永遠のその先で♡
かつて“魔王”と呼ばれた男は、
聖女ミラの奇跡によって呪いを解かれ、
今では王国の大司祭として、人々に再び祈りを説いている。
混乱の中にあった魔族の民も、
彼の導きのもと、結界の壁を少しずつ取り払い始めた。
目指すは――人間との共存。
王国は新たな聖女と司祭の誕生に沸き立ち、
騎士カイは“永遠の英雄”として、子どもたちの憧れの的になった。
けれど、その一方で――
「ふふふ……今日もピカピカね♡」
地下の拷問室。
ミラはご機嫌で、お気に入りの大斧を丁寧に磨いていた。
赤いドレスに黒のリボン。
艶のある長い髪を揺らしながら、
拷問器具のコレクションをうっとりと点検するその姿は、
どう見ても“聖女”には見えなかった。
「……何してるんだ。せめて部屋で待ってろって言っただろ」
背後から現れたのは、鎧を脱いだカイだった。
ため息混じりに言いながらも、どこか呆れ顔で笑っている。
「遅いわ、カイ様! あと三分来るのが遅かったら、切れ味を試してるところでしたわ!」
「聖女様がそんな物騒なこと言うなよ……」
「ひどいっ! わたしは“ミラ”ですわ!」
頬をぷくっと膨らませるミラに、カイは苦笑した。
「でも……まあ、そういうところがミラのいいところだ」
「……えっ♡」
「聖女でも、吸血鬼でも。オレはずっと、ミラのそばにいるよ」
ミラはしばらく目を見開いたまま、
ふわりと微笑んだ。
「……まぁ♡」
「今日はどこへ行く? ミラの一番好きな場所へ連れていこう」
「ふふ、ここですわ♡」
そう言って、ミラは斧を床に立てかけ、くるりとカイの腕に抱きついた。
「ねぇ、カイ様」
「ん?」
「……隣にいると、時々……あなたの血が欲しくなるの」
「それは……困ったな。でも……こっちはどうだ?」
チュッ……
「……あっ……ん……カイ様……♡」
唇を重ねたふたりの姿は、
かつて世界を揺るがせた戦場とは、まるで別の物語のようだった。
世界は少しずつ、変わっていく。
魔族と人間が共に生きる未来を目指して――
けれど、このふたりの純愛だけは変わらず、
まだまだ終わりそうにない。
永遠よりも尊く、
だけどちょっぴり危険な――
そんな“純愛”のかたちで。
――Fin♡
読んでいただきありがとうございました!
これにて完結です♡
まだまだ新たな作品を執筆していきますので引き続き読んでいただけると嬉しいです☆彡