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WABISABI- 完成された未完成‐  作者: カスガ・ハラミ
WABISABI-Main Story-
4/13

この町なんてないほうがいい?


-あなたの居場所好どこですか?ー



「ホストなんてなくなればいいのにって、思ってない?」


彼女は突然そう訊いてきた。


別に意味深な感じでもなく、ただ何となく口にしただけのように見えた。


俺は一瞬、答えに困った。


そんな言葉を自分の胸の奥でずっと抱えていることを、なぜか彼女には見透かされている気がした。


佳奈子カナコは、子どもの頃から厳しい親のもとで育ったらしい。


遊ぶこともあまり自由がなかったと聞いた。


彼女は何でも楽しむ子だった。


そういえばゲームセンターも俺と行ったのが初めてだったらしい。


そんな彼女がなぜホストクラブに通っているのか


そしてなぜ俺を指名しているのか、


いつもなら人の気持ちが手に取るように見える俺の感覚が


彼女の前ではなぜか全く通用しなかった。


彼女の感性はどこか濁りがなくて、まるで鏡のようだった。


感情も言葉も、嘘や誇張がほとんどない。


「なんでこの町にいるの?」彼女は続けた。


それが俺にとっては難しい質問だった。


少なくともこの街には、嘘とか本音とかいう枠組みがない気がしている。


そんな区別が意味を持たないくらい、すべてが混ざり合っていて、


だからこそどこか居心地がいい。


嘘をつく必要もなければ、本音を押し殺す必要もない。


「好きなんだよ、この街が。騒がしくて、うるさくて、雑多で、

 壊れてるところもあるけど、それでもここが好きだ」


そう言ったけど、なぜかその好きという感覚はいつももどかしかった。


「じゃあ、なんでホストなんてなくなればいいと思うんだ?」


彼女は質問なのか質問じゃないのかわからないような独り言をつぶやいて


ヘルプの奴と話し始めた。


俺はそれ以上聞かれたくなくて、逃げるように別の卓へ移動するふりをして席を立った。



控室で煙草をふかしながら考える。


彼女は俺にないものを持っている。


それは本物の純粋さなのか、ただの無知なのか


純粋さと無知って何が違うんだ?


無知なことは悪なんじゃないか?


自分でもわからなかった。


でも確かに、何かを知るたびに何かが濁っていく気がした。


店の社長は「それが大人になるってことだよ」と言っていたが


俺にはピンとこなかった。「なんだそれ」と思った。



「ホストクラブは、嘘がいっぱいの世界でしょ?」


初めて出会った時に彼女がそう言ったのを思い出した。


確かに、表面はきらびやかで作られた笑顔や会話が溢れている。


でも俺が感じていたのは、その裏側のもっと複雑な何かだった。


でも、あそこには本当がある気がする。


嘘ばかりの世界の中でも、あの場所だけは、嘘じゃない感情も混ざってる


俺はそんな気がしていた。




彼女の言葉は簡単そうに聞こえたけど、


その背後には見えない痛みや葛藤が漂っていた。


それが何なのかは、まだわからない。


「なくなればいい」なんて軽く言うけど、


その言葉の奥にある、見えない部分を探したいと思った。


きっと、その探し物が、この街で俺が見つけたいものなんだろう。


もう吸いたくもないはずなのに、三本目の煙草に火をつけた。


「今日はつぶれるまで飲むか!」


誰にも聞かれないぐらいの独り言を吐き捨て


つけたばかりの煙草を雑に消し、煌びやかなフロアへ戻る。


爆音のBGM、混ざり合った香水の匂い、俺にだけ見えるこの町の本音。


全てがノイズなはずなのに、その全てが心地よかった。


「シャンパンいれてあげよっか?」


席に戻るといきなり佳奈子はそう言ってきた。


リュウがヘルプとして気をまわしてくれたのか


佳奈子にも何かが見えているのかわからなかったが


なぜ彼女が俺を指名しているのか少しわかった気がした。


「いや、今日はいいや、テキーラにしよう」


「おぉ~!!いいねぇ!」


何がいいのか本当にわからないが彼女は本音で笑っていた。


彼女の無邪気な笑顔を見ていると


俺の失った何かを一瞬だけ忘れられる気がした。



この場所が好きなのか、嫌いなのか


それともただ居場所を探していただけなのか


俺がなくなればいいと願ったのは、いったい誰に対してだったのか


答えは出ないままだった。


(それにしてもなんでシャンパン断ってしまったんだろう)


今日はわからないことが多い一日だ。



フロアの光がシャンデリに反射して


グラスの中のテキーラが少しだけ金色に揺れた


どこかの卓でシャンパンコールが始まったようだ。


俺はやっぱり、この町が嫌いで、好きだ。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

物語を書くのがまだ手探りで勝手がわかっていません(笑)

もっと短いほうが読みやすいや

逆にもっと深掘りしてほしいなどご意見ありましたらお待ちしております。


何か引っかかるものがありましたらコメントいただけると嬉しいです。

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