。
今日は、何を読もうか?
そんな事を考えながら歩いていると、何時も立ち寄るコンビニの前にたどり着く。
甘い物を選ぶとするか。
店内に入った俺は、プリンやヨーグルトが並ぶショーケースの前に歩いて行く。
今日は、何を食べようか?
俺はショーケースの前に立ち、ラインナップを確認する。
そして、今日は、シュークリームに決めた。
20%の割引シールが貼ってあるやつだ。
年金生活になり、妻からお小遣いを減らされてしまった。
それに、俺が買えばフードロス削減に繋がる。
レジで会計を済ませた俺は、椅子に座り、ブラックコーヒーを飲みながら、シュークリームを食べて一休み。
シュークリームを食べ終わった俺は、店を出て、また、何時もの散歩コースを歩き始めた。
何時もの道を黙々と歩き続ける。
交差に差し掛かると、歩行者用の信号が、青点滅を始める。
別に急ぐ必要も無い俺は、交差の手前で立ち止まり、次に信号が青になるのをのんびり待つ事にした。
車両用の信号が黄色から赤に変わる。
すると、俺のすぐ横に観光バスが停車した。
他県ナンバーの観光バスだった。
バスのフロント部分を見ると○○中学校2号車と書いた紙が貼ってある。
どうやら修学旅行みたいだ。
俺も中学の時、修学旅行で奈良・京都に行ったな~と、懐かしくなる。
でも、あの時は、神社仏閣の良さや、文化の素晴らしさが良く分からず、実に勿体無い事をした。
今ならきっと、あの頃より深く理解出来るだろう。
でも、現実は年金生活者だ。
今となっては、もう旅行も出来ないだろう。
俺は、そんな事を考えてながら、信号待ちをしていると、巨大な魔法陣が現れた。
魔法陣は、赤い色の幾何学模様だった。
魔法陣はバスを中心に広がって行く。
バスの隣にいた俺まで魔法陣の中に取り込まれる。
余りにも急な事態に、頭が付いて行けない。
俺は気持ちを落ち着かせる為、深呼吸する。
…これは、ライトノベル小説で読んだ、異世界召喚と言うやつか?
冷静になった俺は、慌てて魔法陣から出ようと走り出そうとするが、見えない壁の様な物に邪魔されて、魔法陣の外に出られない。
目の前が光輝く。
眩しくて、目を開けていられない。
そして、体に強い衝撃を受けた俺は、そのまま意識を手放した。